羽生善治
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勝負の世界では、ベストだと思う手法が通じるかどうかは、常に皆目わからないものなんです。ただ、この場面でこのやり方は通じないとか、この手はあまりよくないだろう、という当たりはつきます。経験知が活きるのは、そういう場面での対処ではないでしょうか。つまり「こうすればうまくいく」というより「これをやったらうまくいかない」ということを、いかにたくさん知っているかが大切であるような気がします。
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夜の闇が暗ければ暗いほど朝も明るくなる。
人は追い込まれないと深く考えないし、そういうプレッシャーの中でしか真の実力は養えません。曖昧で答えのわからない状態というのは誰にとってもつらいものですが、私はそういう局面こそ強くなるチャンスだと常に考えるようにしています。
先のことを考えるのは、楽しいといえば楽しいものです。でも、だいたいは、考えてもそのとおりにならない。いろんな人がいろんなことを予想していますが、まずそのとおりにはなりませんよね。あまり予想なんかしても仕方がないとさえ思います。
教える行為に対して、教えられる側の依存度が高くなってしまうと問題である。
将棋の世界でも、実戦を重ねれば、「過去に類似したケースがあったな」「ここから抜け出す方法はまだたくさんあるな」といった具合に、経験が生きてくる場面はあります。ただ、「経験したこと」が、その後の出来事に直接、役立つわけではありません。自分なりに過去の経験を咀嚼して、きちんと消化し、違ったものに変換させて、未来に活かすのです。
将棋にかぎらず、勝負の世界では、多くの人たちに、どれだけ信用されているか、風を送ってもらうかは、戦っていくうえでの大きなファクターであり、パワーを引き出してくれる源である。
ほんとうの勝負は定石を超えたところからはじまり、最後の決め手は情熱です。
決断とリスクはワンセットである。
意表を突かれることに、驚いてはいけない。
興味が続くかぎり、集中力は続くものです。
ごちゃごちゃ考えすぎずにシンプルな思考を心がける。
わかりそうだけれどもわからないことが一番楽しい。
同じ方法で悪くなる。だから捨てなきゃいけない。せっかく長年築きあげてきたものでも、変えていかなくてはならない。
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着手を考える際も、40代半ばの今は、20代、30代の頃とは変わってきました。最初に局面全体の方向性を大ざっぱに、感覚的にとらえて、そこから細かいところをロジックで詰めていくというプロセス自体は以前とあまり変わりませんが、局面全体をとらえるところに力を傾ける比率が、以前に比べて上がっています。
自分の考えを時折言語化してみる。
将棋で奇襲はあまり役に立たない。一回は勝てるかもしれないが、それでおしまいなので、王道を磨いたほうがいい。
ツキや運、つまり流れやバイオリズムは、たくさんの要素が絡み合って変化していくもの。これは天気のようなものなので、晴れの日もあれば曇りの日もある。一喜一憂しても仕方がない。
将棋に限らず何事も幅広く、そして世間のペースでなく、自分のペースでものを考えたい。
相手のことを知るよりも、自分自身が強くなればそれで済む世界だし、それを目指したほうが本筋というか、王道という気がしたんです。
羽生善治のすべての名言