羽生善治
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基本的に人間というのは怠け者です。何も意識しないでいると、つい楽な方向や平均点をとる方向にいってしまいます。だから、相当意志を強く持って、志を高く揚げ核となっている大きな支えを持たないと、一生懸命にやっているつもりでも、無意識のうちに楽な方へ楽な方へと流されていく。自分自身の目標に向かって、ちょっと無理するくらいの気持ちで、踏みとどまらないといけません。
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すでに過ぎ去ったことは、仕方がない。私は、意識的に先のことを考えるようにしています。反省は、勝負がついた後でいい。
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「子ども世代」との対局は自分のこれからを決めるリトマス試験紙。
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人間には思考を省略して考えることができる。素晴らしい能力があるのですが、時にはそれが先入観や、偏見となって新しい発想を妨げることもよくある。
建築物が基礎から築かれていくように、どういうプロセスを経て結果が組み上がってきたのかを知るのはとても大切です。私たちはアナログで育った世代ですから、基礎や土台のつくり方を見ていますし、大変な労力と時間を使って自身でつくってきているわけです。それはある意味で、私たちの世代の強みかもしれません。
あまりにもせっかちに勝つことばかりを考えてしまうとどこかで伸びが止まってしまうのではないか。
調子は天気みたいなもので、晴れ続けることはないので、調子がよくない日は「そういう日もある」と割り切るようにしています。
正しいことをやっているが、成果が出ないときは、私は気分を変えるようにしています。気分転換は何でもいいのです。趣味を始めるでも、やめるでも。髪型を変えるでもいいのです。
年齢や環境のことなど基本的な部分はかなり大きいのも事実です。後はその人の性格とか努力が大きいですよね。本当に2、3年でパッと変わってしまう人っているんですよ。急に力が上がってくる、そういう人がいるんです。だからそれは本人のいろいろな意味での努力でしょうね。
限られた時間のなかで、すべての情報を把握するのは不可能です。とくに、最近の将棋はものすごく細分化していて、様々な戦型の開発が、同時並行的に複数の棋士によって行われています。なかにはプロの棋士である私ですら、「この型については、質問されても困る」といったものもあります。ですから、自分にとって重要だと思われる情報を、的確に取捨選択していくしかありません。
忘れていくというのは次に進むための大事な境地。
漠然とした不安は、立ち止まらないことで払拭される。精神的プレッシャーには、開き直りで立ち向かう。
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ミスはミスを呼び、悪手は悪手を呼ぶ。プロがミスをしないのは、ミスしにくい局面を選択しているからなんです。本当に見たこともない新手は、ひらめきみたいなものからしか生まれない。でも、それは、先入観をすべて捨てて考えないとなかなかできない。
「いかに戦うか」は、大局観にかかわるが、その具体的な戦略は事前研究が決め手になる。事前にしっかり準備して、万全の態勢で対局に臨んでくる人は強い。
将棋の水準は日進月歩でレベルアップしていますから、最低限求められる基礎を抑えるために、かなりの時間を割かなくてはいけないのも事実です。
40代は、自分がこれまで蓄積してきたことを、具現化していくのにとてもいい時期だと思います。
いかに集中するかではなく、いかにうまく休むかということを考える。
対局相手は自分の個性を引き出してくれる存在。
私は「どんなことでもリスクのない状態はない」と考えています。現代は様々なリスクが定量化されているので、必要以上に数値にとらわれると臆病になってリスクが取れなくなります。でも、リスクのない状態はないと開き直ってしまえば、リスクをとることにためらいがなくなります。
他力に任せるというか、うまく相手に手を渡せるかどうか。
羽生善治のすべての名言