宗次徳二
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私が、若いビジネスマンの方たちにアドバイスできることがふたつあります。どちらも即効性はありません。やり続けることが前提です。それは、「早起き」と「掃除」をすることです。朝早く起きて、自分の仕事場の周辺をなるべく広く掃除するのです。仕事場の中だけじゃダメです。そうやって汗を流していると、他人から姿勢を評価され、信用につながります。損得や打算を考えてはいけません。雨の日も用事のある日も休まずに掃除するのです。私は雨の日とか台風、それから体がだるい、熱っぽいという日こそ燃えました。よーし、今日はいつもより長い時間掃除をするぞと。
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もちろん、カレーのおいしさもあるのでしょうが、自分としては、やっぱり接客にこだわり続けたことが一番だと思っています。接客にこだわると、当然ですが現場主義になる。1人でも多くのお客様に「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」と言いたいし、満足そうなお顔、不満そうなお顔を自分でちゃんと確認したいじゃないですか。そして現場主義を貫くと、お客様に喜んでもらうためのアイデアが湯水のようにわいてくる。それをトライアンドエラーで繰り返し試しながら、うまくいったものをかたちにして磨いていったのです。
生きている間はやり続ける。お金は使い切ってもいい。社会に恩返しをしたいと経営者の時から考えていた。
人生をマイナスから出発したと考えれば、あとは右肩上がりのプラスで行くしかない。
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社外の交友関係などは一切広げずに、常にお客様のことだけを考え続けていました。自分に期待してくれる人に少しでもお返しをしたい。だから時間も体力も無駄遣いしたくなかったんです。
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私は3歳まで児童養護施設で育ち、その後、兵庫県の養父母に引き取られました。でも、父はギャンブルに明け暮れ、それに愛想を尽かした母は夜逃げ。それからは父と2人、廃嘘のような家を転々とし、まさに飲まず食わずの日々です。長いこと電気が引けず、夜はろうそくをつけて過ごしていました。あまりにお腹がすぐと、雑草をむしって食べたりね。父が食べられると教えてくれた、イタドリという草です。今でも年に1度だけ、口にするようにしています。
一度指摘したから、と指導を一回で終わらせないことも大事です。ココイチの社員はたいてい素直ですから、注意すれば「次は気をつけます」と返事をします。しかし1か月後にその店舗を訪問すると、また元の状態に戻ってしまっている。悪意があってそうしているわけではありません。人は繰り返し指摘されないと忘れてしまう生き物です。「何度言ったらわかるんだ」と怒っても、あまり意味がありません。きちんと定着するまで、指導する側は粘り強く教えていくべきです。
店舗の駐車場は営業日報では上がってこない情報の宝庫です。販促用ののぼりはきちんと立てられているか。店舗周辺で、雑草が生えていないか。それらは、「これくらいならいいか」と見過ごされがちな小さなことですが、細かな部分に気を配れない店舗では、結局、それがお客様へのサービスにも表れてしまいます。こうしたことを指導しようとするなら、現場に足を運ばないとダメなのです。
ごちそうといえば、煮干だったんです。
「会社は自分のもの」という考えが間違いのもと。株式を公開したらなおさらだ。私の場合は、もう全力で悔いないところまで走り切って、気が付いたら有能な人が後ろにいた。執着なく会社を譲れたのは、何もかもがラッキーだった。
人脈を広げるパーティーや懇親を深めるゴルフに行く時間があったら、自ら現場に足を運び、目を凝らし、耳を傾け、現場の空気を直に感じるべきです。
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うちでは、時間のかかるカツカレーを注文した方がイライラしているようなそぶりをしたら、その方に代わって、従業員が厨房に、「カウンターの方のカツカレーはまだですか?」と聞くようにしています。そうすれば、待っている方は、「ああ、自分のことを忘れていないんだな」と思えます。
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ライバル店を観察するより、「自らが現場におもむき、自分の店を厳しくチェックする」のが私の考え方です。では、どこを見ればいいのか。商品よりも接客をチェックします。なぜなら、接客ができていない店はたいてい、売上が落ちているからです。私が会長をやっていた時代、800店まで出店しました。そのうち、閉めたのはわずか2店です。どんな店でも、トップが現場におもむき、厳しい目でチェックすれば持ち直すと思います。
23歳で独立し、不動産仲介業を始めたのですが、意外と暇でしてね。すると社交的な私の妻が、日銭を稼げる商売をやりたいと、喫茶店を開業したんです。オープン日に手伝いに行ったのですが、たくさんのお客様が来店される光景を見て、驚きました。不動産業は年に数件受注すればいい「待ち」の仕事、一方、飲食業は1日にできるだけ多くの人を集める仕事。絶対にこっちのほうが面白い、自分に合っていると方向転換して、すぐに不動産業は廃業しました。そんな経緯で、25歳から飲食業経営にのめり込むことになるのです。
経営者のもとには、現場から毎日たくさんの情報が寄せられます。私もオフィスでは営業日報に目を通し、移動中には、店舗や営業所の朝礼や会議の様子を録音したテープを聴いていました。ただ、それは人の手で一度加工されたものであり、その過程で抜けや漏れが生じる可能性を否定できません。現場のありのままの姿を知りたいなら、自分の目で見ることが一番です。だから現場に通うのです。
最初は誠実な人だったけれど儲かったら、よそ見してしまう人もいます。条件にとらわれず、人柄にこだわってきたからこそ、いい経営者にたくさん出会えてきたと思います。
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とにかく褒めて社員を伸ばすという考え方もあるかもしれませんが、褒めるに値しないことまでわざとらしく褒めると、言葉が軽くなって効果がなくなる気がします。私の場合は、7対3で注意や指導の方が多い。叱るべきときは叱る、褒めるべきときは褒めると素直に考えていたら、自然とこのくらいのバランスに落ち着くようです。
家庭訪問も断った。4畳半の貧乏生活を学校の先生に見られるのが嫌だったんです。
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人の役に立ち、人を喜ばせることは究極の贅沢。
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叱るのは、「この人なら叱られたことを自分の成長につなげてくれるはず」という期待があるからです。そうでなければ、こちらも思い切って叱れない。真っ先に叱られるのは、むしろ将来有望な証拠なのです。実際、私がココイチを託した現在の社長は、若いときによく叱られていました。叱られる人ほどよく出世する。そう考えると、叱られたことも前向きにとらえられるのではないでしょうか。
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