松井道夫
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人生もそうだと思いますが、ねちっこくないといけない。これを簡単な言葉で言ったら「あきらめるな」ということになるのでしょう。あきらめというのは「逃げ」ですから、あきらめちゃいけないんです。とはいうものの、私自身、いつでも逃げ出したい衝動には駆られます。でも、人間の行為で一番後悔するのは、逃げることでしょ。逃げると自分自身が許せなくなってきます。あとで悔やむのは自分。そんなことで苦しみたくないから、逃げない。その一念でやっています。
新しいことは、批判精神からしか生まれない。一番大事なのは哲学するということ。自分の頭で考えること、自分を信じるということ。自分はエモーショナルな人間だと思っている。感性をベースに行動している。自分が問題意識を持ち、常に考えていれば、どんな人の話を聞いても必ず何か役に立つものである。
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これからは日々進化するロボットやコンピューターが人間の単純労働を代替していくだろう。さりとて、人間がいらなくなるわけではない。もっと高次の仕組み「創り」にその能力を発揮すればよい。人間本来の持つ、アナログ的能力が再び付加価値の源泉となるだろう。
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だれが解いても同じ答えが出る、数学などとは違い、ある状況のもとで、会社や人間がとるべき行動は、ひとつではない。いくら正しい論理を繰り広げてみても、視点を変えれば別の答えが導き出せる。
ビジネスモデルが陳腐化すると、価格競争が激化しがち。安売りは業界全体の衰退を誘う。
私の好きな言葉は「坐忘」です。これは大学の先輩でもあり日本生命の社長・会長をされた故・伊藤助成さんから教えてもらった禅の言葉です。新しいものを取り入れる為には、まずは古いものを捨てるしかないと。捨てた余白に新しいものがどんどん入ってくる。シュンペーターが唱えた「創造的破壊」と同じです。
一番大事なのはアナログの感性。美しいな、良いなという気持ちに対して人はお金を払うことになる。
社外から否定されるのは大したことはありませんが、社内から否定されるのが一番辛かった。他の業界から移ってきた、何処の馬の骨だか分からない奴が、跡取り娘婿というブリキの看板背負って、常識外のことを叫ぶんですから、まあ当然といえば当然なんです。支持してくれる人は周りに極めて少数しかおらず、四面楚歌の状態。やってみなければわからないことをやれと言うんですから、説得するとかしないとかいうような状況にはありませんでした。俺が全責任を持つから黙ってやれとしか言えなかった。
松井証券では社員を120人に絞り、給料は会社からもらうのではなく、顧客から得た利益の中からもらうという意識を徹底させている。会社という組織の中で「給料をもらって働く」のではなく「自分が働いて給料をもらう」というのは至極当然の考え方である。
組織というのは、こだわりを結集して成り立つものだと最近では思っています。こだわりがない人間はやはりダメです。こだわりのない者を何十人、何百人と集めても単なる烏合の衆です。執念のある人間を何人集められるか。それが社長の仕事です。
自分で言うのもなんですが、私はおそらく経営者に最も向いていない人間だと思っています。でも、開き直ってみると、そもそも経営者に向いている人間って何なんだ、とも思う。私はかなりしつこいし、途中であきらめません。もしかしたら、それだから経営ができているのかもしれません。
押せばいいのか、引けばいいのか、という判断には、その時点では確信が持てない。重要な案件ほど先にならなければ、結果が見えてこないものだ。わからないからこそ、リーダーの思い込みしかないと、私は考えている。
業界を取り巻く環境が加速度的に変化しており、それに対応できる企業だけが生き残れる。
会社はでかけりゃいいってもんじゃないだろうと思います。単位当たりで大きいほうがいい。そういう会社のほうが、自分も含めてそこで働いている一人一人の価値が高くなるからです。
結局、最後はアナログに帰っていく。人間の感性とか、気が合うとか合わないとか、結局のところ人間の集まりである組織はそこへ戻っていく。エリートとは反逆児。自分が会社を創り上げるという意識が大切。組織を因数分解するとすべて「個」になる。「個」が何を創り上げるか、「個」の集積が組織なのだ。
できる人かどうかの必要条件は、自由に意見を言えるかどうかである。議論を戦わせることができるか否かに尽きる。
人の頭脳が資本となるホワイトカラー中心のビジネスでは、人数が多いからといって生産性が上がるとは限らない。売上をもっと増やそうと人を増やしても、最適な人数を超えてしまえば非効率な事業に人を投入せざるを得ないからだ。これにより、個々人が利益のため合理的に働いても組織全体では利益が上がらない、経済学で言うところの「合成の誤謬」が生じてしまう。
社長になって実質25年以上たちますが、その中で一番大きな仕事は外交営業をやめたことだと思っています。ただ、さすがに外交営業をやっていた社員は、何人もお客様を連れて辞めてしまいましたね。外交営業なんて、お客様は望んでいなかったからですよ。外交営業は大きなコストが掛かります。そのコストは手数料などの形で、結局お客様が負担している。当時はまだ手数料は自由化されていませんでしたが、遅かれ早かれ自由化される。そうなるとコスト競争になる。コスト競争が行われる環境では、不要なコストを放置していると負けるんです。だから最大のコストであり、不要な外交営業をやめました。ただし、ただやめるのではなく、コールセンターを整備して、そちらで外交営業の役割を担えると分かってからやめました。
「給料をもらって働く」人と、「働いて給料をもらう」人は、まったく違う。前者は会社に従属する奴隷に過ぎないが、後者は主体性を持った「個」だ。「働いて給料をもらう」という感覚を持てば、一つ一つの判断が、いわば死ぬか生きるかの分かれ道になる。もし、ここで間違えたら収入の道が断たれる。それぐらいの覚悟で行動しない限り、主体性は持てないのだ。主体性の持てない奴隷には、私は甘んじたくない。
重要なことを考えるときには、自分をだまさないことも大切です。自分に素直になるといったほうがいいかもしれません。
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