武田双雲
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僕は取材を受けるとき、言いたいことを言うんじゃなくて、この雑誌はどういった人が読んでいて、どんな話をしたら喜んでもらえるだろうか、ということをすごく考えます。僕の記事を読んで感動してもらうことと、個展で僕の作品を観て感動してもらうことは、まったく同じ価値があります。
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僕は自分単独で何かを発想するタイプではなく、媒介者となってみんなが幸せになる最大公約数を見つけるのが持ち味。
最初のうちは思うように書けない書でも、十年やれば自然と体が動くのと一緒で、何も意識せずに感謝と感動ができるようになる。
自分と違う価値観の人と接するのが一番自分を成長させる。
私自身はTVでも、他の仕事と同じ気持ちで臨んでいるつもりなのですが、やはり周りには「数字が取れる男だ・・・」とそれなりの期待があります。
僕はもともとNTTに勤める営業マンだったんです。ただ僕は「目標達成しよう!」「競合に勝つぞ!」とか全然、関心がなかったんですよね。そんな具合なので、上司に「仕事は遊びじゃねえ!」と胸ぐらをつかまれたこともありましたよ。それでも、できれば人を喜ばせたいわけです。成績や競争は横に置いておいて。そこで「書道」という道を選んだんです。
以前は数字に惑わされることもありました。最近では、やっとそうした感情から抜け出して数字を楽しむことができるようになり、下がれば、なぜだろう・・上がればただニンマリとしています。
考え方、見方は、メガネを掛け替えるように自分で変化させていくことができる。
モチベーションが下がることもないわけではありませんが、高く保つのは得意な方だと思います。モチベーションが下がるとキツいじゃないですか。締め切りは待ってくれないですし。だから、下げないように日々工夫をしているんです。
初めは無理やりにでも、ありがたいとか、うわ、すげえな、と思うことを発見していかないと、なかなか身につかない。
相手をコントロールしようとすればするほど関係は悪化します。
日本人はほとんどが、江戸時代の殿様よりも贅沢だ。なぜ身の回りにあるありがたさを忘れる。
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僕は、何を見ても感動できる「感動めがね」をかけているんです。だって、そのへんにあるガードレールを見ても感動できるんですから。「すげえな、事故で命を落とさないようにって言ってる」。コンビニなんて行ったら、もっとたいへんです。自動ドアが、速すぎず遅すぎず、かつストレスのない距離のところで開く。お店に入れば、靴についた土をなにげなく落としてくれるマットがおいてある。「おい誰だこれつくった奴!」みたいな。もう、めくるめく感動。
新入社員時代はモチベーションが相当低かったですね。満員電車がとにかく苦手で、朝起きるだけでもつらくて……。それである日、「このままでは、あと40年ももたない。なんとかしなきゃ」と思ったんです。そして「このままじゃ悔しい。会社生活を絶対楽しんでやろう」と考えました。そう気持ちを切り替えて、自分なりにいろいろと工夫しはじめたら、会社生活がどんどん楽しくなっていったんです。
後押しになったのは周囲が皆が反対したから。もともと空気が読めないタイプの人間。「諦めるか……」とヘコまず「反対されるなら、むしろチャンスだ!」と。そして書道の開拓者になる気満々で、ストリートに出たり音楽家と共演したり、自分や周囲がワクワクする書を書いてきた。結果、書道家として知られ、書道以外の仕事もどんどんやってきた。
おもしろくも何ともないと思われる何気ない日常を、瞬間瞬間どれだけおもしろいと感じられるか。
他人と比較しない人は強い。他人と比較しても明るくいられる人は、もっと強い。
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よくWIN,WINということがありますが、私は当事者だけでなくお客さんも含めて関係者全員がになるように、その面では妥協せず、ぎりぎりまで追求しています。これは私のこだわりです。
物事の捉え方次第で世界はまったく違ってしまう。
「みんなに好かれたい」「誰にも嫌われたくない」というのは危険です。そこまで思ってしまうと自分の個性を打ち消すからです。
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武田双雲のすべての名言