松田優作
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人の死を悲しんじゃいけない。
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たとえ肉体が滅んだとしても魂ってのは絶対無くならないんだ・・・・絶対に・・・。
真剣にやっぱり映画にむかって欲しいですね。で、頭きたら、面白くなかったら帰ればいいんですから。
よそで燃焼するんだったら、この稼業で燃焼したい。よけいな闘い方はしたくない。
今すごく自分の中でさえてるなと思ってる時間、たくさん持ってるけど、それはやっぱり、死ぬまで続くものでもないですから。だけど年とっていくと、だんだん単純になっていくと思うんですよね。その時に、かなり鋭利にものを考えれるようになっていてもいいんじゃないかと思うんだけど、それにしても、やっぱり鈍くなっていくと思うしね。やっぱり今、自分が複雑にものを考えたりすることを、いちいちね、拾っていくとこんぐらがってくるから、とりあえずやることだけ、今見つけて、やってはいるんだけれど。そん中で、こぼれていっちゃったものとか、その時期にやってけなかったものとか、拾い歩く作業を、こしこれから四十ん8いなった時とか、やってけるようだったらね。そんな時には立場を変えて、プロデューサーしてたり監督してたりとか、そういうことはあるかも知れないね。
鈴木清順監督と仕事をしたときは驚きましたね。言葉ではうまく表現できないんだけど、異常に頭のいい人でね。演技指導なんかでも、新劇の俳優さんとか「芝居とはこういうもんだ」と思いこんでいる人に対しては、NGだとかテストだとか入れて60回くらいもやり直させたりしましたね。本人がすっかりわからなくなったところで「じゃ、それで行きましょうか」って。ぼくなんかパーだから、これでいいのかなあ、なんて思いながら演ってると「はい、それでいいです」なんてね。最高でした。
撮るのなら俺の魂を撮ってみろ。ただし簡単には撮らせないからな。
僕らみたいにころころとポリシーが変わってるとね、既にポリシーでも何でもなくなっているようなものがポリシーだったりしてね。だから一週間がどれだけの一週間か分からないしね。例えば映画を二週間で撮る場合と、一年かけて撮る場合と、ほとんど費やすエネルギーが変わらない場合と変わる場合があるけれども、それさえも時間の問題じゃなくてね。
うなだれていてもしょうがない。自分はできると信じ込め。もっと前を向いて生きろ。生きてることは楽しいことなんだ。
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すごい人ですよ。去年一年間のうち三分の一くらい一緒にいましたからね。非常にいい付き合いですね。以前から知ってましたけど、こうやって頻繁に会って話をするとか、ロックから映画からいろーんな事を含めて付き合うようになってから、まだ一、二年ですか。最近そういう風にして会った人で刺激になったと思うのは裕也さんと黒田征太郎さんですか、イラストレーターの。ふたりは一番好きですねえ、今。
やっと出会えた仕事なんだ。
もらってしまえば、さして感慨もないというのが「賞」ですが、手に入れるギリギリのところではドキドキしたり、不安だったり。子供っぽいところでの興奮みたいなのはあるみたいですね。単純、かつ複雑に嬉しいてところですけど、とりあえずは、ひとつのケジメになったと思います。キネマ旬報の賞は欲しかったもんですから、ここは正直に「素直に嬉しい」ということでいいんじゃないかって思います。
俺は俳優としてアクションをしてるだけだ、アクションスターなんかじゃない。
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でも犯罪を犯すというのは「ここまで」と引かれている線を切ることなんだよな。犯罪というのは可能性ですから、「ここまで」と決められている部分を犯していくってことは、可能性に挑戦しているんだよね。まあ、犯罪者はこんなこと考えてないと思うけど。危険なことを犯すかどうかってことになると、矢沢さんはやっぱり犯したんでしょうね。だから結局、そういう言葉で自分を正当化していかないと自分自身つらいこともあるだろうと思うしね。
いいんじゃないですかね、36ですから、まだ。向こうの役者なんてデビューは30からですからね。僕なんかはもう23、4ぐらいでデビューしちゃってるから、ホントなら息切れしてますよ。だから、20代は走って、ファッションでピストル撃ってきたけど、30代は初めてやっと役者に向かわなきゃいけないという、その準備をしてるというか、その練習をしてるというか、まず心のフラットさを今すごく勉強してる。40からですよ、無茶苦茶やるのは。待っててくださいよ。
理想とか、無理ですよ、やっぱり。向こうの感覚に合わせるというのは、時差なんか違っちゃうとね。時差が違っちゃうと同じ人間じゃないと思っちゃうから。だから、こんな狭い国で意識だけはメジャーとかマイナーとか言ってても、そんな差は基本的にないですからね。あっちゃの国だったら、ニューヨークじゃバンバン撃っている、カリフォルニアじゃサーフィンやっているなんていう広い国でしょ。こっちの国は基本的には法律っていう決められ方がしっかりしているでしょ。だから何がメジャーで何がマイナーかというと、ルールを破った者がマイナーで、ルールに合わせていくのがメジャーだと。そんぐらいの物差ししかないんだよね。別に部落性も地域性もあるわけじゃないしね。そんなことを考えてたら、この国で考えている「理想」っていう言葉ってものは、できれば向こうの話と比べて、どっかに無理だという感じがあるね。つまり結局は、かなり下の方の話なんですよ、そんないい話をしても。
経験なんて関係ねーよ。
俺は若い人に、自分の中の変化と重ね合わせて映画を見てもらいたいんだ。きっかけは「スターウォーズ」でも「たのきん映画」でも何でもいい。劇場のあの暗がりの中に入ったら、自分の過去や未来がいろんな形で浮かんでくる。そんな世界があるってこと、知って欲しいですね。
僕は観念的なもの、意識的なものを、自分の芝居に取り込みすぎていたんですね。で、一度自分の中に取り込んだものは捨てられない。そして何かを演じる時につい、僕はあれもできる、これもできるって風になってきてしまう。頭ばっかり大きくなってっちゃってね。日常生活のディテールの中にドラマがあったりするでしょ。僕はそんな簡単な事に長い間気が付かないでいたんですね。
レコードとか、音方面に関しては後悔しますね。音楽に関してはまだ幼稚園ですから、ときめきと震えと不安しかありませんけど、映画の場合はその度その度、上がってくるラッシュを見ながら監督なんかと確認しあったりね。取りこぼしたり、付け加えたりという作業だから、ラッシュを見ないと自分の場合は。もちろん、映画のケースにもよりますけどね。だから、全部含めてですから、試写室に入ることも、映画を撮るときも、どこがどうって切れ目がないですね。
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