黒田官兵衛
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将たる者が武を忘れたならば、軍法がすたり、家中の侍たちも自然と心が柔弱となり、武道の嗜みなく、武芸も怠り、武具も不足し、塵に埋もれ、弓槍の柄は虫の住みかとなり、鉄砲は錆び腐って、役に立たなくなる。軍法も定まっていないから、もし兵乱が起こった場合には、どうしたならばよかろうと、驚き騒ぎ、喉がかわいてから井戸を掘るようなことになろう。武将の家に生まれたからには、しばらくも武の道を忘れてはならぬ。
1
その人の本質はそのまま残し変化に対応するには、常に柔軟でなければいけない。
2
おまえは時々、部下を夏の火鉢やひでりの雨傘にしている。改めよ。
もらった者は喜ぶであろうが、もらわぬ者は恨むであろう。誰にやって誰にやらない、でよいというわけのものではない。しかし、だからといって功のない者にもやれば、功のある者に賞を与えるとき、その甲斐がない。だから、古い物をやりたいと思うときは安く払い下げるのだ。お前たちにしても、わずかの銭を出して買う方が得であろう。
分別過ぐれば、大事の合戦は成し難し。
四角な器にも円い器にも、水は器に応じてはいる。
最期の勝ちを得るにはどうしたらいいかを考えよ。
上司の弱点を指摘してはならない。
思いおく言の葉なくて、ついに行く、道は迷はじなるにまかせて。
その時、お前の左手は何をしていたのだ?
戦いは考え過ぎては勝機を逸する。たとえ草履と下駄とをちぐはぐに履いてでもすぐに駆け出すほどの決断。それが大切だ。
3
我が君主は天にあり。
蒸気となり雲となり雨となり雪と変じヒョウと化し凝っては玲瓏たる鏡となりたえるも其性を失わざるは水なり。
自ら潔うして他の汚濁を洗い、しかも清濁併せ容るるは水なり。
常に己れの進路を求めてやまざるは水なり。
人間には必ず相口、不相口というのがある。相口というのは、他人の心をよく知ってそれに合わせる事だ。不相口というのは、逆らって異見を言う者をいう。が、大切なのは不相口であって、相口の者ばかりまわりに集めたのでは、決してその者にとっていいことではない。不相口の者が言う異見に耳を傾けるべきだ。
障害に遭いて激し、その勢力を百倍にするは水なり。
槍・太刀・弓馬の諸芸を自から行なうのを、身分の低い者の仕事であるとして、自分で一度も行なわなかったならば、家来たちの武芸も進歩することがないだろう。
自ら活動して他を動かすは水なり。
私一人の注意では、多くの家来たちに届くまいから、見のがすことも多いだろう。よくないことがあったなら、遠慮なく早く知らせてほしい。
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