太宰治
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人間は、しばしば希望にあざむかれるが、しかし、また、「絶望」という観念にも同様にあざむかれる事がある。
3
僕は自分がなぜ生きていなければならないのか、それが全然わからないのです。
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だまって居れば名を呼ぶし、近寄って行けば逃げ去るのだ。メリメは猫と女のほかに、もうひとつの名詞を忘れている。傑作の幻影という重大な名詞を。
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生きている事。ああ、それは、何というやりきれない息もたえだえの大事業であろうか。
人間は嘘をつく時には、必ず、まじめな顔をしているものである。
男って、正直ね。何もかも、まる見えなのに、それでも、何かと女をだました気で居るらしいのね。犬は、爪を隠せないのね。男って、正直ね。何もかも、まる見えなのに、それでも、何かと女をだました気で居るらしいのね。犬は、爪を隠せないのね。
夫と妻は、その生涯において、幾度も結婚をし直さなければならぬ。お互いが、相手の真価を発見して行くためにも、次々の危機に打ち勝って、別離せずに結婚をし直し、進まなければならぬ。
人から尊敬されようと思わぬ人たちと遊びたい。けれども、そんないい人たちは、僕と遊んでくれやしない。
兄さんは、まだ寝ているのだ。むっくり上半身を起こして、「なんだ、もう行くのか。神の国は何に似たるか。」と言って、笑った。「一粒の芥種のごとし。」と答えたら、「育ちて樹となれ。」と愛情のこもった口調で言った。
不良でない人間があるだろうか。
愛は最高の奉仕だ。みじんも、自分の満足を思ってはいけない。
私のひと。私の虹。マイ、チャイルド。にくいひと。ずるいひと。この世にまたとないくらいに、とても、とても美しい顔のように思われ、恋があらたによみがえって来たようで胸がときめき、そのひとの髪を撫でながら、私のほうからキスをした。
信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。
ね、なぜ旅に出るの?」「苦しいからさ。」「あなたのは、おきまりで、ちっとも信用できません。
安楽なくらしをしているときは、絶望の詩を作り、ひしがれたくらしをしているときは生のよろこびを書きつづる。
人間は恋と革命のために生まれてきたのだ。
駄目な男というものは、幸福を受け取るに当たってさえ、下手くそを極めるものである。
6
人は、本当に愛していれば、かえって愛の言葉など白々しくて言いたくなくなるものでございます。
お酒飲みというものは、よそのものたちが酔っているのを見ても、一種のよろこばしさを覚えるものらしい。
てれくさくて言えないというのは、つまりは自分を大事にしているからだ。
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