やったことがほんのわずかだもの。やり残したことばっかりでしょう、きっと。一人の人間が生まれてから死ぬまでの間、本当にたわいもない人生だから、大仰には考えない。

熟年離婚なんて言葉も浸透してきちゃったけど、老いてから別れるのはもったいないわよ。

１度もないです。だから多分、死ぬ間際に言うかどうかですね。向こうが先に死ぬ場合は、「もうひと言何かありますか」と聞きます。

実際に会って「こちらから身を引きましょうか」と言ったことはある。そのときは女性に「結構です」と言われましたが。

30代前半、結婚したての頃、すごかったですね。毎晩、家の中めちゃくちゃ。包丁はどのくらい買いにいったかわからない。金物屋は「どうしてこんなに包丁が壊れるんですか」って。

あのね、年をとるっていうのは本当におもしろいもの。年をとるっていうのは絶対におもしろい現象がいっぱいあるのよ。だから、若い時には当たり前にできていたものが、できなくなること、ひとつずつをおもしろがってほしいのよ。

成年の失敗よりも老人の跋扈が一番世の中を悪くすると思う。私がある８０のおばあさんにいったら「ばっこってなーに？」「のさばること！」あーらー。

命がけで生きていこうという方がいらっしゃるのに、こんなつまらないことをして。

それはその人から見て、美しければ美しく、醜ければ醜いし。だってあんなに顔を引っ張ってしわを伸ばしたって、その人は「美しい」と思ってやっているけど、「変なの」って思う人もいるし。すべてそうじゃないですか。

死に向けて行う作業は、おわびですね。謝るのはお金がかからないから、ケチな私にピッタリなのよ。謝っちゃったら、すっきりするしね。

こういう事件が起きるのが遅かったなぁ。今回、さらして頂いて逆にありがたかった。私からは頭をさげません。本人に下げてもらいます。

私、とにかく今、一人でやっているでしょ。ここに来るのも一人、何をするのも一人。誰かに頼むとその人の人生に責任を持てないから。

人がうれしかったりした時に、泣くことが多いわね。悔しい、悲しい、で泣いたことはないわね。「なんてすてきなことを言うんだ」っていう時に泣けてくるね。

今世は離れたまま、来世は絶対に会わないように..。籍を入れた責任上、今後はどうするかはそのつど考えながら引き受けていくしかないと思っています。

飽きたでしょ、おなかすいたでしょ、って思っちゃう。私がくたびれちゃうのね。だから一人でやろうと思うの。それで、一人でできなくなったら、「これにてご無礼いたします」。そうだね、最後のセリフは「はい、みなさん、今世はこれにてご無礼いたします」。いいセリフだよね。

富も名誉もいらないんです。

嫌な話になったとしても、顔だけは笑うようにしているのよ。井戸のポンプでも、動かしていれば、そのうち水が出てくるでしょう。同じように、面白くなくても、にっこり笑っていると、だんだん嬉しい感情が湧いてくる。

「自分がいつまでも」っていうことが美しいと思っているなら、この世の中に排除されたらつらいでしょうけど。それが普通だと思っていたら、排除されるっていうことはひとつもいやじゃないわよ。

内田裕也の全てが、好きです。全てが。

お金ってもう使わないから。使う必要がなくなっちゃったから。自由になるくらいの生活できますけど、何にもしたいものないですね。

まあ、縁ですから。自分に合った人と出会うわけですから。それに、親がへたばって喜ぶ子供はいないでしょ。よく娘は「お母さんは他人だからいい、私は血が繋がってる」って。今回も「お母さんがいてくれてよかった」と言ってくれました。