羽生善治
4
将棋の対局は時間が長いので、何かアクシデントが起きて心が乱れても、わりとリカバリーしやすいです。テニスの試合を見ていると、不利な場面で審判にクレームをつけて試合を止める選手がいますよね。なぜ判定が覆らないのに文句をいうのか。あれは心を落ち着かせるための時間稼ぎでしょう。心がざわついても、時間が解決してくれることは多いと思います。
1
指導の基本は本人が気づくための時期を待つ。
0
定跡を学ぶことと独創的なことをすることは相反する。
細かいことに気づいていくようになれば、ミスにも気づくようになる。ミスに気づけることは、自分が以前よりも確実に進歩している証しでもある。
直感とロジックの関係は、地図を使って目的地にたどり着くプロセスのようなものです。たとえば日比谷公園にいきたいとして、東京中をくまなく歩きまわるわけにはいきません。まずは地図で目星をつけて、近くまで電車やクルマでいく。そのうえで、最後は自分で一歩一歩歩いていかなくては目的地には着かない。直感とロジックの関係はそういうものだと思います。
仕事に行き詰った時は整理整頓。
2
経験には諸刃の剣のような側面もある。
順調なときというのは、いい循環が起こっているので、それほど深く考えなくても、わりと簡単に正しい手を選ぶことができます。しかし、ミスでその好循環が崩れてしまうと、盤上が混沌としてきます。それで新たなミスを起こしやすくなるのです。明らかにミスをしたとわかったら、そのミスが次のミスを呼ばないよう気を付けています。
モチベーションと気力と情熱さえ持続していれば、抜け出せないスランプはありません。
勝ち負けには、もちろんこだわるんですが、大切なのは過程です。結果だけなら、ジャンケンでいい。
意識しているのは、一生懸命やることでしょうか。もちろん何を一生懸命やるのかという中身も大事なのですが、精神状態についていうと、一生懸命にやり尽くしたという事実が大きい。
スランプと感じたことはありません。結果が出ない時期はありましたが、それは実力だと思っています。
ミスがミスを呼ばないようにするには、お茶を飲んだり窓の外の景色を眺めたりして、ひと呼吸置くといいでしょう。それから、私の場合は、ミスをしたという事実を頭から消して、この局面から新たに始めるのだと考えるようにしています。もちろん、同じミスを再び犯さないよう反省はしなければなりませんが、それは対局が終わってからやればいい。実践中はひたすら前だけを見ていることが大切なのです。
将棋は、突き詰めると自己否定につながるところがあります。どの手を選ぶかはすべて自分の責任ですから、ミスをしたり失敗したりするのもすべて自分のせい。そう考えていくと、「結局、自分はダメなんだ」ということになりかねません。自己否定に陥らないためにどうするかというと、ある種のいいかげんさ、適当さが非常に大事なのかなと思います。
好きなことなら時間が経つのも忘れてやり続けることができる。本当に夢中になったら黙っていても集中するものだ。
今でも新しい発見があるので将棋が楽しい。
人間は自分にとって必要なことのみ覚える能力がある。
最大の魅力は力が上がれば上がるほど、おもしろみも増していくということ。
損を一気に取り戻そうとすると、うまくいかないことが多い。
努力をやめてしまうのは、「それが、いつうまくいくかわからないからだ」と書きましたが、「もうダメだ」と思ったときは、結構いいところまできていることが多いものです。そこからもうひと頑張りできるかどうかが、明暗を分けます。
羽生善治のすべての名言