齋藤孝
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どれほど天才的なビジネスパーソンでも、将来への見通しをすべて的中させることはできません。決断しても、それが裏目に出ることは大いにあります。しかし彼らは決断が早い分、撤回も早い。周囲を振り回すことになりますが、傷口を最小限に抑え、しかも短期間のうちに失敗の経験を蓄積し、また素早い決断で再生を期すことができます。このサイクルの繰り返しが、より大きな決断を可能にさせているのです。
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私自身は打ち合わせの時には必ずそのポイントを箇条書きにしたものなど、資料持参していきます。紙を見ながら話をすると効率がいいし、その紙に書き込むことができるので、相手の人にも親切です。いずれにしてもちょっとした準備がコミュニケーションにはとても大切です。
ビジネス文書では、最初に結論を持ってくる方法も有効です。一般的に文章は起承転結で書くべきだといわれますが、ビジネス文書に小説のようなドラマチックな展開は必要ありません。忙しい人ほどいきなり本質を知りたいはずですから、むしろ「起」や「承」を省いて、最初に「結」を持ってきた方が喜ばれます。
テーマすらはっきりしない会議が少なくない。状況を打破するためには、「何のための会議か」を、改めて自問する必要がある。
自分の目指す利益が明確に定まっていれば、どういう選択肢を用意できるかも見えてくる。あるいは相手がどういう利益に固執しているかが読めれば、その部分を譲ることで、「その代わり」と、自分の要求も出しやすくなる。より柔軟かつ多くの選択肢を用意すればするほど、交渉はスムーズに進むだろう。
一つでもインスピレーションを得ることができれば、コミュニケーションは完全な成功である。
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上司の大きな役割の1つは、部下に対する「御用聞き」だと、私は思っている。特に用件がなくても、機会を見つけては、「調子はどうだ?」「何か困っていることはないか?」と、声をかけた方がいい。部下の表情や声の調子から状況を把握でき、「気にかけてもらっている」という印象を与えられる。
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文章を最後までひととおり書いたら、その中から文章の核となるキーフレーズを3つ探します。キーフレーズは、問いと答えでいうと答えにあたる部分でもあります。本来であれば、「この文章は何のためにあるのか」という問いは、たとえ漠然としたものであっても書く前から浮かんでいるはずです。ただ、それを文章という形で表現することに手間取るなら、逆に答えの方から問いを明確にしていくアプローチがあってもいい。キーフレーズが見つかったら、逆にキーフレーズから問いを立てていくことにより、問題意識を読み手と共有できるような一文をつくるのです。あとは、それを頭に持ってきて二文目以降を整理するだけです。
交渉ではいくつかの条件やオマケを用意すること。お互いに「この案しか認めない」とごり押しし合っていては、らちがあかない。「この部分は譲歩するから、この要求はのんで欲しい」「こういうサービスを追加するから、料金はこれでお願い」等々と、足し算・引き算をしていく。
人というのは、普段はそれほど仲がよくない者どうしでも、みんなでこれを成し遂げようというものがあれば、手をとり合って協力するようになる。
自分のアイデアを通したいという情熱はもちろんだが、イメージ喚起にはデータによる裏づけも必要だ。統計的な数字に限らず、新聞・雑誌の記事や顧客の声などを提示すれば説得力も高まる。これは、プレゼン等での常套手段だろう。もう一段上を狙うなら、自ら動いてデータを作る手がある。
しっかり相手に伝えたいとき、人は自然に準備するものです。先日何も持たずに手ぶらでプレゼンした学生がいましたが、とても違和感がありました。ちょっとした準備が相手とのコミュニケーションをより円滑に深いものにする。「この人は準備してきて真剣だな」というアピールにもなります。
相性や好き嫌いという感情は脇に置いて、いわば戦略的互恵関係を築くことが重要。
これだという最良の選択肢があれば、決断は簡単です。しかし現実にはそういう選択肢がそもそも存在しないケースも多い。そういうとき、決断が遅い人は思考停止状態に陥りがちです。かたや決断が早い人は、「手持ちの選択肢の中で、一番痛い目に遭わないのはどれか、仮に失敗してもなんとか取り返しがつくのはどれか」という視点で選択肢を消していき、素早く決断を下します。
ここぞという戦いに勝つためには、単に地道な努力を重ねるだけでは十分ではない。その努力は何のためにしているのかを常に意識することも重要。
読書は、一人のようで一人ではない。本を書いている人との二人の時間である。
ものごとには必ずプラスとマイナスがある。両面から見ることの出来るのが本当に知恵のある人。
プライドは減らしていくというのが重要。30近くになったら、つまらないプライドなんか捨てていくこと。
ビジネス上の決断に、裁判の判決のような細かさや正確さが求められることはまずありません。むしろ、一定のグレー幅の中で決断すればいいことがほとんどでしょう。決断が速い人はそのことをよく知っているから、素早い決断が可能なのです。
一人の静かな時間は、人を育てる。
齋藤孝のすべての名言