三島由紀夫
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何のために生きてゐるかわからないから生きてゐられるんだわ。
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感傷といふものが女性的な特質のやうに考へられてゐるのは明らかに誤解である。感傷的といふことは男性的といふことなのだ。
生まれて来て何を最初に教わるって、それは「諦める」ことよ。
どんな女にも、苦悩に対する共感の趣味があるものだが、それは苦悩といふものが本来男性的な能力だからである。
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私は、言論と日本刀というものは同じもので、何千万人相手にしても、俺一人だというのが言論だと思うのです。一人の人間を大勢で寄ってたかってぶち壊すのは、言論ではなくて、そういうものを暴力という。つまり一人の日本刀の言論だ。
不安は奇体に人の顔つきを若々しくする。
われわれは自分の弱さをいやがる気持ちから人の長所をみとめる。
何かにつけて青春が未来を喋々するのは、ただ単に彼らがまだ未来をわがものにしていないからにすぎない。
たいてい勇気ある行動というものは、別の在るものへの怖れから来ているもので、全然恐怖心のない人には、勇気の生まれる余地がなくて、そういう人はただ無茶をやってのけるだけの話です。
人生とは何だ?人生とは失語症だ。世界とは何だ?世界とは失語症だ。歴史とは何だ?歴史とは失語症だ。芸術とは?恋愛とは?政治とは?何でもかんでも失語症だ。
どんな政治体制でも歴史的な基盤があって、徐々に形成されたものであるので、その点では日本の天皇制もまったく同じだと思います。ですから民主主義が悪いとか、天皇制がいいとか悪いとかいう問題じゃなくて、その国その国の歴史的基盤に立った政治体制ができていくということは当然だと思います。
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男性は本質を愛し、女性は習慣を愛する。
戦争が道徳を失はせたといふのは嘘だ。道徳はいつどこにでもころがつてゐる。しかし運動をするものに運動神経が必要とされるやうに、道徳的な神経がなくては道徳はつかまらない。戦争が失はせたのは道徳的神経だ。この神経なしには人は道徳的な行為をすることができぬ。従つてまた真の意味の不徳に到達することもできぬ筈だつた。
私があるとき死はない、死があるとき私はない。だから人間は死を怖れることはないのだ。
まことに人生はままならないもので、生きている人間は多かれ少なかれ喜劇的である。
男が金をほしがるのはつまり女が金をほしがるからだといふのは真理だな。
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男の嫉妬の本当のギリギリのところは、体面を傷つけられた怒りだと断言してもよろしい。
人生のさかりには、無理と思われるものもすべて叶い、覚束なく見えるものもすべて成るのだよ。
国家がなくなって世界政府ができるなんという夢は、非常に情けない、哀れな夢なんです。…資本主義国家も国家が管理している部分が非常に大きくなっておりますから、実際の国家の時代という点では、国家の管理機能はむしろ史上最高ぐらいまで達しているのではないか。
個人が組織を倒す、といふのは善である。
三島由紀夫のすべての名言