松田優作
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日本へ帰ったら、ここのみんな俺のこと忘れちまうのかな?
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やたら正義をふりまわす探偵ものが流行っているけど、この工藤俊作はちょっとズッコケてて、いい加減なところもある探偵なんだ。そのヘンが気に入ったね。ライバル番組?まあ「ルパン三世」ってとこかな。
僕みたいなチンピラでもやっていける映画界というのは不幸なのかも知れないけど、だから逆に主演できるってことは幸せなんじゃないですか。やりたいと思うことは、もうみんな先輩達がやっちゃって、何も残ってないでしょ。渡哲也さんは、最後の映画スターだと思いますよ。僕なんか、スターじゃなくてズターっていうか、ガターって感じね。でもいちいち悲観してたらやってけないってとこもありますからね。
やはり、これからの映画を背負って立つ奴のひとりだよね。今はちょっと怠けている。もっと責任あるはずだけどね。話していると奴の持っている感性とか勘のようなものは、当たっているよ。でもそれを具体的にしていく作業を怠けている。もっと欲出さないと。
ナンバーワン映画をつくった映画監督と映画俳優に、なんで会社が金出して、映画つくってこねえんだよ、1本も。
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最近は映画を意識して見ない。僕が一番やりたいメディアは映画なんだけど、今は逆に離しておきたいんです。言いたいメッセージがごちゃごちゃありすぎて、何を言っているのかわからないような映画が多くてつまらなくなってきてる。今は逆に日常生活のなんでもない一場面を演じるときテレビしかないでしょ。だから今はそういうものをやれるまで、テレビにこだわっていたいと思っているんですよね。
生まれは昭和24年9月21日、下関市の伊岬町ってとこです。小学校入る前から、日活は観てましたね。そう、裕次郎さんの初期からです。ええ、映画館は近くに日活、大映、東映と揃ってましたし、ストリップ小屋というか旅回り一座の小屋掛けもあり、そこではよくチャンバラものなんて観てましたね。テレビですか?ウチには当時なかったですけど、電機屋の前で・・・・。今でもそうですけど長島の若かりし頃の巨人軍が好きでしたね。小学校は神田小学校っていって、あの頃、一人で映画を見に行ってはいけないなんて規則がありましたけど、ウチは兄貴二人とも14、5歳離れているせいか、親の金をかすめとっちゃ、一人で見に行ってましたよ。ある種の後ろめたさというか、あの暗い感じが好きで、いつか明るいところへ行けるのかなぁって思ってました。ま、それは今でも同じですけどね。それとどっかで先生が見てるんじゃないかって、小屋に入る時と出る時、妙に怖かったのを覚えてますよ。
全部に感性を開いてないと、これから新しい映画っていうのは出来ていかないと思うんですよ。ですから、もちろん音楽もそうだし、それからやっぱり絵を見ることもそうだし、土をいじることもそうだし、風を感じるのもそうだし、ありとあらゆるものに関して敏感じゃないと、当然人間に関しても敏感になれない、と。誰でも目立つことに関してはすぐ気がつくんですけども、やっぱり潜在的に隠されてるものってのに気づくためにはいろんな角度でその人の考え方とかしゃべり方とか、それから目の見つめ方とか、耳の良さとか、音楽の趣味とか、全部含めて映画に絡み込んでいかないと。
やっぱり、僕は役者ですからね。ものをつくるとか、自分が感じることにとことん真面目でありたい。それが僕にとって、生きることだと思うんです。
最初に住んだのは池袋です。ええ。アパート。ま、それでブラブラしてるうちに芝居をやりたいと。でも、まだ芝居って言っても新劇とか何とかってわからない頃だし、高校時代に演劇部に入っていたわけでもないから・・・。ただ、劇団入るには金が無くちゃいけないって思ったんで、朝は牛乳配達、昼は皿洗い、夜は夜でまたバイト、なんて生活を一年ほど続けましてね。
世間は「松田優作は着々と・・・」なんて言うけど、着々なんて言うのは、そんなもの、目的じゃないもの。家を建てたとか子供が産まれたとか、俺の中ではそういうものは着々でもないしねえ。家とか、家庭とか、着々とか、ないわけでねえ。だって70年しかないんだから、人生って。ただ、ゼロとの落差はつきやすくなったかも知れないね。でも危険度は相変わらずですよ。むしろ増してんじゃないかな?だけど、ま、いつゼロになってもいい覚悟はしているから。転げ落ちるのは全然怖くないよ。だって、物質的に欲しいもの、ないんだから。
