池上彰
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切り口が違えば伝わり方も異なる。
まずは、思いついたことを思いつくままに書いてみる。次に、その書いた文章をみながら「一人ツッコミ」をする。さらに、周囲の人にその内容をぶつける。こうした訓練をするうちに、文章力も内容も、格段に向上していくことでしょう。
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建前を中心に話をせざるを得ない場合は、本音を少し差し挟んで話すと、好感度は往々にしてあがります。フォーマルな席で、少しカジュアルな雰囲気が出ると、聞いている側はその人の人間性を垣間見ることができ、親しみを持てるようになるからです。
自分が持っている知識だけでとりあえず考えてみるけれど、もっと違う知識が、もっと違う事実があるかもしれない。その事実を知ったら、今の自分の事実認識は大きく変わるかもしれないわけです。そういう恐れを持っていれば、事実に対して自然と謙虚になりますよね。
ネットの情報は便利ですが、まさに玉石混交。事実関係のあやふやなものや、偏った情報がたくさんあります。そこで大事なことは、最初に出てくるページの情報だけで終わらせないこと。1ページ目には肯定的な情報しか載っていなかったのに、3ページ目でようやく批判的な情報が出てきたり、ということも。そうして全体像が見えてくるのです。
自分が賛成するような意見だけではなくて、自分が読んでいて不愉快な意見とか、自分の考え方とは違う意見にも接してみる。そこで初めて、自分なりの考え方ができてくる。
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中身の充実した報告書や提案書を書くためには、五感を研ぎ澄ませて、調査や打ち合わせに臨むことも大切です。現場の匂い、景色、雰囲気、人の話などを虚心に受け止め、書面に少しでも書き込んでみるのです。そうすることで、ほかの人とは違った臨場感とオリジナリティーのある報告書や提案書ができあがるはずです。
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嫉妬は多くの日本人が多かれ少なかれ持っている感覚です。嫉妬社会の側面を持つ日本では、たとえすべてが上手くいっていても、それを声を大にして言うのは慎むのが賢明でしょう。
人に説明するためには、自分で勉強したことを本当の意味で理解していないとできない。どうやって説明するかを考えるとき、初めて自分の頭の中で勉強したことが整理されるのです。よりわかりやすく伝えるためには、どんな情報が必要なのかも見えてくるんですよ。
「積ん読」状態であっても、本のタイトルを折に触れて見るだけで、そこから触発されるものがあります。原稿を書くときなど、何を書こうか悩んでいるとき、本のタイトルを見ているだけでアイデアが浮かぶこともあります。
被害者家族に「時効」はない。
日本にはいわば、「けしからん罪」が存在しています。それは、「法律には違反していないけれど、なにかけしからんよね」という、多くの人たちの気持ちであり、感覚です。これは理屈ではなく、庶民感情です。たとえ法律に違反していなくても、なんとなくけしからんと思った行為や人は糾弾されてしまう。そうした風潮は日本にあります。
ちょっと無理すればできるかもしれない、むしろそういう状況に自分を追い込んだほうが成長できると考えて、あえて難しい仕事を受けるようにしてきました。
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日々のニュースを見ていると、大きく扱われるトピックもあれば、小さいものもありますよね。でも、小さいからと言って重要ではないのかというと、そうとは限らないのです。新聞の一面に出ているニュースでも、そのときたまたま他に大きいニュースがなかったからそれを取り上げているだけかもしれない。逆に、大きなニュースがたくさんあったために、本来なら大きい扱いになるはずのニュースが小さく扱われている、ということもあります。つまり、その日のニュースを一度見るだけでは、それが長期的に見て大きなニュースかどうか、判断できないのです。最低でも一週間は寝かせてみて、時間が経ったあとで見返してみると、「これは大したことがなかった」「このニュースは重要だ」という判断が初めてできるのです。
教養を1人で身につけるにあたって、誰でもできるのは、本を読むこと。読書です。NHKを辞めて独立したとき、肩書がない厳しさを初めて味わいました。でもそのとき、記者時代に夜回りの合間などを使って、本を読み、独学した英会話から経済学の古典に至るまでの様々な教養が、自分の武器となりました。その後の執筆活動などにも大いに役立ったのです。
本を読んで面白かったから、その内容について人に伝えたいとき「面白かった」と言ってしまってはダメだと思います。それは感想の押し売りにすぎない。説明を聞いた相手に「面白そうじゃないか」と思わせなければならない。
人は自分の話を聞いてもらうと、存外嬉しいものです。ましてや、初めて会った人が自分の話を熱心に聞いてくれると、感動すら覚えたりします。自分の話を聞いてくれる相手には当然、親しみを持つし、好感度も増します。反対に、相手の話を聞くのも楽しいけれど、一方的に聞かされると、苦痛になってしまいます。
「思い込み」にとりつかれてしまうと、別の視点から見るということをしなくなってしまいます。
情報を得たら、それをどのように解釈するのか、考える時間を意図的に作り出す必要がある。一日に何分間かでもいいので、必ずその時間を持つ。そうすれば、読んだだけでは忘れてしまうような情報も、身になっていくはず。
私のアイディアを無理に真似する必要はありません。自分流を確立するための参考にしていただければいい。
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