西郷隆盛
1
もうここらでよか。
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学問を志す者は、広く学ぶという心がけが必要である。しかし、ただそのことのみに偏ってしまうと、身を修めることがおろそかになっていくから、常に自分に克ち、身を修めることが大事である。
3
世上の毀誉軽きこと塵に似たり。
自分に克つには、あらゆる事柄を前にして、はじめて自分に克とうとしても、そうやすやすとはできないものだ。ふだんからその心がけを持って、自分に克てるようにしておかなければならない。
道は天地自然の未知なる故、講学の道は敬天愛人を目的とし、身を修する克己をもって終始せよ。己に勝つ極功は「意なし、必なし、固なし、我なし」と云えり。
2
幾度か辛酸を経て、志、初めて堅し。丈夫は、玉砕に及んで、瓦全を愧じる。
功立ち名顕るるにしたがい、いつしか自らを愛する心起こり、恐懼戒慎の意、緩み、驕矜の気、しばらく長じ、その成し得たる事業をたのみ、いやしくも我が事をし遂げんとまずき仕事に陥り、終に敗るるものにて、みな自ら招くなり。ゆえに己に勝ちて、見ず聞かざるところに戒慎するものなり。
どんなに制度や方法を論議しても、その適任者がいなければうまく行われない。その人あって初めてその方法が行われるのだから、人こそが第一の宝であって、自らがそういう立派な人物になろうとする心がけが大事なのだ。
大事に望みては、機会は是非、引き起こさざるべからず。
小人は、己を利することを欲し、君子は、民を利することを欲する。
正論では革命をおこせない。革命をおこすものは僻論である。
総じて、人は己に克つをもって成り、自らを愛するをもって敗る。
総じて人は己に勝つをもって成り、自ら愛するをもって敗るるぞ。よく古今の人物を見よ。事業を創起するする人、大抵十に七・八まではよく成し得れども、残りふたつを終るまで成し得る人の希なるは、始めはよく己を慎み、事をも敬するゆえ功も立ち名も顕るるなり。
事大小となく、正道を踏み至誠を推し、一事の詐謀を用うべからず。
昔から、主君と臣下が共に自分は完全だと思っているような世に、よい政治が行われたという例はない。
徳に勤むる者は、これを求めずして、財自から生ず。
人間がその知恵を働かせるということは、国家や社会のためである。だがそこには人間としての「道」がなければならない。電信を設け、鉄道を敷き、蒸気仕掛けの機械を造る。こういうことは、たしかに耳目を驚かせる。しかし、なぜ電信や鉄道がなくてはならないのか、といった必要の根本を見極めておかなければ、いたずらに開発のための開発に追い込まわされることになる。まして、みだりに外国の盛大を羨んで、利害損得を論じ、家屋の構造から玩具にいたるまで、いちいち外国の真似をして、贅沢の風潮を生じさせ、財産を浪費すれば、国力は疲弊してしまう。それのみならず、人の心も軽薄に流れ、結局は日本そのものが滅んでしまうだろう。
国が辱めを受けるようなことがあったら、たとえ国が倒れようとも、正道を踏んで道義を尽くすのが政府本来の仕事である。
およそ思慮は平生、黙座静思の際においてすべし。
人の意表をつくようなことをして、一時的にいい気分に浸るのは、未熟者のすることで、戒めなければならないことだ。
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