太宰治
3
愛は最高の奉仕だ。みじんも、自分の満足を思ってはいけない。
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信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。
ね、なぜ旅に出るの?」「苦しいからさ。」「あなたのは、おきまりで、ちっとも信用できません。
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兄さんは、まだ寝ているのだ。むっくり上半身を起こして、「なんだ、もう行くのか。神の国は何に似たるか。」と言って、笑った。「一粒の芥種のごとし。」と答えたら、「育ちて樹となれ。」と愛情のこもった口調で言った。
安楽なくらしをしているときは、絶望の詩を作り、ひしがれたくらしをしているときは生のよろこびを書きつづる。
不良でない人間があるだろうか。
駄目な男というものは、幸福を受け取るに当たってさえ、下手くそを極めるものである。
6
人間は嘘をつく時には、必ず、まじめな顔をしているものである。
お酒飲みというものは、よそのものたちが酔っているのを見ても、一種のよろこばしさを覚えるものらしい。
夫と妻は、その生涯において、幾度も結婚をし直さなければならぬ。お互いが、相手の真価を発見して行くためにも、次々の危機に打ち勝って、別離せずに結婚をし直し、進まなければならぬ。
てれくさくて言えないというのは、つまりは自分を大事にしているからだ。
2
学問とは、虚栄の別名である。人間が人間でなくなろうとする努力である。
かずかずの大恩に報いる事は、おそらく死ぬまで、出来ないのではあるまいか、と思えば流石に少し、つらいのである。
だまって居れば名を呼ぶし、近寄って行けば逃げ去るのだ。メリメは猫と女のほかに、もうひとつの名詞を忘れている。傑作の幻影という重大な名詞を。
生きている事。ああ、それは、何というやりきれない息もたえだえの大事業であろうか。
玄関まで彼を送って行き、いよいよ別れる時に、彼は私の耳元で烈しく、こう囁いた。威張るな。
あの谷の向こう側にたしかに美しい花が咲いていると信じた人だけが、何の躊躇もなく籐蔓にすがって向こう側に渡って行きます。
愛することは、いのちがけだよ。甘いとは思わない。
怒る時に怒らなければ、人間の甲斐がありません。
ここに、新しい第二の結婚生活がはじまる。曰く、相互の尊敬である。相互の尊敬なくして、真の結婚は成立しない。
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