坂東眞理子
0
40代になると、自分自身が成果を出すこと以外に、部下を育てることが求められるようになります。難しいのは叱り方です。ここでも女性によく見られるのが、溜めてしまうことです。「女性がしょっちゅう叱っていると、ヒステリーだと思われるのではないか」と考え、普段は見て見ぬふりをして、我慢できなくなったときに爆発させてしまうのです。叱るのは相手のためですから、溜めこまないでその都度言いましょう。
1
大学は企業などと違って改革の結果が出にくい体質があります。そこで、まず手掛けたのが文科省の競争的補助金に積極的に応募することです。補助金を獲得するだけではありません。申請を採択してもらう課程で汗をかくので、教職員にも改革を肌で感じてもらいました。
「おかげさま」という言葉があります。いかがお過ごしですかと聞かれれば、「おかげさまで元気にやっております」と答える。それは、誰か特定の人のおかげという意味ではありません。自分を取り巻く自然。自分とともに生活している人たち。そして見も知らないたくさんの人たち。すべての人や大自然のおけげで元気に生きることができる。つまり、人間は生かされているという心が日本人には根付いているのです。
人生とは選択の連続です。一つのものを選ぶということは、一つのものを捨てるということ。すべてが手に入ることなどありません。今やっている仕事。それはベストではないかもしれない。もっと自分に向いた仕事はあるかもしれない。でも、探し歩くばかりでは前に進むことはできません。この仕事を一生かけて頑張るんだ。自分はこうやって生きていくんだ。そんな覚悟をもつことです。
自分の思いや考えを本という形で提示できるようになったことが、心の安定を保つ上で大いにプラスになりました。役所の仕事はチームプレーで、一定の枠が求められます。そこで自分の意見のすべてが通らないことは多いのですが、別の世界で発信すればいい。そう自らに思い聞かせることで、いい意味での割り切りが可能になりました。
人生の理不尽さに遭遇したとき、やがて日本人はこう口にします。「しかたがない」と。この言葉の中に私は、日本人の強さと生きる知恵をみる思いがするのです。「しかたがない」という言葉は、英語のなかにはありません。「しかたがない」と日本人が呟けば、アメリカ人はこう言います。「どうして諦めるんだ。逃げてはいけない。どんな過酷なことがあったとしても、ベストを尽くせば必ず立ち直ることができる」と。日本人は、けっして諦めの気持ちでこの言葉を発しているのではありません。この世の中には人知を超えたものがある。自分の力ではどうしようもないことがある。「なんで自分が」と思うことが人生には必ず起こる。そのことに抗っていても道は見えてこない。まずは受け止めること。理不尽さや過酷な状況を心でしっかりと受け止め、そこから覚悟を決めて歩き始めること。その覚悟こそが、日本人の底力なのだと私は思っています。
実は34年間の公務員生活で女性問題の担当部署にいたのは通算6年余り。ポストを離れてからも情報を集め、論文を書き続けるように心掛けてきたことがよかったと思います。
夢を持っているかどうかが、何かあったとき、もうひと頑張りがきくかに大きく影響します。夢はなかなか実現しないものではありますが、夢にさえ描けないことには実現することはありません。
いまのように経済状況が厳しいときには、意に沿わない仕事を担当することになったり自分の頑張りに見合った報酬が得られなかったりと、仕事に不満を抱えることが多いでしょう。しかし、こんな時代だからこそ目先の不満で仕事を辞めるべきではありません。私自身の経験を振り返っても、目先のことばかりでなく長期的な視野で判断してきたことがキャリアに大きく活きています。
異動や出向などで仕事が変わると、強制的にレパートリーが増やされますよね。そういうときこそ、その人の創造性が試されると思うんです。新しい仕事と過去の経験やスキル、強みをいかに融合させるか。本当の創造性というのは、ゼロから何かを生み出すことではなく、そうやって過去に得たものの中から組み合わせて新しく創り出していくことではないでしょうか。
公務員をしながら執筆を続けることには「本業がおろそかになっていないか」といった批判もありました。それだけに本業の仕事は集中して行う術を身に付けてきました。内閣府男女共同参画局長まで務めさせていただき、本の執筆はリスクを補って余りあるメリットがあったと確信しています。
20代は失敗を繰り返してもかまわないので、少しずつ「これが得意かも」という武器を見つけ、30代はそれを育てていく。そうやって自分の「コアになる強み」を仕込んでいく時期だと思います。「自分はこれならできる」ということが通用するようになるのは40代。また40代は、チームの責任者としてチームのメンバーを活躍させることも必要になってきます。それぞれの年齢によって期待されることも役割も違ってくるのです。私は20代が一番苦しいと思います。でも、若いときに、自分には何ができるのかと、試しては失敗することを繰り返すことが大切です。失敗しても諦めずに続けていくことで、未来は切り開けていくのだと思います。
男女問わず25歳から35歳の間によいメンターと出会えるかどうかが、キャリアを重ねるうえで大きく影響します。メンターとの出会いを活かし、相手に「成長をサポートしてあげたい」と思ってもらうにはコツがあります。自分よりも年齢や地位が上の人に対して、素直に尊敬の念を持ち、優れたところに感心する力を持つことです。私自身、若い方と接していると、年長者を批判的に見て斜に構えている人はすぐにわかります。
女性活躍への期待が高まっていますが「男性と同じように働けます」という働き方は女性にお勧めできません。自分だから、女性だからできることを考え抜く。闘争ではなく、協力する。奪い取るのではなく育て上げる。新しいリーダーシップの形を私自身、これからも追求していくつもりです。
創造力が問われますが、そのためにも違う人種・性別・文化と触れ合う必要がある。自分と違う人に出会うのはとても大事なこと。
敬語は訓練によって身につけていくしか方法がありません。職場には敬語に詳しい人がいるものです。その人の言葉遣いを真似てみたり、書いたものをチェックしてもらうなど、「人みな、わが師」の気持ちで教えを請うことはとても大切だと思います。
2
コアになる強みというと、ひとつに絞るものと捉えがちですが、ひとつに限定しなくてもいいわけですし、3つ持っていれば心強いですよね。どんな状況におかれたとしても、どれかひとつのコアを活かせればいい。
物事に関心を持って、それを追究していけば、そこから多くのことが学べる。
ビジネス文書には明確な目的があります。その目的を達するために何を伝えるのか、書きはじめる前にポイントを整理しておくことが大切です。ときどき主語と述語が一貫しない文章を見かけることがありますが、書きたい要素を整理せず、考えのおもむくまま、いきなり書きはじめることが原因だと思います。
ひとつの文書に盛り込む用件は多くとも3つまでに絞りましょう。それ以上になると相手が混乱します。文書はできるだけ短く、簡潔な表現を心がけ、書き上げたら、誤字脱字がないか、必ず読み返します。クリックひとつで簡単に送信できるメールの場合はとくに注意しなければなりません。
坂東眞理子のすべての名言