中村修二
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物理の説明って、あとからついてくるものなんですよ。最初に発見やモノ作りがあって、あとで適当に屁理屈をつけて理論をつける。それがほとんどです。理論が最初にあって、何かモノができるっていうのは、ゼロじゃないですけど稀です。大体は発見が先で理論付けはあとですね。
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徹底して考え抜いた末に生まれる「独創性」と、最後までやりぬく「粘り」を持つこと。この両輪なくして、大きな夢を実現させることはできない。
むしろ、効率が悪く、時間がかかった方が、成功しやすいともいえる。失敗してその原因を一つ一つ追求していけば、時間がかかるのは当たり前だ。
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米国には定年はないですからね。だから、「行けるまで」やります。研究は、今はもう学生や会社の若い人に任せています。私の役割は方向性を決めることです。
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紆余曲折のない人生などあり得ない。安定した生活など歴史上どこにもない。
現在の米国は、ものづくりのほとんどをアジアに委託している。「アジアの中で日本はものづくりが最もうまい」と米国人は思っています。だから、米国人はものづくりに関しては、日本とコンビを組んでやりたいんです。日本人は、一番真面目ですから。
別にただの金属ですよ。
方向性や体制づくりが一番大事です。もし、方向が違ったらいくらやっても結果は出ないですからね。
米国の課題は、ものづくりが苦手なことです。個性を伸ばす教育で、みんな違う人間をつくる。日本はみんな同じような人間を大量につくる教育ですから、グループで品質のいいものを作るのは得意です。米国人は、グループでの仕事が得意ではありません。
地球温暖化が進んで、100年後に地球はあっても、人類は存在していないんじゃないかな。技術進化を予測するより、二酸化炭素削減と代替エネルギーの問題を解決するのが先だと思います。
何と言われようと、自分がやれると思ったのならやれると信じて進むことだ。あくまでも"目標で自分を動かせ"なのだ。
たとえばロケットが好きな子どもがロケットで遊んでいたら、日本のお母さんはきっと怒りますね。勉強しなさいって言って。でもそれがアメリカなら、好きなロケットにとことん打ち込めるシステムになっているんですね。それが将来の優れた宇宙技術者を育てることにもつながるんです。
これを言うと誤解されるんですけど、やはり仕事の対価は報酬だと思います。野球選手もいい成績を挙げれば報酬が上がるでしょう。サラリーマンだって、いい仕事をして成績を上げれば、相応の報酬を受けるべきです。日本の技術者は優秀なんですから。
日本の技術者は真面目で優秀です。問題なのは、ベンチャーについての知識が不足していることです。そこは教育の問題でしょう。米国では、小さいときからベンチャーやファイナンスなど、自立するための教育を受けている。だから、あまり大手企業に行こうなどとは思わないようです。
ノーベル物理学賞には受賞分野の順番があるんですね。宇宙関係やベーシック理論などね。私の場合は固体物性。4~5年おきにこの分野の受賞がまわってくるんです。今年は私の分野。だから今年来なければ、もう来ないかな、と思っていました。製品化して21年経ってますから、これで来なかったらもうないかもしれないと弱気にもなっていました。ほかにも固体物性の候補はいますからね。しかも私の場合は製品化したのであって、そういう業績では来ない、やはり理論でなければ、とも思っていました。
省エネの技術で人類に貢献したい。その気持ちもあって、青色LEDと青紫半導体レーザの発光効率を上げ、消費電力を減少させようとしています。地球温暖化やエネルギー問題を解決できるのは技術者や研究者だけです。ぜひ、日本のエンジニアにも協力してほしいと思っています。
私の青色のLED=発光ダイオードと青色のレーザーの発明で、スウェーデンのノーベル財団から物理学賞をいただき、非常に光栄に思っています。私の夢であったLEDによる照明が現実になったことをうれしく思う。世界中で、照明の省エネと低コスト化が実現することを願っています。
新しいものにチャレンジするとゼロからやり直しになるので、必死になって勉強します。すると、自分の能力が伸びる。そういう意味で、同じ会社にずっといたらダメだと思うんです。ベンチャーを5年置きに立ち上げていたら、そのたびに環境が大きく変わります。むしろ、自分の能力を磨くために、5年置きぐらいで会社を替えるべきです。
私が開発した青色LEDを信号に採用していないのは、日本ぐらいですよ。欧米はもちろん、中国や韓国までも採用しているのに……。青色LEDを使えば、恒久的に信号機の交換が不必要になる。そうなると、困るわけです。今まで信号機の交換を仕事としていた人は、その仕事がなくなるから。このような会社に官僚や政治家たちが深く関わっている。
報酬の少なさにスレイブナカムラとまで言われた。まるで洗脳社会だ。がくぜんとする。
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