羽生善治
1
最大の魅力は力が上がれば上がるほど、おもしろみも増していくということ。
2
損を一気に取り戻そうとすると、うまくいかないことが多い。
努力をやめてしまうのは、「それが、いつうまくいくかわからないからだ」と書きましたが、「もうダメだ」と思ったときは、結構いいところまできていることが多いものです。そこからもうひと頑張りできるかどうかが、明暗を分けます。
いかにして早く気持ちを切り替えるか、それが大事。終わったら、次の対局や次の目標、あるいは次の課題について考える。
0
何事も年齢が上がってから覚えた人は、感覚よりも知識に頼る傾向がある。
「まだその時期じゃない」「環境が整っていない」とリスクばかり強調する人がいるが、環境が整っていないことは、逆説的に言えば、非常にいい環境だと言える。リスクの大きさはその価値を表しているのだと思えば、それだけ遣り甲斐が大きい。
将棋でも、心や体の状態と判断力は密接に関係しています。私の場合、バロメーターは、答えを見つけることが時間的な制約があって難しいときに、踏ん切りよく手が選べるかどうか。思い切って選べる日は調子がよくて、逆に迷ったりためらう場面が多い日は心や体の状態がよくなかったりします。
好きなことなら時間が経つのも忘れてやり続けることができる。本当に夢中になったら黙っていても集中するものだ。
今でも新しい発見があるので将棋が楽しい。
若いうちは時間がかかっても、考える習慣をつけた方がいいのではないでしょうか。若手の棋士にも、感覚的にどんどんいい手を指してくる、才気あふれる人がたまにいますが、勢いだけで指している人は、たとえ強くてもあまり伸びません。それよりも、この局面ではどの手を選ぶのが正解なのか、常に考えながら指す人の方が、たとえいまはそれが結果に結びついていないとしても、将来、確実に強くなるといっていいでしょう。
私が直感に重きを置くようになったのは棋士になってある程度経験を積んでからのことです。10代でプロになったころは、ロジックが8~9割を占めていました。というのは、直感的に判断しようにも、直感のもとになる経験がないからです。そこで、いわば物量作戦のように、考えられる手をしらみつぶしに考えていくしかなかった。それが、10年、15年と経験を積むうちに、思考の最初の段階でおおざっぱに「だいたいこのあたりかな」と予測して、そこから細かいところをロジックで詰めていくという方法に変わっていったのです。
ひらめきやセンスも大切ですが、苦しまないで努力を続けられるということが、何より大事な才能だと思います。
4
プレッシャーは、その人の持っている器に対してかかるものだ。器が大きければ、プレッシャーを感じることがない筈だと、自分に言い聞かせています。
感性を研ぎすます秘訣は、ほかのジャンルの人と積極的に話し、聞くこと。
負けた時には絶対に原因があります。必ず自分自身のなかにミスがあります。
「絶好調!」と口にしている人は自分に暗示をかけているのではないか。
勝ち負けには、もちろんこだわるんですが、大切なのは過程です。結果だけなら、ジャンケンでいい。
直感とロジックの関係は、地図を使って目的地にたどり着くプロセスのようなものです。たとえば日比谷公園にいきたいとして、東京中をくまなく歩きまわるわけにはいきません。まずは地図で目星をつけて、近くまで電車やクルマでいく。そのうえで、最後は自分で一歩一歩歩いていかなくては目的地には着かない。直感とロジックの関係はそういうものだと思います。
今更、気張っても何とかなるわけでもないので。普通に、自然にやってどうなるか、ですね。
私は才能は一瞬のひらめきだと思っていた。
羽生善治のすべての名言