三菱化成工業に入社する前、イスラエルのヘブライ大学に留学していた時代があります。この時期私は、砂漠に足を運びました。そこで受け取ったのは、「この世には何もないということがある」という感覚でした。そして、何もない砂漠の中に立っていると、心臓の鼓動を明瞭に感じるのです。自己の存在を非常に重く、濃密に感じました。満員電車に揺られて何百人の中の一人である状態では、絶対に受け取ることのできない感覚です。

小林喜光

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