日本映画は大きな中途半端をやってるじゃない。例えばSF映画なんて呼べるものがある?どこにもねえだろう。SFがどうしたなんて言える状態じゃないだろ。作れないんだからさ。それが全てを物語ってる。市場が世界に向かって無いじゃない。香港映画に負けてるし。いくら中国で「敦煌」なんてやっても爆笑だぜ。市場は日本以外にないもの。それをどっかの会社が社運を賭けてやるっていうのは、金余りの会社が名画かなんか買うのと同じもん感じるね。
つまらない仕事なんて絶対に口にするな。この世はそんなものはない。どんな些細なことでも真面目にしろ。
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先生、例えどんな病気でも、正直に俺に言ってください!でも周りにだけには絶対に言わないでくれ!女房には言わんでください・・・。
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渡さんや原田さんを見てると、何というか越えてるって気がするんですよ。いろんな事全てに関して・・。ストイックに耐えていく作業が、逆に言えば一番闘っている、と・・。何を言われても全部自分の中に飲み込んでしまって、自分がいつ、どこで、それを燃焼させりゃいいかを考えて耐えている。それが、あの人たちの映画に賭ける情熱だ、という気がするんです。実際、渡さんの「仁義の墓場」を見たとき、あの人の中で何かが越えた、と思いましたね。
たとえばアクションならアクションに対してだいぶ間隔がありましたからね。だから時間が経ってやっとやれるなという・・・・・わかります?言ってる意味。アクション映画として最後にやったのは「BJブルース」ですよ。だから「それから」が終わって直ぐ「それから」みたいな映画をやるのは無理ですよ。やっぱり一年くらい必要ですよ。アクション映画に関してはやっぱりすごくありましたから。三年・・・・いや三年じゃきかないな。四、五年くらいね。だからその思いでやれるわけです。充分、時間があったと言える。わかります?言ってる意味。そういうことなんです。
探偵物語。もう10年近くになるけど、あれだってやっとこさ企画通して、頭下げて、そんなもん作られたら困るって散々言われて、それでも強引に作ったものなんだから。今になって、あの時あれを散々こき下ろしたプロデューサー達がさ、今になってだよ、「ああいうのをもう一回やってくれませんか?」って言うんだ。「そんなもん作るんじゃねえ」って言っていた奴等がだよ?そんなの意地として、やれると思う?同じ事を。はじめから理解してくれて、一緒にやってくれたんなら、「もう一回やってよ」って言われたらやりますよ。もちろん。理解されてやってたってことは、まだやり残した事がたくさんあるんだもん、でも否定されてやり続けるってことはさ、やることより、何でこれがわからないんだろうってことをアピールしなくちゃいけないから、余計なエネルギーを使わなくちゃならない。モノを作る作業になってないんだ、どっか半分は。
ファンほど恐ろしいものはないし、勝手なものはないし、また、ありがたいものはないですね。その時ばっかりに固執して、こっちが抱き込んでいこうとしても、向こうはどんどん変わっていってしまうし、ぼくよりいい人を見たら、そっちへ行っちゃうしね。それを「待て」とも言えないでしょ。こだわってしまうとかえってつまんなくなってしまうんですよ。
これからやることを言えなんて、それじゃ、犯罪計画をばらせって言うようなものですよ。
俺は監督やスタッフにどんどんアイデアを出したよ。ところがことごとく否定しやがるんだ。セリフでくどくど説明しないでもっと沈黙の演技をしたらいいじゃないですか、といっても駄目。犯人を捕まえるときに何でもかんでも手錠をガチャっとかけてラストになるけど、たまには犯人の肩をたたきながらパトカーに乗せてやってもいいじゃないですか。それも駄目。監督の方が脚本を深く読んでいると思えばそりゃ従うよ。しかしとても納得できる説明はないんだ。やつら、無難に番組ができあがることしか頭にねぇんだ。俺の求めている世界とは違う。テレビなんてそんなものさ。
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