山中伸弥
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スライド作りの基本は、「できるだけシンプルにする」こと。文字でなく、絵が主役と言っても過言ではない。私は、プレゼンは紙芝居だと思っています。見せるのはあくまで「絵」であって、「文字」ではありません。聞いている人がスライドの絵を見て、「何?」と思ったところで、その絵に合った話をする。
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挫折や失敗こそ新たな変化へのチャンス。失敗は決して恥ずかしいことではありません。恥ずかしいのは失敗ではなく失敗を恐れて何もしないこと。
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今の受験システムは教科書に書いてあることや先生が言ったことに疑問を差し挟むと、その人は入試にパスしない仕組みになっています。しかし、研究は全く逆で、教科書に書いてあることを疑う、先生が言ったことを疑う、そこからが始まりです。
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アメリカのグラッドストーン研究所で動脈硬化の遺伝子を研究していた時のことです。ある遺伝子が動脈硬化にかかわっているのではないかと考え、数か月かけてマウスで実験を行ないました。ところが、その遺伝子は動脈硬化よりもむしろ、ガンとの関連性が高いことがわかったのです。普通だったら「この遺伝子は動脈硬化に関係しないんだな。だったら別の遺伝子を研究しよう」となるのですが、私は、その遺伝子がガンにかかわっていることに、ものすごく興味を惹かれました。のことを上司に伝えると、「伸弥がガンを研究するんだったら応援するよ」と言ってくださった。その結果、心血管疾患を研究する研究所の中で、私はガンの研究をすることになりました。
日本人はどちらかというと失敗しないように落ちこぼれないようにと人生を歩もうとします。日本の優秀な学生は安定した大企業に就職しようとする人が多いですがアメリカだと優秀な人ほどベンチャー企業に行きたがる。たとえ失敗したとしてもそれで終わりではないと知っているからです。
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寄付活動の一環としてマラソン大会に出場していることもあり、早朝か昼休みに30分間、ジョギングするのが日課です。「アイデアはいつ思い浮かぶのですか」とよく聞かれますが、私の場合、ジョギングが終わった後にシャワーを浴びている時などに、フッと思い浮かぶことがありますね。
何が良いのか悪いのかすぐには分からない。一喜一憂せず淡々と頑張るしかない。
だからその十数年の間、がんを発生させない必要があって、そのために涙を呑んで再生能力を犠牲にしたのではないか?――と一人納得して思っている。
最初に研究者の柔軟な考え方に触れたのは、日本でのことです。臨床医になるのを諦めて、基礎医学の研究を志し、大阪市立大学大学院医学研究科の博士課程に入り直したのですが、そこで受けた三浦克之先生のご指導がそうでした。研究というのは、仮説を立て、それが正しいかどうかを実験で検証する繰り返しです。ある時、三浦先生が立てた仮説を検証する実験を行なってみると、仮説とは正反対の結果が出ました。普通、自分の仮説が外れたら、がっかりしますよね。ところが、三浦先生は逆にすごく興奮されていたんです。これには驚きました。結局、3年ほどその研究をやらせていただき、それで学位を取得しました。予想外の実験結果に興味を持ち、それによって新たな研究テーマを追究するという私のスタイルは、ここから始まっているといえます。
初めて米国に行ったのは30歳ぐらいで、もうずいぶん昔になります。「昔取った杵柄」というわけにはなかなかいかず、英語には今も苦労しています。英語を勉強する時はジョギングしながら、NHKラジオの「ビジネス英語」を何度も聞いています。
私も報道を見ていて本当に心を痛めていました。素晴らしい小保方さんの報道、これは私も大歓迎。私も娘がいまして、いま医者を目指していますが将来研究するかもしれない。うちの娘も小保方さんのように素晴らしい研究者、素晴らしい発想をもってもらいたいなと思いました。
一番の重傷は大学で膝の靱帯を切ったことですが、それ以外にも鼻や足の指、手首など骨折だけで10回以上しているんですね。その度に整形外科のお世話になりました。中学生の頃から父に「医者になれ」とずっと言われていたこともあり高校2年くらいの時には「整形外科医になろう」と思っていました。大学3、4年ごろには、スポーツ外傷を治す専門医になるというはっきりしたビジョンができました。
本当に偶然なのですが、私の場合、実験結果に導かれるように研究テーマがどんどん変わっていきました。実験をすると、全く予想していなかった結果が起きる。すると、なぜそんな結果が出たのか、俄然興味がわいてくる。それを追究するために研究対象が変わる。そんなことを繰り返してきました。自分で決めたというより、自然に導かれたように感じています。
日本人の技術者は間違いなく世界一です。器用さ、勤勉さ、創意工夫、チームで取り組む努力など、研究者として重要な素養を備えています。現在は米国にも研究室を構えているのですが、日本人は素晴らしいと痛感しています。
偉い先生が悲惨な講演をするのも見た。やっぱり発表は大事です。
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本当は僕はもっと面白い人間と思うが、これだけの方を目の前にすると、総長も横に座っているが、なかなか言えない。
理系離れは深刻です。日本では研究者の地位があまりに低い。若い人たちに研究者が魅力的な仕事に見えていません。このままでは担い手がいなくなってしまうと懸念しています。米国は日本の逆です。研究者の社会的地位が高い。ハードワークなのは日米同じですが、ちゃんとした家に住んで、ホームパーティーを開いて、楽しく暮らしている人が多いのです。給料そのものも高く、ベンチャー企業とのつながりも強い。米国では研究者が憧れの職業なのです。
一見社会の役に立ちそうな研究でも、他人の真似をしているだけなのではないかという観点で評価すべきだと思うんです。単に真似するだけだったら、一カ所か二カ所の研究機関でやればいいのであって、日本中のあちこちでやる必要はありません。それよりも、すぐに役には立たないけれど、世界で誰もやっていないような研究を応援する気風が、日本にも生まれればいいなと思っています。
大事なのは少しでも多くの知的財産を生み出すことで、欧米に対する競争意識を保ち、その競争意識を研究の促進へと繋げていくことです。
再生能力というのは、がんになるのと紙一重だと思っている。高い再生能力を持っているということは、同時にがんがすごくできやすいということなのではないか。
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