ハワード・シュルツ
1
私たちはコーヒーやペイストリー、現金、損失などを綿密に記帳し、何が良く売れているか把握するために個々の商品について追跡調査した。そのおかげで、常に資金繰りを明確にすることができたのだ。こうした情報の蓄積によって、新製品を売り出す際に明確な目標を設定することも可能になった。
0
私たちはコーヒービジネスを展開しているのではないのです。コーヒーを提供するピープルビジネスを展開しているのです。
5
社員の福利厚生を充実させれば競争上優位に立てるというのが私の持論である。経営に携わるようになった当初から、スターバックスを誰もが働きたがる人気のある企業にしたいと考えてきた。他の小売店やレストランよりも高い給与を支払い、他に抜きんでた福利厚生制度を整えることによって、コーヒーに対する我が社の情熱を人々に伝えたいという強い意欲を持つ人材を集めたかったのだ。これと正反対の考え方の企業が実に多い。下級職に対する福利厚生費用はぎりぎりの線まで削るべきだと考えられている。
一か月、三カ月、一年と時が流れ、新たな市場への参入を果たすたびに、大企業が我々を追い払うのはますます困難になってきているという自信が深まっていった。値引きを基礎としたビジネス展開を図り、小売店の経験もない彼らには、我々のように顧客と密接な関係を確立するためのノウハウが欠けていたのだ。
2
私は一年かけて資金を集めようと頑張った。242人にプレゼンテーションして217人に断られたのだ。こんなに大勢の人から、あなたのアイデアは投資の価値がないと言われたら、どれほど気持ちが落ち込むか想像してもらいたい。それでも私は、自分の計画が行き詰まるとは思わなかった。
3
われわれは、コーヒーを売るために商売をしてるのではない。人々を喜ばせたいと想い、その手段としてコーヒーを扱っているのだ。
10
スターバックスが他社に抜きんでた存在となった理由を一つだけ挙げるとすれば、それはビーンストックを導入したことだろう。ビーンストックとは、スターバックスのストックオプション制度の名前である。スターバックスは株式を公開していなかったにも関わらず、ストックオプション制度を導入した。対象は経営トップからバリスターに至る全社員で、それぞれの基本給に応じて自社株購入権が与えられた。全社員が経営のパートナーになったのだ。
悲観的な人間の言うことに従っていたら、何も成し遂げることはできない。安全な分野で安全なことだけやっていたのでは、たいしたことはできないだろう。あまり人の通らない道を選ばなければ、新しい会社を設立したり、新しい製品を開発したり、長期的な事業を進めたり、周りの人を励ましてその能力を引き出し、より高い目標を達成することなどできるはずがない。
事業計画などは単なる紙切れにすぎない。いかに見事な事業計画でも、社員がそれを受け入れてくれなければ何の価値もないのだ。社員が経営者と同じ気持ちになり、心底やり遂げようと決意しなければ、事業を継続することはおろか、軌道に乗せることすらおぼつかない。そして社員は、経営者の判断が信頼でき、なおかつ自分たちの努力が認められ、正当に評価されるのだと実感した時、はじめて計画を受け入れる。
常に成功が保証されているわけではありませんからね。私は毎日何かを学ばなくてはいけない。優雅になってはいけないと思っています。
スターバックスの歴史は成長と成功の記録にとどまらない。一企業がどのように変わったやり方で成長したかという物語でもある。スターバックスは真心で経営し、魂をはぐくみ、しかも利益を上げられることを実証している。我々は社員の人格を尊重するという社会の基本理念を犠牲にすることなく、長期にわたって株主に利益を配当しているのだ。
私はこう考えた。自分が50店舗まで拡大することを望み、投資家たちが他の都市への進出の可能性を疑っているのであれば、自分の計画が実行可能であることを、いますぐはっきりと証明して見せなければならない。シアトル市内に10店舗オープンしてからでは手遅れになる。
不運があきらめから生じる事は間違いないが、幸運はそれを目指した者がつかむのだ。
6
頂点に立つ有能な人物と、より才能に恵まれていながら能力を発揮できない人物とは、どこが違うのだろうか。成功の要素にはタイミングとチャンスがある。しかし、本当は自分自身でチャンスを作り出し、他の人たちに見えない大きなチャンスが見えた時には、いつでも飛びつけるよう準備をしておくべきなのだ。
ビジネスは単なるゼロサムゲームではない。このことを自覚できない経営者が増えている。社員の利益を図ることはコストが増え利益が減るどころか、経営者が予想もしなかったような大企業に発展するための強力な活性剤になることを自覚する必要がある。
会社を組織してみれば、自分一人では何もできないことがすぐわかる。心から信頼できる協力者、自分とは違う能力を持ち、価値観が同じ人間を発見できれば、さらに強力な企業を築くことができる。会社の草創期にどのようなシグナルを送り、いかなる価値観を植え付けるかという問題を決して軽んじてはならない。パートナーと組むときも社員を採用するときも、あなたと同じ情熱、意欲、目標を持つ人物を選ぶことが必要だ。
自分のアイデアを話しているうちに、いま何をなすべきかがわかってきた。いまが絶好のチャンスなのだ。このチャンスをつかまずに、現状に甘えてリスクを避け、いたずらに時を過ごしていたらチャンスは二度と戻ってこないだろう。このチャンスをつかまなかったら一生後悔することになると私は思った。結果がどうなろうとやらなければならない。
成功した起業家ほど、自己改革が必要な者はいない。
銀行から借金して資金を作るのは最善策ではない。銀行から借金する企業家が多いのは、そうすれば資金を自由に動かせると思っているからだ。株式を発行して資金を集めた場合、自分の思い通りの経営ができなくなる危険性がある。彼らはそのことを恐れているのだ。しかし、企業家として事業に対する支配権を確保する最善の方法は、たとえ自分の持ち株が50%以下になっても、実績を上げて株主を喜ばせることだ。将来の成長と改革の足かせとなる膨大な借金をするより、その方がはるかにリスクが小さいのである。
社内文化を変えるのは不可能ではないが、極めて困難なのである。5年間、間違った価値観で会社を運営したら、その基本的理念を変えるには時間がかかる。すでに井戸の水があふれていたら、それを飲まざるを得ないのだ。企業家は、会社の発足当初から社内文化や価値観、指導理念を組織に浸透させなければならない。それが会社の方針や雇用、経営戦略を決める基盤となる。
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