武豊
1
良い馬ですよ。他の馬より脚が遅いだけ。
0
あそこでこうすればよかった、と思うことも当然あります。というか、そんなことばっかりかな。毎レース、パトロールビデオを何度も見直すのは、次のための勉強なんです。後悔ではなくて、「あそこでああやっておくべきだったかな」とか、「あそこはあっちだったな」とか。それはレース直後でしかわからない感覚ですからね。
長く乗ってきているので、「あっ、これはあのレースと同じ感じだ」みたいな場面は割と頻繁に出てきます。いわゆるデジャブのようなものです。でも、「あのとき、内に行ったらパッと道が開いたんだよな」と思って行ってみたら、開かなかったり。
もっと上に行こう、という欲を失ったら終わり。努力とか根性とかよりも欲ですよ。
2
実戦を1万回経験したときに、いままでは見えなかったものがきっと見えてくる気がするんです。
とにかく、やるべきこと、やれることを全部やっていくつもりです。その結果、見ている人をワクワクさせるような、レースができればいいなと思っているんです。
悔いが残るのは、自分の考えで乗れなかったときです。他人の考えに耳を傾けるのは大事で、「ホントだ。あの人の言ってた通りだ」ということもありますが、自分とは違う考えだったのに安易に影響されてうまくいかなかったときなんか、「ああ……」という気持ちになってしまいます。
去年のマイルチャンピオンシップでは、最内の1番枠をもらったので、早い段階でインにこだわると決めていました。ところが前日がひどい土砂降りで、内側が不利な馬場状態にみるみる変化していった。これじゃあ一回下げて外へ出して行くしかないかなとも思いましたし、それでも、みんなが外へ行くようならギリギリまだマシな内目を狙ってみようかなとか、思いは揺れましたね。
伊藤修司先生が非常に期待していたこともあったし、ボク自身も乗ってみて凄い能力を感じていたんです。出られるほうに乗れよ、という声もあったんですが、出られないかもしれない馬を選んだ。あのとき妥協していたら、ものすごく後悔したでしょうね。貴重な経験だったし、後々にまで影響した大きなこだわりだったと思います。
3
勝利の方程式をつかんだ?道を究めた?そんなこと、思ったこともない。デビュー以来3500勝したけれど、出走回数は1万7000回以上。勝率にしたら2割に満たない。負けた数のほうがはるかに多い。
クラシックの騎乗馬に関しては、その後も直前まで決めないのがベストというスタンスで考えています。例えば夏の新馬戦でいい勝ち方をすると、若いジョッキーなどはすぐに「来年はこの馬で」とか言うじゃないですか。ボクは欲張りだから、もっといいのが出るんじゃないかと心の中で思っています。
レースの前にはもちろん色々考えます。特にGIは早めに枠順が発表されるので、その分だけ考える時間は長くなる。
競馬は結果がすべて。結果を競っているんであって、努力を競っているわけではない。
「ここで勝てば何連覇だ」とかやっぱり考えます。でも、そうやって自分に期待することは、決してマイナスにはならない。
普段の騎乗馬については、意外なほど騎手には選択権がないんですよ。こちらはあくまでも騎乗依頼を待つ立場なんです。
ファーストコンタクトからゲートに入るまでの15分間が特に大事。
あなたにお金を借りた覚えはありません。
馬が歓声の正体を確認してみたそうだったから。
決められないというのではなく、決めないんです。飛行機とか宿とかレストランとか、早くから前もって予約を取ることは、ほとんどしないですね。そのときそのときの感覚で決めたいんですが、周りをヤキモキさせてしまってるみたいです。
アメリカに本拠地を移す決断だって、自分のなかでは少しもたついたなという感覚がありました。行くということは決めていたし、やめようと思ったことはありません。でも準備とか時期とかでスパッといかなくて、このままでは短期遠征ばかり繰り返すことになっちゃうんじゃないかと思ったとき、「よし、じゃあもう行こう」って決めたんです。
武豊のすべての名言