ハロルド・ジェニーン
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余分に働くことの価値の理論的根拠ははっきりしている。ほとんど同等の知能と能力を持つ二人の人間を想定してみなさい。そして10年間、一人は1日8時間、もう一人は1日12時間働き続けたとしよう。10年たったころに、一人は10年、もう一人は15年に匹敵する経験を積んだことになる。君が人を雇う立場だったら、その二人のどちらを雇うだろう。どちらの方が他よりすごれたビジネスマンになる可能性が大きいだろう。
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人に命令するだけでうまくいくと信じてはいけない。自分もオールを持って、一緒に漕がなければならない。
コングロマリットは単一製品、もしくは同じ業界のいくつかの製品に固執している会社に比べて明確な利点がある。広範囲の経済活動分野をカバーする多業種、多製品会社は、経済的不況に対する保険をかけているようなものだ。カバーする範囲が十分に広ければ、その会社のある製品には、他の製品が不況に見舞われているときも、需要がありよく売れていくだろう。どんな業種にもサイクルはある。それは潮のように上げ下げするが、潮よりずっと予測しがたい。
批判されるのが好きな人間はいない。批判を受けた場合、最初の反応は防御と反撃の衝動だ。しかし、それは各自が努力して自制すべき種類の衝動だ。誰かが私と意見が合わない場合、私はキッとなるのを避けるために、意識的に後ろにもたれる姿勢をとるように努めた。私は自分が間違いを犯そうとしているかもしれないときには、誰かがそれを指摘してくれることをいつでも望んでいた。私は相手の言うことを聞き、見解を交換した。
数字が示す周辺を掘りはじめたとき、その人は初めてビジネスの真髄に触れる。もし売上が不振なら、それは製品の設計上の欠点だろうか?コスト高が原因か?マーケティングに問題があるのか?流通、財務か?数字はその企業がいかに上手くいっているか、あるいは上手くいっていないかを反映するためにある。
良いアイデアというのは得難いものであり、最高経営者は創造力に富んだアイデアを歓迎し、育てる責任があると私はいつも考えていた。最高経営者は、一見突飛なアイデアに率先して予算や資金を割り当て、リスクを冒せる地位にある。少なくとも、そうあるべきだ。
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数字は企業の健康状態を測る一種の体温計の役目を果たす。それは何が起こっているかを経営者に知らせる第一次情報伝達ラインとして機能し、それらの数字が精密であるほど、また揺るがすことができない真実に基づいていればいるほど、情報は明確に伝わる。
通常、ある人の机の上がどんなふうかということから、その人の傾向について多くのことがわかる。私の経験から言って、机の上に何も出ていない、きれいな机の主は、ビジネスの現実から隔離されて、それを誰かに代わって運営してもらっている。トップマネジメントどころか、ミドルマネジメントでも、要求される仕事の量と水準を保ちながら、机の上を綺麗にしておくなど実際不可能である。
良いリーダーのやることは紳士的でなくてはいけない。誰も自分のリーダーが無知、優柔不断、弱さから無能を甘やかすことを望みはしない。弱いリーダーについていきたいとは誰も思わない。リーダーとして弱いことは最低である。困難な状況にぶつかったら、どう変わるかわからないからだ。困難で、不評判ですらある決断をすることを恐れない強いリーダーの方がずっと多くの尊敬と忠誠を勝ち取る。目下の人間を扱うのに紳士的で公正で信頼できると知られている限り。
リーダーシップは、言葉よりも態度と行為によって発揮される。言うのはやさしいが、いったん問題が起こったとき、そうした信条を貫き通す最高経営者がどれだけいるだろうか。何人が自分の職業的経歴を危険にさらしても、自分が統率するマネジメントチームと労働者をかばうだろう。あるエグゼクティブがたった一度でも部下を裏切るなら、彼はその部下の経緯と尊敬を永久に失う。そして話は広く伝わる。
人は失敗から物事を学ぶのだ。成功から何かを学ぶことは滅多にない。たいていの人は、失敗の意味を考える以上の時間をかけて、成功の意味を考えようとはしない。分別のある謙虚な人々が、それまで経験したことのない大きな権限を伴った地位に就いたとたんに狂ってしまった例を私は見てきた。成功は失敗よりもずっと扱いにくいもののように思える。成功をどう扱うかは、まったく本人次第だからだ。
数字を真剣に取り上げない企業が少なくない。事業部が報告書を提出するのは毎四半期という会社もあるが、それでは早期警報の役に立たない。また、予算の予測と市場の現実との大きなズレに慣れてしまっている企業もある。数字が低下すると、彼らは漠然とした希望と販売部の約束に望みをかける。彼らは数字が上がったり下がったりする真の理由を知らず、数字のシグナルをおろそかにする。
ビジネスの世界においては、すべての人は2種類のコインによって支払いを受ける。現金と経験だ。まず経験を取れ。現金は後からついてくる。
社内政略は停滞した会社に最もはびこり弊害をもたらす。いかなるマネジメントにとって重要なポイントは、社内政略というものは抑止しないと会社の士気と全身力を損なうため、絶対に許すべきではない。
多くのビジネス戦略家が見過ごしがちなことは、屑物置き場が稼ぎ出す1ドルも、石油会社やコンピュータ会社が稼ぐ1ドルとまったく同じものだということだ。
14年半連続増益。
楽しい繁栄の雰囲気をつくるのに最も重要な要素は、経営組織の上下を通じて、開放的で自由で率直なコミュニケーションを定着させることだ。我々の頻繁な会議の背後にあったのはその考え方だ。どのマネジャーもトップに直接意思を伝えることができた。我々は階層に関係なく誰もが直接に意見を述べ合い、いかなる状況に関しても現実の事実に基づいて検討が行われるように、全員を一堂に集めることによって経営階層の間の壁を取り払った。
リーダーシップは物事を遂行するように人々を駆り立て、答えを出さなくてはならないと感じるがゆえにそれをやり続け、満足できる結果を得るまで止めないように駆り立てる情念の力である。もちろん、努力がいつでも成功するとは限らない。だが、その場合には、早くそれを悟り、その状況から抜け出すことだ。損失を最小限にとどめて、他のことに向かっていくのだ。マネジャーたる者は、押し流されてはならない。
企業家とは自分自身のために事業に携わっている人間として定義される。彼は事業を組織し、経営し、進んでリスクを冒す。平たく言えば、彼はすべてを賭け、大きな見返りのために大きなリスクを冒す人間である。賭けに勝てば報酬は途方もなく莫大かもしれない。負ければ何もかもおしまいだ。
真のリーダーは下の人々に、どんな理由からであっても、自分に近づくことを恐れさせないようにしなければならない。
ハロルド・ジェニーンのすべての名言