松井道夫
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「人の行く裏に道あり花の山」という相場の格言がありますが、これは経営にも当てはまります。他人と同じことをやっていたら、たいした利益は上がらないんです。
顧客中心主義でビジネスをやったら必ず成功するんですよ。
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私は社員に「給料をもらって働く人」は辞めてくださいと言っています。必要なのは「働いて給料をもらう人」だけです。両者には大きな違いがあります。江戸時代、魚河岸に魚を売る商人がいましたよね。彼らはいくら朝早くから魚を売り歩いて努力したとしても、結局魚が売れなければ何もしなかったことになります。商人とは本来そういうものなのです。
学生や卒業したてで起業したいなどという人には、クソして寝てろと言いたいです。
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他人の、しかもそのマジョリティがやっていることが、その時代に必ず合っているわけではありません。時代はどんどん動いているからです。頼るべきは、自分なりの時代観です。社会変化のベクトルを自分なりに探すのです。ベクトルとは、「方向」と、「動く大きさ」なり「スピード」です。それに商売を合わせれば、とてつもない利益が上がるんじゃないか、ということです。
株式売買手数料が自由化されたとき、「株式委託手数料解体新書」と銘打った全面広告を日本経済新聞に出したんです。松井証券はなぜ手数料を下げるのか、その根拠と理由をそこで説明しました。株式売買の手数料を構成する要素は大きく分けて3つあります。「売買などの執行業務」「情報提供」、そして「コンサルティング」です。それを松井証券はコンサルティングはやらない、情報提供もウェブサイトを通じた客観的なものに限定する、でもその代わり手数料は下げると。いままでが「定食」ならば、こっちは「アラカルト」を出すぞと。
他人と同じことをやっても成功しないし、だからと言って意表を突いたことをやってもベースがしっかりしてなければ駄目。
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ビジネスというのは新しい需要を創ることです。いまある需要に対して何かをやるのは、たいしたビジネスではないんです。
これからは「個」の時代です。組織を構成する一人一人が主体性を持って行動できなければなりません。明治維新などの過去の「革命」の例を見ても、「個」が組織を利用して改革を成し遂げたのであり、今まさにそうした発想ができる人間が求められています。
手数料がいくら安くたって、しょっちゅうシステムトラブルを起こし、電話をかけてもつながらない。そんな状態が続いたら顧客だってバカじゃないから本当に大切なのは何か、気づきますよ。みんな複数の証券会社に口座を持っているんだから。各社の対応の差が明確に分かります。
性急に答えを出そうとしないのが鉄則。考え続けていると、ふとした拍子に閃きが訪れる。その瞬間を忍耐強く待つようにしています。
私には、会社を大きくしたいという欲求はまったくありません。いま、松井証券の従業員は100人ちょっとですが、何千人、何万人という会社になりたいと思ったことはないのです。興味があるのは「一人当たり」だけです。
新しい日本を作るには、会社と個人の主従を逆転させればいいんです。個が自由に組織をつくればいいんです。私は社員みんなの「好き嫌い」で組織を作っていこうと思っています。いくら理屈を並べても、最後の最後に組織のベースになるのは、感情なんです。もっともらしい基準を設けて体裁を整えるのはやめてもっと人間的なことで評価しようと考えたのです。人間は結構本質を見抜くものです。松井証券は社員数が156人の会社です。感情を前提に作り上げた会社が一つくらいあってもいいじゃないでしょうか。
プロであればあるほど、「相場はこう動きます」なんて言わない。「絶対」がないことをよく知っているからです。
会社の文化というのは、やはり経営者がつくるものです。経営者次第で会社は浮かびもすれば沈みもする。
空売り規制?馬鹿言うな。このオタンコナス!
システムはどんなにメンテナンスをこまめにやろうが100%完璧にすることはできないのですよ。だから、トラブルが起こった際の問い合わせや苦情の受け皿となるサポートセンターがセットで必要になるのです。顧客にとって、そういう目に見えないところまでやるのが本当のサービスであるはずです。でも目立たないから、大事と考えられていない。
世の中の大きな流れをつかんで、自分が信じることをやればいい。
戦後日本の社会システムのもとで、サラリーマンは会社の成長とともに自分も大きくなったような幻想を抱きました。しかし実態はというと、成長がストップしたとたん会社は個人を切り捨てはじめた。組織が主で、個人が従という会社全体のシステムのもと、組織に裏切られ、個人が責任を取らされるケースまで生じています。組織に従属した個人というのがいかにないがしろされているか。彼らの気持ち、彼らの家族の気持ちを考えると、正直言ってたまらない気持になる。
組織をどのようにして束ねていくかが会社の浮沈にかかわりますから、組織論はとても大事です。たとえば、アメリカ陸軍の特殊部隊であるグリーンベレーの最小単位は十数人です。軍隊は互いに生死を賭けるわけですから、全員が情報を共有していないと高度な作戦など遂行できません。「あいつシャイだけど、やることは大胆なんだ」とか、「冷血なようで、結構涙もろいんだよな」とかいった類の人間心理も含めての情報共有です。要するに家族のような関係じゃなくては、作戦が高度になればなるほどリスクが高まります。だから、多くて十数人が限度でしょう。そこに指揮官がいる。そう考えると、会社の組織も同じだと思います。私が直接見られるのも、せいぜい十数人です。その十数人が層になって会社という組織になっているのです。
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