山田昭男
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役員の乗用車ももってのほか。ウチは天皇陛下がこられても、ライトバンで迎えにいくよ。乗用車を買う金があれば、そのぶんを従業員に還元したほうがいい。基本的にランニングコストは全部原価にボディブローで跳ね返ってくるから、意外とバカにならない。
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いまはどこの会社の経営者も、従業員の残業を減らすことに躍起になっているけど、残業を減らすなんて簡単なこと。8時間働いたら帰ったらええだけでしょ。従業員にそれ以上の仕事をやらせなければいい。それじゃ、ノルマを達成できないって?じゃあ、残業すればノルマが達成できるのか?そもそも会社経営というのは、従業員が8時間働けば黒字が出るように計画を組んでいるはずでしょ。残業をしないと会社が傾くと考えるのは、経営そのものがおかしいのではないか。
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常に考えろ。世間や業界とは反対のことを常に考えろ。
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まず社員を感動させ、次にお客様に感動していただく。そして儲かっていない会社の反対をやる。そうした姿勢が未来を切り拓くのだと思う。
いま派遣労働者の労働条件の改善が社会問題になっているけど、ウチはすべて正社員。そういうと、「いまは転職の時代だから、正社員を雇うのは古い」という人がいる。アホかといいたい。それはマスコミが勝手に煽っているだけやと思うね。最初から会社を辞めようと思って入社する人間が、どれだけいるのか。私には疑問に思えてならない。会社を転々としてステップアップしたいと考えている人間なんて、全労働人口からすれば、ほんのひと握りでしょ。それに、転職した人の大半が、むしろ転職先で労働条件が悪くなっているケースが多い。それを、「いまの若者はすぐ辞めるから」なんていうステレオタイプの悲観論を経営者がもってしまったら、それこそ従業員は、不安で仕事に身が入らないよ。基本的に経営者は、定年まで勤めたいと考えている大多数の真面目で純粋な従業員の思いをすくい取ってやるべきでしょう。
人を雇えないから残業させるというのは間違い。25%の割増金を払って利益を出せる会社がどのくらいあるのか。
規定時間内で成果を出すには、従業員の仕事上の不満や不安をギリギリまで減らすことに尽きると思う。
未来工業のいろいろな取り組みは、すべて社員の不満を解消するとともに、社員を感動させるためにやっていることばかりだ。感動は人を喜ばせる。喜んだ社員は一生懸命に働いてくれる。会社のためにやってやろうという気持ちになる。そうして頑張った結果が、お客様を感動させ、事業を発展させることにつながるのだ。
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世の中には、「適任者がいない」「人材が足りない」などと嘆く経営者がいると聞くが、よく周りを見てほしい。目の前にいるじゃないか。猿ならいざ知らず、人間なら自らの立場に応じて仕事ができる。一度そう信じて会社の人事を手掛けてみたらどうだろうか。
給料を払っているから従業員をできるだけこき使え、という発想。そういう発想では、いつまで経っても残業はなくならないよ。
当社では、コンセントの差込口やスイッチボックス、電線を通すパイプなど、電気設備に関するさまざまな部品・器具を製造している。大部分の製品は法律で規格が定められているため、寸法や材質はどの会社がつくっても同じ。要するに、なかなか差別化しにくいものを扱っているといえるだろう。しかし私どもは、商品を開発する際、他社がまだやっておらず、他社の特許も侵害しない工夫を必ず込めるようにしている。当然、新しい工夫を思いつかなかったら、商品として発売することはない。つまり、差別化しにくい分野でありながら、何らかの差別化が実現できた新製品だけを世に送り出しているのである。
報連相をやめた結果、自発性のある社員ばかりという理想的な組織になった。それが、大手に負けない商品を次々と打ち出せる原動力になっている。
経営者は悲観論にとらわれずに、「こうしたらうまくいくんじゃないか」と知恵を絞ったほうが、よっぽど生産的だと考えている。
世の経営者に対して、ひとつ意見しておきたいことがある。一般的に、会社で一番給料が安いのは、入社したての女性社員だろう。その女性社員でも、自動車は自分の給料で購入している。そんなのは当たり前のことだ。「ウチは給料が安いから、社員には自動車を一台ずつ買ってやろう」などと考える社長は一人もいない。ところが、会社で一番高い給料をもらっている社長は、自分の金で自動車を買わない。必ずといっていいほど会社の金を使い、女性社員よりもはるかに高級な自動車を購入する。そして会社の金でガソリンを入れ、会社の金で車検を受けて、その車をプライベートの遊びにも使っている。そんな社長の姿を見た社員が、果たして会社のために頑張って働いてくれるだろうか。私は絶対に一生懸命働いてくれなくなると思う。普通の人間ならバカバカしくなって当然だろう。たかだか4000万円の所得を上げられない、つまり儲かっていない中小企業の社長が、会社の金で高級車を買うのは、すぐにやめるべきだと思う。そうではなく、社長も自分の給料の中から、身の丈に合った自家用車を購入すれば、それだけで社員を感動させることにつながるはずだ。
本当に産業界が日本経済の成長を憂いているのなら、法人税の引き下げを政府に要求するより先に、やるべきことがあると私は考えている。赤字企業を減らすことだ。
人をルールで縛るからダメになる。縛りを解けばやる気になる。
会社というのはお金を儲けるために存在する。儲けられないのであれば、存在する価値はないと思う。それならば、「未来工業では儲からない会社と反対のことをやってやろう」という発想のもとで、これまでいろいろなことに取り組んできた。その結果、後発でローテクの岐阜県の小さな電設資材メーカーでありながら、不思議なことに何十年も倒産せずにすんでいるんだ。
社員旅行には毎年行っていて、費用はすべて会社が負担している。5年に一度は海外へ旅行していて、これまでオーストラリア、パリ、ハワイなどいろいろなところに旅行し、社員たちに喜んでもらっている。数百人の社員を海外に連れて行くには億単位の費用がかかるが、社員たちが一生懸命働いてくれて稼いだお金だから、社員が喜ぶように使う。もちろんこれも仕事へのモチベーションアップにつながる。
「提案制度」もつくっている。これは世の儲かっていないほとんどの会社でもやっているので、実は私は気に食わない。しかし、提案制度がないと、せっかく提案をしたいと思ってくれている社員に不満を抱かせることになる。つまり、当社が提案制度を設けたのは、社員の不満を取り除くことが第一の目的だったわけだ。提案制度をやるからには、儲かっていない他社とは違うやり方をしなければ気がすまない。ということで、当社では、一つ提案を受け取るごとに、提案書の中身を見る前に現金500円を払うことにした。社員にしてみれば、どんな小さな提案でも一回500円もらえるからうれしい。20回提案すれば1万円になるから、これもまたいい小遣いになる。喜んでたくさん提案してくれるから、結果的にいい提案も集まるようになる。これまで実際に、社員の提案で大幅なコストダウンや能率向上が図られてきた。もちろん素晴らしい提案には、内容に応じて1万円、2万円、3万円といった報奨金を出している。中身を確認しないで500円支払う、という当社独自の提案制度は、手前味噌ながら、なかなか効果を発揮しているといえるだろう。
成果主義やノルマを禁止した。そんな重荷を社員に課すと、無理をしてしまい、かえって契約内容の質が下がってしまう。ノルマを課さず、人の管理もしていないが、そのほうが自由なので社員は喜ぶ。喜んでやる気が出るから、自分で目標をつくって積極的に仕事をしている。
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