武豊
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勝利の方程式をつかんだ?道を究めた?そんなこと、思ったこともない。デビュー以来3500勝したけれど、出走回数は1万7000回以上。勝率にしたら2割に満たない。負けた数のほうがはるかに多い。
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乗りやすいか、乗りにくいかといえば、サンデーの子は明らかに乗りにくいです。でもボクとしてはその乗りにくさが好きだし得意な気がします。誰よりもサンデーサイレンスを知っているし、スランプに陥った馬を立て直す術を知っているつもりなんです。
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競馬は結果がすべて。結果を競っているんであって、努力を競っているわけではない。
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実戦を1万回経験したときに、いままでは見えなかったものがきっと見えてくる気がするんです。
レースの前にはもちろん色々考えます。特にGIは早めに枠順が発表されるので、その分だけ考える時間は長くなる。
長く乗ってきているので、「あっ、これはあのレースと同じ感じだ」みたいな場面は割と頻繁に出てきます。いわゆるデジャブのようなものです。でも、「あのとき、内に行ったらパッと道が開いたんだよな」と思って行ってみたら、開かなかったり。
ファーストコンタクトからゲートに入るまでの15分間が特に大事。
「ここで勝てば何連覇だ」とかやっぱり考えます。でも、そうやって自分に期待することは、決してマイナスにはならない。
どんなに経験を積み重ねて、似た場面を分類できたとしても、正解はその都度違うんですから。ただ、選択肢のなかに、正解が含まれている率は経験によって高まるんだと思います。
馬が歓声の正体を確認してみたそうだったから。
あなたにお金を借りた覚えはありません。
あそこでこうすればよかった、と思うことも当然あります。というか、そんなことばっかりかな。毎レース、パトロールビデオを何度も見直すのは、次のための勉強なんです。後悔ではなくて、「あそこでああやっておくべきだったかな」とか、「あそこはあっちだったな」とか。それはレース直後でしかわからない感覚ですからね。
ゴールの瞬間、まるでサイレンススズカが後押しをしてくれたようでした。
考えてみると、レース中はその場その場で瞬間の判断を求められているのに、「どうしようかな」なんて迷ったことなんてないような気がします。実際、迷っている暇もなく馬は走っているし、レースは容赦なく動いていますからね。うーん、どうやって選択しているんだろうな……。そうか、いつも少しだけあとのことを考えて乗っているんですよ。1コーナーでは2コーナーのこと、2コーナーでは3コーナーのことを考えてる。直線でゴチャつきそうだなというのは3コーナー過ぎあたりで計算しているんですよね、きっと。
ぼくの仕事は、勝って褒められるか、負けてブーブー言われるかのどっちかでしょう。始める前に、結果が出たあとのことをとやかく考えたって仕方がないじゃないですか。ぼくは、考えなくてもいいことは、ホントにぜんぜん考えない。単純なんですよ。
悔いが残るのは、自分の考えで乗れなかったときです。他人の考えに耳を傾けるのは大事で、「ホントだ。あの人の言ってた通りだ」ということもありますが、自分とは違う考えだったのに安易に影響されてうまくいかなかったときなんか、「ああ……」という気持ちになってしまいます。
パドックで馬にまたがってからゴールして無事に厩務員さんに引き渡すまで、100回以上の選択が繰り返されていると思います。
伊藤修司先生が非常に期待していたこともあったし、ボク自身も乗ってみて凄い能力を感じていたんです。出られるほうに乗れよ、という声もあったんですが、出られないかもしれない馬を選んだ。あのとき妥協していたら、ものすごく後悔したでしょうね。貴重な経験だったし、後々にまで影響した大きなこだわりだったと思います。
以前なら「人気になり過ぎ」としかめっ面をしていたところかもしれませんが、久々に「ユタカ人気」を経験できたのはうれしかったです。
昨日のボクより上手に乗れるようになっていたい。
武豊のすべての名言