兼元謙任
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デザインで色や形を組み合わせるのも、音を組み合わせて美しい和音を奏でるのも、事業を組み合わせて会社を経営するのも実は同じことではないでしょうか。
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努力するにも方向性が大切です。いま思うと20代のころは、仕事のベースとなる人間力をつけるための努力が少し足りなかったのかもしれません。でも、そこで悩んだこと、感じたことが、会社を起こす起爆剤にもなりました。
私は「またか」と「珍しいな」という言葉を意識して使っています。自分にとっていいことがあったときは「またか」、あまりよくないことが起きたら「珍しいな」を使うのです。営業の電話を「また断られた」ではなく、「珍しく断られた」。プレゼンが「珍しく上手くいった」ではなく「また上手くいった」という具合です。これを習慣化すると、本当に「またか」が増えて、「珍しく」が減ってきます。
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自分がこれをやりたいと思うなら、それが実現できるかどうかは、それほど重要ではありません。なぜなら、どう頑張っても無理なことは、人は最初からやりたいと思わないからです。疾走するダンプカーを、自分の力で止めたいと本気で考える人は、まあいないでしょう。でも、のろのろ近づいてくる軽自動車を身体を張って停車させるというレベルなら、目標に据えている人がいてもおかしくありません。要するに、それをやりたいと思った時点で、実現の可能性はあると、無意識のうちに判断しているのです。
ロケットエンジン開発というのは、最終的に試作品が壊れたら成功だという事実をご存知ですか?爆発するまで出力を上げることによって、そのエンジンの臨界点が明らかになるからです。ところが、それをやっておかないと、宇宙空間でどうなったらこのエンジンが壊れるかわからない。地上実験で故障知らずのエンジンほど危険なものはありません。
お金の使い方を急に変えるのは無理です。小さいことから変えていくのがコツです。
私は、ビジネスのアイデアというのは、自分の生い立ちにあるものだと思うんです。ホームレス生活に入る前、会社の同僚とも、妻とも対話が少なかった。だからこそ、コミュニケーションの大切さを実感できました。ですから、これからはインターネット上で人々の知恵を結び付けたい、そのためにQ&Aサービスを始めたのです。
目標を持つことです。そうすれば、やる気も自ずと湧いてきます。
私はホームレス時代、公園のトイレでノートパソコンをを広げてウェブデザインなどの仕事をしました。それが現在の事業にもつながりました。そう考えると、自分も経験しましたが、給料が減るぐらいはなんでもないことです。
人間はお互い、問いと答えを投げ交わすことで、分かり合えるし、知恵も出せます。でも私は他人に対して問いを投げかけていなかったんです。そこで、「どんなことでも誰かに気軽に質問でき、それに詳しい人が丁寧に答えてくれたらいいな」という考えが芽生えました。そうした頭の中のイメージが、インターネットと結びついて現在の「Q&Aサイト」の構想につながりました。
これは祖父から受け継いだ考え方なのですが、物欲には「預けているんだ」という考え方で対処するのがいいと思います。どうしても欲しいクルマがあったら、ディーラーに預けてあると思えばいいのです。自分がお金を貯めて取りに行くまで、毎日ピカピカに磨いて保管しておいてくれていると。
目標を決めろといっても、一生の目標を決めろといっているのではありません。いま自分のやりたいこと、実現したいことを、とりあえず「仮決め」すればいいのです。仮決めですから、途中で軌道修正をしてもいいし、変更しても構いません。
20代のころは自分では努力しているつもりでも、それが空回って、人間関係が上手く築けませんでした。小学生のころある人に「あなたは将来いいことをする」と言われ、自分でも「人のためになることをしたい」と考えてきました。我が身を振り返ると、「人のためになること」が、逆に自分を縛っていたのかもしれません。つまり、自分のやることは「人のため」だから「いいこと」のはずだと、自分を常に正当化していた。そこの問題があったのではと。そのとき自分は、自分自身の答えばかりを求めて、周りに問うことをしてこなかったことに気づきました。
人はとても孤独で、自分しか自身を感じることができません。しかし他者との関係やコミュニケーションが自分の内面に働きかけるという面もあり、自分自身を成長させるには他人を鏡にして自分を鍛えていくしかありません。それはつまり「人のために何かをする」という行為が自分自身を改善していく行為になるのです。
私自身、目標の中身は若いころからずいぶん変化してきています。それでもいいのです。大事なのは目標があるという状態に自分を置くことです。
欲しかったものをやっと手にいれたら、急に気持ちが冷めてしまうことがあるでしょう。一番楽しいのは、「手に入れたい」と思って計画したり、待ちわびているときです。だから、たくさん憧れがあるのが、一番幸せなんです。
失敗したら、こうすれば失敗するということが勉強できたので、それだけ目標に近づけたと思えばいいのです。
不況だ何だといっても、まだまだ日本は豊かです。この恵まれた環境で仕事ができるのは大きなチャンスです。不安など感じている場合ではありません。
ホームレスを体験して感じたことは、「助け合いの場を提供したい」と世界中の人たちが思わなければ、この世の中はよくならないということでした。世界を変えるには、助け合いの気持ちをお互いのコミュニケーションの中で育てていくしかありません。
デジタル技術の発展に伴い、人々のコミュニケーションの希薄化が指摘される昨今、デジタル世界のネット上でも人間同士の「互い助け合い」のコミュニケーションを生み出し、世界中に「ありがとう」を創造していくことが私の使命だ。
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