亀井勝一郎
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理想の夫、理想の妻を得ようとするから失望するのだ。凡夫と凡婦が結婚するのである。
1
夫婦生活は、神経の使い方が問題である。
夫婦の間に、あるいは両親と子どもの間に、肉親だから何ごとでも自由に語れると思ったら間違いだ。
4
恋の味を痛烈に味わいたいならば、それは片思いか失恋する以外にないだろう。
読書とは一種の邂逅だ。読書の目的は、要するに自分の原点を発見するということに尽きる。
教養の真のあらわれは、その人の「はにかみ」にある。
愛情がこもっていて無口な人こそ、人生の伴侶としてふさわしい。
2
どんな権威であっても、ひとたびは疑ってみることだ。疑うということは取りも直さず、変革し破壊する力だ。
愛の敵は、慣れるということである。
死そのものよりも、死についての想像の方が、はるかに我々を恐怖せしむる。
女性が弱いというのは嘘である。世の中に何が強いと言って、無神経な事ほど強いことはない。
未完成の自覚をもって、絶えず努力をつづけていくところに青春がある。たとい若くても自己満足に陥っているなら、その人は老人にひとしい。
割り切りとは、魂の弱さである。
恋愛は激しいほど休憩を欲している。恋愛にも日曜日がなければならない。それがかろうじて永続させる方法であり、つまり忘却の逆用である。
明日とは、実は今日という一日のなかにある。
絶望は人生に必ずつきまとうものだ。絶望しないような人間はある意味でたよりない人だといえる。なぜなら小さな自己に満足し、なんらの努力も考えごともしない人に、絶望は起こりえないからだ。
3
人間と人間のつながりは、程度の差はあっても、誤解の上に成立しているものです。お互いに自分でもわからぬ謎をもって生きている以上、当然のことだと言っていいでしょう。善意の誤解の上に、恋愛や友情は成立すると言っていいと思います。
恋愛は激しいほど休息を欲している。
自己に絶望し、人生に絶望したからといって、人生を全面的に否定するのはあまりにも個人的ではないか。人生は無限に深い。我々の知らないどれほど多くの真理が、美が、あるいは人間が、隠れているかわからない。それを放棄してはならぬ。
5
人間の心は、眼や表情にもあらわれるが、後姿にはっきりあらわれることを忘れてはならぬ。
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