太宰治
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ここに、新しい第二の結婚生活がはじまる。曰く、相互の尊敬である。相互の尊敬なくして、真の結婚は成立しない。
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この世の中に、戦争だの平和だの貿易だの組合だの政治だのがあるのは、なんのためか、このごろ私にもわかってきました。あなたは、ご存じないでしょう。だから、いつまでも不幸なのですわ。それはね、教えてあげますわ、女がよい子を生むためです。
愛することは、いのちがけだよ。甘いとは思わない。
玄関まで彼を送って行き、いよいよ別れる時に、彼は私の耳元で烈しく、こう囁いた。威張るな。
幸福の便りというものは、待っているときには、決して来ることはない。
私、花も葉も芽も、何もついていない、こんな枝がすき。これでも、ちゃんと生きているのでしょう。枯枝とちがいますわ。
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人間の生活の苦しみは、愛の表現の困難に尽きるといってよいと思う。この表現のつたなさが、人間の不幸の源泉なのではあるまいか。
かずかずの大恩に報いる事は、おそらく死ぬまで、出来ないのではあるまいか、と思えば流石に少し、つらいのである。
恋愛とはなにか。私は言う。それは非常に恥ずかしいものである。
走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題ではないのだ。人の命も問題ではないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいもののために走っているのだ。
てれくさくて言えないというのは、つまりは自分を大事にしているからだ。
お酒飲みというものは、よそのものたちが酔っているのを見ても、一種のよろこばしさを覚えるものらしい。
人は、本当に愛していれば、かえって愛の言葉など白々しくて言いたくなくなるものでございます。
好奇心を爆発させるのも冒険、また、好奇心を抑制するのも、やっぱり冒険、どちらも危険さ。人には、宿命というものがあるんだよ。
駄目な男というものは、幸福を受け取るに当たってさえ、下手くそを極めるものである。
6
人間は恋と革命のために生まれてきたのだ。
ね、なぜ旅に出るの?」「苦しいからさ。」「あなたのは、おきまりで、ちっとも信用できません。
安楽なくらしをしているときは、絶望の詩を作り、ひしがれたくらしをしているときは生のよろこびを書きつづる。
笑われて、笑われて、つよくなる。
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信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。
太宰治のすべての名言