古森重隆
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成長分野の選定の基準は、市場に成長性があるか、当社の技術を活かせるか、継続的に競争力を持ち続けられるかという点。
よほどの天才でない限り、人間の持つ力はさほど変わらない。
「一番大事なこと」が分かったら、あとは何が何でもそれをやり抜くしかないのである。
情報の収集には目や耳はもちろん、鼻や皮膚の感覚も大切です。情報の背後にある本質をつかむには、現場での行動を通じた現実認識が重要で、足腰の強さが求められます。次に情報を頭で分析し、戦略戦術を立てる。困難が予想されれば、腹を据え、度胸や勇気を持って決断する。まわりに自分の考え方を口でしっかり伝え、ときには腕力も行使する。そしてハート、思いやりがなければ誰もついてきません。
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情報には三つの種類がある。まず一つ目は明白なメッセージ。完全に見えている情報だから、誰にでも読み取れ、理解できる情報だ。二つ目がかすかな兆候といった、部分的にしか見えない情報だ。断片的に見えるが、全体像は不明確な状態で存在している。そして三番目は沈黙だ。何かあるはずなのに片鱗も見えない。経営者はこの三つの情報を感じ取って判断していく。
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リーダーに必要なのは読む力と決断する勇気だろうね。それから、リーダーシップ。これは威圧感と言ってもいい。
企業というのは儲けるだけでなく、利益を犠牲にしてもやらなければならないことがあると思っています。
真の競争は行き詰まったところから始まる。
「あなた、動いてくれませんか」と言うようではリーダーは務まらない。「お前、やるのかやらないのか」と迫れるぐらいでないと。
企業は生き物と同じで成長し続けること、つまりゴーイングコンサーンが基本だ。存在し続けるために何を減らし、何を加えるかを判断することが重要だ。
富士フィルム・ヨーロッパ代表としてドイツに駐在したとき、私自身、戦い方を身をもって示しました。現地の日本人社員は概しておとなしく、相手に一方的にまくしたてられ、黙ってメモを取っている姿がよく見られた。それでは納得したと思われる。私は交渉相手の難しい要求にはNOを突き付け、主張種すべきことを主張しました。
どんな状況であれ利益をあげられる体制を築いていくのが経営者の仕事だ。
創業時より当社の技術者は自分たちで技術を作り上げなければなりませんでした。技術力で世界一にならない限り、コダックを追い抜くことはできません。その中で、世界ナンバーワンに対する強いこだわりが生まれました。
多角化と言うと、M&Aなどで全くの異分野に進出するというイメージを持つかもしれません。ただ、当社のケースを見ても分かるように、多角化とは本業に関わる技術を軸に進めていくべきものと私は考えます。会社自身がその分野でやっていけるポテンシャルを持たないと成功しないでしょう。
当社はフィルム製造から完ぺき主義の文化が生まれました。しかし、デジタルカメラが急速に普及する中で、写真フィルム主体から医療などの成長分野への事業構造の転換を進めました。これからは変化の素早い対応や、スピード感のある挑戦、思い切った踏み込みが必要になります。現在、私に課せられた課題は企業文化の転換です。
機械やコンピューターに判断を委ねようという試みもあるようだが、知性の放棄と呼ぶほかない。
富士フィルムの業態転換が成功したのは、経営の決断だけでなく、会社にそれを実現するための真の実力があったからです。ナンバーワンへのこだわり、メカニズムを解明しようとする姿勢、品質のあくなき追求、技術を地道に作り上げる風土――。過去の先輩方には感謝してもしきれません。
経営者のなかには「完全な情報を得られなければ判断しない」という人もいるが、それでは遅すぎる。先手必勝は経営の鉄則だ。
ひとつひとつの勝利や成就はそれほど大きなものでなくても、その積み重ねが結果として大きな差になる。
経営は「いま何が起きているのか」「何が起きつつあるのか」を数字に落とし込む必要がある。衰退する事業の売り上げはどれくらい減るのか、増えると見込まれる事業や新事業はどれほどの売り上げ、利益になるのかを数字で示す。
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