小林一三
0
出世の道は信用を得ることである。第一の条件は正直でなければならぬ。あの人には気を許すことができないと言われるようでは信用は得られぬ。第二の条件は礼儀を知っていることである。粗暴な言辞、荒っぽい動作では、これまた信用は得られない。第三の条件は物事を迅速、正確に処理する能力があるかどうかである。頼まれた仕事を催促されるようでは、やはり信用が得られない。
彼には到底難しいとかいう風に考え出すと、いかなる人にでも欠点があるのであるから、ちょっと責任を持たせにくくなってくる。
4
乗客は電車が創造する。
サラリーマンとして成功したければ、まずサラリーマン根性を捨てることだ。
決断―なすべきことをなそうと決心せよ。いったん決心したことは必ず実行に移せ。
1
百里先の見える人は、世の中から気狂い扱いされる。現状に止まるものは、落伍者となる。十里先を見て事を行うのが世の成功者である。
2
清く正しく美しく。
すべての事業の対象は大衆であり、どんな仕事の末端も大衆につながっている。
いちばん忙しい人間が、いちばんたくさんの時間を持つ。
世の中へ出るのは、つまり自分の思うようにならないということを経験する為である。
乗る人がいなくて赤字になるなら、乗る客を作り出せばよい。それには沿線に人の集まる場所を作ればいいのだ。
経営者にとって必要なのは、着手するときの決断、それに撤収するときの決断である。
僕は青年時代から慶応で独立独行と云ふことを教へられて来たのだが、僕の社会生活は即ちそれだ。僕は人にお世辞を言はず、愛想を言はず、いつでも言ひ度いことを言つてしまふので人から愛されたことがない。
確かに彼らは今は貧乏だ。しかしやがて結婚して子どもを産む。そのときここで楽しく食事をしたことを思い出し、家族を連れてまた来てくれるだろう。
3
九つ譲れ、一つ頑張れ。
事業は「一三」である。一つのものを三つ売れ。
「もういろんなことを言はないでおいて下さい。僕等は鉄道省へ行つてヘイコラしていなければ憎まれて困りますから」と言ふ。意気地のない奴ばかりだ。僕等は生れが銀行で畑が違ふけれども、阪急を創立してからでも、鉄道省へも内務省へも逓信省へもヘイコラしたことはない。そのかはりどこのお情けにすがつたこともない。どこへ行つたつてケチなことは言はない。それで来ているから、どこでも憎まれている。
人に頼り、人に期待するのが一番いけない。
14
敷地いっぱいに8階建てを造ると550室は取れる。シングルルームを主とする。このホテルは出張者を相手にするから朝食は混むが夜は少ない。夜の食堂は他の人を入れる。宴会場なんかあまりつくらない方がよい。シングルルームは東京-大阪間の寝台料金と同じにする。ルームメイドは帝国ホテルがひとり10室受け持っているならこのホテルはひとり25室受け持たせるといったように人員を少なくする。だから経費も少なく、飲食からの利益をあてにしなくても開業当初から一割配当ができる。
素人だからこそ、玄人にはわからない商機がわかる。
小林一三のすべての名言