松田優作
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でも犯罪を犯すというのは「ここまで」と引かれている線を切ることなんだよな。犯罪というのは可能性ですから、「ここまで」と決められている部分を犯していくってことは、可能性に挑戦しているんだよね。まあ、犯罪者はこんなこと考えてないと思うけど。危険なことを犯すかどうかってことになると、矢沢さんはやっぱり犯したんでしょうね。だから結局、そういう言葉で自分を正当化していかないと自分自身つらいこともあるだろうと思うしね。
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3日後にロケが終わる。バンコク空港で待ってるから来てよ。ちょっと二人でプーケットへ行きたいと思っているんだ。ユーさん、まだまだ。あれは松田優作プロモーション・ピクチャーだよ。
俺は俳優としてアクションをしてるだけだ、アクションスターなんかじゃない。
もらってしまえば、さして感慨もないというのが「賞」ですが、手に入れるギリギリのところではドキドキしたり、不安だったり。子供っぽいところでの興奮みたいなのはあるみたいですね。単純、かつ複雑に嬉しいてところですけど、とりあえずは、ひとつのケジメになったと思います。キネマ旬報の賞は欲しかったもんですから、ここは正直に「素直に嬉しい」ということでいいんじゃないかって思います。
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うなだれていてもしょうがない。自分はできると信じ込め。もっと前を向いて生きろ。生きてることは楽しいことなんだ。
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僕は観念的なもの、意識的なものを、自分の芝居に取り込みすぎていたんですね。で、一度自分の中に取り込んだものは捨てられない。そして何かを演じる時につい、僕はあれもできる、これもできるって風になってきてしまう。頭ばっかり大きくなってっちゃってね。日常生活のディテールの中にドラマがあったりするでしょ。僕はそんな簡単な事に長い間気が付かないでいたんですね。
彼は、実に痛快な日本のテレビドラマの主演で知られている、本質的にはコメディ俳優だった。たぶん、優作は大勢の女性ファンから愛されていた人気者だったろう。ともかく、日本では絶大な支持を受けていた男だ。個人的には、彼をどんな風に感じていたかって?実に良い奴だったよ。正真正銘のナイス・ガイだった。
いいんじゃないですかね、36ですから、まだ。向こうの役者なんてデビューは30からですからね。僕なんかはもう23、4ぐらいでデビューしちゃってるから、ホントなら息切れしてますよ。だから、20代は走って、ファッションでピストル撃ってきたけど、30代は初めてやっと役者に向かわなきゃいけないという、その準備をしてるというか、その練習をしてるというか、まず心のフラットさを今すごく勉強してる。40からですよ、無茶苦茶やるのは。待っててくださいよ。
今すごく自分の中でさえてるなと思ってる時間、たくさん持ってるけど、それはやっぱり、死ぬまで続くものでもないですから。だけど年とっていくと、だんだん単純になっていくと思うんですよね。その時に、かなり鋭利にものを考えれるようになっていてもいいんじゃないかと思うんだけど、それにしても、やっぱり鈍くなっていくと思うしね。やっぱり今、自分が複雑にものを考えたりすることを、いちいちね、拾っていくとこんぐらがってくるから、とりあえずやることだけ、今見つけて、やってはいるんだけれど。そん中で、こぼれていっちゃったものとか、その時期にやってけなかったものとか、拾い歩く作業を、こしこれから四十ん8いなった時とか、やってけるようだったらね。そんな時には立場を変えて、プロデューサーしてたり監督してたりとか、そういうことはあるかも知れないね。
経験なんて関係ねーよ。
山崎努さんにしても緒形拳さんにしても、バランス悪いところはあっても、常にその反対側にどっかスケベエな感覚を持っているから、生活部分はそれとしておいてやっていける、それが色気になっているんだろうと思いますけど、ぼくら、どうしてもまだ幼いからねえ。いずれ、だから、スケベエになっていかなきゃいけないんじゃないかという風に思いますけどね。と思いたいんですけどね。
いまのぼくの大部分は彼女から得たものですね。男は女から教わるものがたくさんある。すべてがそうだと言ってもいいんじゃないですか。
よそで燃焼するんだったら、この稼業で燃焼したい。よけいな闘い方はしたくない。
ぼくはいい男とかどうとか、あまり興味ないんですよ。なにかどこかちょっとイノセントだったり、フリークしている部分があったり、肉眼ではちょっとわからないんだけど、仕草でも、しゃべり方でも、なんかリズムが違っている、どこかつまずいたりしている、破れている、そんな人って、男でも女でもチャーミングに見えるんです。
人の死を悲しんじゃいけない。
役者っていう商売そのものは、非常に子供っぽい自己中心的な商売ですから、ある意味でそんなことに気を遣わなくていいといえばいいんです。演技派というか、いぶし銀のように光るというか、職人さんのようにこれだけ演らせればうまいというやつ・・・・。逆に言えば何をやっても同じということにもなるけど、そういう道もある。でも、僕は嫌ですからね。
興味なんてものは、まずは自分の周りにあるものを否定したり肯定したりすることから始まる。環境の中で自分の生理とか、同じ匂いがする、とかで選んでいくしかないじゃない。
僕は割と輪廻とかいうのを信じるんです。原田さんと会ったときなんか、何百年前には兄弟だったんじゃないか、と思ったりして・・・。いや、天命とか宿命があったりするような気がするんです。で、それに対し逆らわないで行こう、と・・・・。ただ、それでも、今闘わなきゃならない事では100%力を出したいな、と・・・・。
ぼくにはもうピストルを持って走ること以外できないんじゃないかって……セリフのひとつも満足に言えない。
意識はもうほとんど世界なんですよ。
松田優作のすべての名言