島崎藤村
2
遂に、新しき詩歌の時は来たりぬ。
親はもとより大切である。しかし自分の道を見出すということは、なお大切だ。人は各自自分の道を見出すべきだ。
1
うらわかき想像は長き眠りより覚めて、民俗の言葉を飾れリ。伝説はふたゝびよみがへりぬ。自然はふたゝび新しき色を帯びぬ。明光はまのあたりなる生と死とを照せり、過去の壮大と衰頽とを照らせり。
4
人生は大いなる戦場である。
愛の舞台に上って馬鹿らしい役割を演じるのは、いつでも男だ。
3
新しきうたびとの群の多くは、たゞ穆実なる青年なりき。その芸術は幼稚なりき、不完全なりき、されどまた偽りも飾りもなかりき。青春のいのちはかれらの口唇にあふれ、感激の涙はかれらの頬をつたひしなり。
弱いのはけっして恥ではない。その弱さに徹しえないのが恥だ。
ああ、自分のようなものでも、どうかして生きたい。
すべて、徹底を願うことは、それにともなう苦痛も多い。しかしそれによって与えられる快感は何ものにも見出すことが出来ない。
なげきと、わづらひとは、わが歌に残りぬ。思へば、言ふぞよき。ためらはずして言ふぞよき。いさゝかなる活動に励まされてわれも身と心とを救ひしなり。
病のある身ほど、人の情の真と偽とを烈しく感ずるものは無い。
木曽路はすべて山の中である。
誰か旧き生涯に安んぜむとするものぞ。おのがじし新しきを開かんと思へるぞ、若き人々のつとめなる。
わきめもふらで急ぎ行く君の行方はいずこぞや琴花酒のあるものをとどまりたまえ旅人よ。
ユーモアのない一日は、きわめて寂しい一日である。
若き聖ののたまはく道行き急ぐ君ならば迷ひの歌をきくなかれ。
この世にあるもので、一つとして過ぎ去らないものは無い、せめてその中で、誠を残したい。
好い笑いは、暖かい冬の陽ざしのようなものだ。誰でも親しめる。
寂しい道を歩きつづけて来たものでなければ、どうしてそれほど餓え渇いたように生の歓びを迎えるということがあろう。
田山君、死んでゆく気持ちはどうだね。
島崎藤村のすべての名言