小倉広
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人間関係には「作用・反作用の法則」があるので、「俺を認めない部長が悪い」などとグチや悪口をいえば、必ず倍になって返ってきます。悪口が相手の耳に入れば、ますます上司から嫌われ、評価が下がるだけ。反対に、グチをいわずに上司に指示された仕事を一生懸命やっていれば、上司も「俺のためにこんなに頑張ってくれるなんて、いい部下だな」と思って、その人を可愛がるようになる。
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毎日継続的に行ないたいのが、部下が行なう「ルーティン」のムダ削除です。部下のPDCAサイクルを意識することが重要です。部下の仕事のムダをなくすには、上司は積極的に部下の仕事の「P」と「C」と「A」に関わり、「D」部下自身に任せる、というやり方がベストです。中でもキーになるのは「P」、計画の部分です。残業を発生させるムダの大半は、計画の立て方の段階のズレに起因すると言っても過言ではありません。
自分の仕事を意味のある仕事、人とつながる仕事に変えることで、どんな仕事でもステップアップできます。
ときには、自分と他人を比較して、「どうしてあいつのほうが評価が高いんだ」と不満に思うこともあるでしょう。でも、その人の評価が高いのは、信頼を蓄積しているからです。上司に指示されたことは素直にやり、上司が困っていたら助け舟を出す。その積み重ねで上司の信頼を得ているのです。それを「上司にゴマをすっている」などと非難するのはお門違い。リーダーが仕事をしやすいように部下が動けば、組織の生産性は上がるのだから、会社員としてごく当たり前の行為です。
「内発的動機づけ」は、自分で決めているという自己決定感や有能感など、自分の中からわき出るもので、これがある限り、人はモチベーションを保ち続けることができます。部下を褒めたり叱ったりするマネジメントは、その機会を奪ってしまうことになるのです。
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尊敬される上司になるには、「仕事」には「信用」。「人」には「信頼」。それぞれ異なるシステムで対応すること。「信用」とは、過去の実績があるからこそ、相手を信じる、という姿勢。「信頼」とは、相手を無条件に信じること。
縁のできた人に助言をもらったら、必ず言われた通りにやってみます。人からのアドバイスの内容は、たいてい自分一人では気づけないこと。自分の視野を広げてくれるものですから、有難く実行します。
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お金を生むのは人を動かす仕事です。たとえば米俵を一人で一俵担げる人はすごいが、人を使って百俵担がせる人はもっとすごい。一人だけの作業と人を動かす仕事では、圧倒的なパフォーマンスの差が生じるし、当然ながら稼ぐ額も違ってきます。
助けてあげたいと思わせる人は、弱みをさらけ出せる人。自分の弱みを素直に認め、「困っているんだけど、どうしたらいいかな」と謙虚に助けを求める。そんな人に対して、周囲の人も素直な姿勢に親近感を抱き、「仕方ないな」と手を差し伸べる。
ほかの人が「つまらない」といって手を抜く仕事を一生懸命にやっていれば、それだけで目立つし、評価も上がる。抜擢や昇進といったチャンスも増えるでしょう。転職を考えるとしても、そういう人なら誰かが声をかけてくれるし、いい縁にも恵まれる。結局、いまいる場所でベストを尽くすことが、人生を確かなものにする唯一の方法なのです。
「俺は上司にこびたくない」などと妙な美意識を発揮する人は、組織より自分を優先しています。組織のパフォーマンスを下げれば、会社から認められないのは当然のこと。自分を認めてほしいのなら、なおさら「フォー・ザ・チーム」の精神で行動すべきです。
尊敬されない上司のパターンのひとつは、「仕事にも人にも優しい」、つまり部下に甘いタイプ。部下が失敗しても「大丈夫だよ」といたわり、課題解決は先送り。部下は一時的には上司に好感を持ちますが、成果は上がらず、組織も立ち行かなくなります。部下も徐々に「この人はただ調子が良いだけなのでは?」と気づき、最終的にはナメられてしまうわけです。
青森県の大間町に、「日本一のマグロ釣り」といわれる漁師がいます。最高価格がつくマグロを毎年釣り上げ、なおかつ平均の4倍近い漁獲高を誇る人物です。彼はこういっています。「海に出れば、嵐や時化でマグロが釣れないことはいくらでもある。天候という自分の力ではどうしようもないことに一喜一憂していたら心身がもたないので、自分はつねに船や漁具の手入れをしっかりして、毎日同じ時間に船を出すことだけを考えている」。つまり、自分でコントロールできないことに支配されると、不安や苦しみが生まれてしまう。だから、自分ができることを一生懸命やるしかないのだ、といっているわけです。
ダメなのは、ミスをただすうちに、キミはいつもぼんやりしているな、ダメなヤツだなと部下の人格まで否定するケースです。人には2つの価値があります。存在価値と機能価値です。前者は仕事のできる。できないに関係なく、あらゆる人に価値があるということ。これを否定されたらツライでしょう。
アドラー心理学では、人を育てるには「上から評価して褒める」のではなく、「横から勇気づける」ことが有効だと考える。褒めることの正体は依存心を育て自律性を奪うという意味で「勇気くじき」にほかならないわけだが、では、人はどんなときに最も勇気が湧くかといえば、組織や共同体への貢献を「横から感謝された」ときである。
仕事がつまらないと思うのは、壁を乗り越えた経験がないからです。やりがいというのは「壁」の向こう側にしかないので、つまらない仕事を乗り越えた人だけが.それを手にすることができます。
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好んでミスする人はいませんよね。ミスは精一杯頑張った上でのもの。「君はベストを尽くした」と認めてあげるべき。そして一緒に考えようと促す。最近は、大丈夫だよ、僕がカバーするからという優しい上司も多いようですが、部下は上司に依存してしまい、よくないフォローの仕方だと思います。
人間というのは、「信頼」で動きます。信頼している相手がいうことなら、多少納得がいかなくても、「君がいうならやってみようか」と考える。逆に、信頼していない相手がどんなに正論をいっても、「君の話は聞きたくない」と思うものです。上司に認められたいなら、日ごろから信頼を蓄積することが必要です。
リーダーは部署を最も俯瞰的に見られる立場にいて、かつ決定権を持っています。その中では「現場の声」がなくとも、ムダと判断すれば切る、という必要性も出てきます。私自身も社長として、何度かこうした経験をしてきました。
理想ばかり追い求めている人は、現実から逃げているということを直視すべき。
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