富野由悠季
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いま自分はその職業の順位のどこにいるのか、意識してみてください。真ん中あたりにいる人は、転職した場合にはやはり真ん中の位置にくるか、それよりも間違いなく下の位置になります。一方、いまいる立場で誰もが日本一であると認める技術を持っている人なら、よっぽど不適格な職種に就かない限り、どこの業界でも成功するでしょう。
意識して自分の不得意分野の仕事もするようにしていました。「いなかっぺ大将」みたいなギャグアニメの絵コンテも手掛けたこともあります。悲惨な結果でしたけどね。「ヘタクソ!」「笑えない!」と散々に言われました。でもそれがよかった。できないからこそムキになれるんです。「じゃあ、どうすれば笑わせられるんだろう?」と一所懸命考え、そして自分の得意分野のロボットアニメで実験をするんです。
そんなつまらない?つまらなくない。
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アニメを見るな。
フィルターを通した瞬間に、自分では全視野的にいろんな情報を取り入れて作品を作ったつもりでいてもフィルターを通すんです。
アカデミー賞を受賞するほか記録的なセールスを成し遂げ、二世まで活躍する宮崎駿らスタジオジブリ制作作品にライバル意識を持っている。
僕だってフリーランスの身ですから、いまの仕事がなくなったときには、たとえば明日からでもアニメとは関係のない他の仕事ができるように心しています。常に職業には貴賤がないということを理解している自分でありたいと思っているのです。
ゲームに携わる仕事をしている人間は嫌い。
僕は作品作りの基本は、異種格闘技だと思っているんです。つまり、違うものをどれだけ自分の中に叩き込めるか。それにはありきたりかもしれないけれど、見聞を広げることが必要。いろんな場所へ出かけ、いろんなものを見るといい。全部演出の手がかりになるから。
能力の差である。
必ずしも、現在皆さん方が目にしているようなアニメや漫画の作品が豊かだと僕は思いません。
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若くして人間関係に悩んでいる人に言いたいのは、その時その人、クラス、学年という目線で好かれることしか考えていないために、結果的に意気地がない、陰気な自分を作ってしまうケースが多いので、もうちょっと広い目線で自分を作っていく意識を持つことがただ一つの改善案だと思います。
文芸でも映画でも音楽でもそうですけど、鬱屈感を表現している作品、自分の憂さを代弁してくれてる作品っていうのが評価される傾向があるじゃないですか。
オンだオフだと切り替えられるほどめでたい人に、成功なんてあり得ないんですよ。やっぱり飽きずにコツコツやることからしか、一流の作品なんて生まれやしないということだと思います。
通した瞬間にそれは全部個性が出てくるんです。
ゲームは麻薬。
日本人はコツコツと真面目に働いているんです。そのなかで抜きんでようと思ったら、両隣の奴よりもっとコツコツやるしかないじゃないですか。
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アニメや漫画を好きなだけで入ってきた人間が作るものは、どうしてもステレオタイプになる。
今ではガンダムというとシードやデスティニーですからね。非常にムカついてます。
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僕はね、そういうのは、人が病気になることを応援しているような気がしてしょうがないのよ。
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