松井道夫
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私は、個人では何の力もないのに、組織をつくって、権力をかさにきて、うまい汁を吸っている人たちが許せない。いま、証券の世界で、その嫌悪感をぶつけているだけなんです。消費者を無視した、供給者側の都合で築き上げられたこの世界を、どんどん変えていきますよ。これからが、本当の競争の幕開けなのです。証券の世界はもっともっと変わりますよ。
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日本円は捨てられる。デフレの時代であれば、キャッシュは持っているだけでドンドン価値を生んできた。でもそれは日本政府の保証があるという「おカネ」。ヘタをすると、こんなにリスクのあるものはない。日本政府の信用をバックにしたものからはなるべく逃避した方がいい。日本円じゃないものに資産を逃避させるという考え方がものすごく大事。日本国がベースになっているものは、とりあえずはずせ、ということ。国債なんて論外。日本円の紙幣を持つのもなるべく必要最小限にした方がよい。日本という国は信用しない方がいい…。
キャンバスに向かっていると、経営と結構似ているなと思うことがあります。たとえば、あの空にしても、川の水にしても、100回は塗り直しています。結果的にありふれた色になっているかもしれませんが、ピンク、赤、白……と、ありとあらゆる色を塗ってみました。削ってみれば層になって出てくると思います。何十回、何百回と塗り直し、きりがないからと筆を下ろして、一応完成する。それでもあとから見て、「あの色はちょっと」とか、「あの線があと5度傾いていたら」などと思う。ぐだぐだと思うのは、それだけ思い入れがあるということです。経営もまったく同じです。何べんでも試行錯誤する。
私が松井証券に入った直後が、バブルのピークでした。数年で株価が何倍にもなる。当時、野村証券は4年で2兆円の利益、破綻した山一証券だって1兆円弱の利益を出していました。当社も規模なりの利益は出ていましたが、バブルが弾けると軒並み赤字へ転落です。誰も経営をちゃんとしていないんだから、市場環境が変わればダメになって当たり前。
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「面白くない」と思いながら物事に当たれば、なんでもつまらないものになってしまう。「面白いはずだ」と思い込んで、ちょっとでも真剣にやってみると、面白いタネが次から次へと浮かんでくる。そして、それを続ければ続けるほど、面白くなっていくのだ。
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会社を大きくすることより社員1人当たりの利益を最大化する方が、結果的にプラスだと思う。
社長にとって一番大事なのは思い込みなんです。思い込みがなかったら何も行動できないのです。
私は常々、日本をだめにしているのは「かね」人種、つまり発言の語尾に、「~かね」、「~ではないか」、「いかがなものか」といった曖昧な表現を付けたがる人たちだと主張しています。日本のリーダーには、「かね」人種が多すぎる。アメリカに追いつき追い越せという時代であれば、そうしたリーダーでもよかったのですが、目標を見失った今の日本において、いつでも逃げられるような物言いしかしないリーダーが組織の進むべき方向性を示せる筈がないのです。今、日本に必要なのは曖昧な表現をしない、「だ」人種なのだと思います。
私の場合、苦しんだもののひとつは人間関係でした。人を使っにしても、「どうして分かってくれないんだよ」というありふれたことから悩み始めるわけです。でも、そういうことを通して、かなりの時間をかけて、人を使うということがどれだけ傲慢で不遜なものであるかが分かりました。私自身は、たぶん人をうまく使うことは未来永劫できないと思っていますが、自分なりに苦しむと、そこから何か考えが出てくる。苦しんだ上で自分が納得したのならそれでいいか、と思う。
バブル崩壊の前に、経済同友会で素晴らしい経営者の方々とお話をする機会がありました。その方々が「このままだと日本経済は落ちるところまで落ちる」とおっしゃっていた。その理由が、「民間企業が官僚化していくから」だと言うんです。官僚化とは「決断しない」「無謬性がある」ということです。無謬性、つまり自分は正しいと信じている。だから責任は取らない。でもそれを民間がやったらダメだと言うんです。なんと、その後の日本はその言葉通りになってしまった。大企業の経営者といっても、社長がいて、副社長や取締役がたくさんいて、取締役会や様々な会議で多数決で物事を決めていく。誰も決断していないから、誰も責任をとらない。最近はホールディングス体制の会社も増えていて、ますます責任の所在が不明瞭になっています。昨今の日本企業の不祥事の一因も、民間の官僚化にあると思いますよ。
自ら変化の幕を開け、変化をくぐり抜けてきた人間でないと、今後来る大変化は予測できない。
インターネットというのは、単なるツールの転換ではありません。コンセプトの変革です。インターネットは電話の代わりではなく、営業マンの代わりなのです。
歳を取っていても若くても、バカなことを言うヤツはいる。長幼の序は社会的動物として、一応は認めたうえで、それが絶対ではないという、共通認識を持っていればいい。
私は、自分たちが経験した苦い思いを教訓にして、日本を変えるきっかけをつくりたい。そうじゃなかったら、自分たちが必死にやってきた努力は報われないですよ。私は官僚主義的な、供給者主体の社会構造に対して、ものすごく嫌悪感があるんです。
これからの時代、会社やグループの規模が大きいことに価値があるとは思えない。
自ら立ち上げたインターネット証券というビジネスモデルをぶち壊す。ビジネスモデルの創造者だけがビジネスモデルを破壊できる。
積極的ニートは逆に見込みのある若者たちですよ。
不景気や政治のせいにするのではなく、自らを律しながら経営に邁進し、証券業のイノベーションを実現したい。
イノベーションにより企業は爆発的に発展します。商売の本質とはイノベーションを日々の商売の中で探し求め、実行することだと思っています。私はそれをこれからもやりたい。
インターネットよくわかりません。そんなに興味もないしね。
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