鍵山秀三郎
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心中の覚悟こそ真の原動力。
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人々の荒んだ心、それが犯罪を多発させ、社会的コストを増大させていることは確かです。企業はリストラをして100億円、200億円の合理化を成し遂げたかもしれない。しかし、それはそれ以上、いやその何倍もの社会的コストを増大させているかもしれません。企業はそれを知るべきですね。社会的コストはなかなか計算ができません。それだけになかなか気がつかないのですが、社会全体のコストを下げるような生き方をしなければいけないと思います。そのためには何といっても、穏やかで優しい人間の心を育てることが一番大事だと私は思うんです。
同じお金を使うにしても、すぐ効果の出ることに使うだけではダメなのです。むしろ5年後、10年後に効果が出てくるようなことにこそ使うべきです。
いつも難しくて大きなことばかりを考える人は、失敗したり続かなかったりして元へ戻ってしまうことが多いものです。できそうにない特別なことばかりを追いかけるよりも、誰にでもできる平凡なことを少しずつでも積み重ねていけば、とてつもなく大きな力になることを知るべきです。
私は、あとを継ぐ経営者が楽になるように経営をすることが大事だと思っています。自分の任期では実績が悪くなっても、将来のために今こそ投資するべきだということならば、自分の評価はさておき、未来のために決断する。
金儲けしたいという志を持つことは、悪いことではありません。住友財閥の伊庭貞剛は、「われ財を愛す」と言いました。しかし、その後に「これを取るに道あり」と続けたんです。
心あるところに宝あり。
生きていくうえで、難しいことばかりが役立つとはかぎりません。むしろ、毎日の生活では、雑用と呼ばれることがそのほとんどを占めています。身辺の雑用処理能力を磨くことこそ、人生の達人への近道だと思います。
価格だけが競争ではありません。もちろん、お客様にとっては安ければ安いほどよいことです。しかし、ただ安ければよい、というだけのお客様ばかりではありません。価格よりも、より質の高いサービスを求めてこられるお客様も必ずいらっしゃいます。価格競争をする前に、サービスを見直すことが先決です。
平凡なことを非凡に努める。
私は、「平凡な人を非凡に育てましたね」と言われました。しかし、そうではありません。「平凡な人が平凡な仕事をしても成り立つ会社にした」だけなのです。だから、平凡な人が非凡な仕事をしたわけでもなく、平凡な人が非凡な人になったわけでもありません。経営者である私自身も非凡ではありません。ですから人に非凡なことは求めませんでした。自分だってそうではないのですから。平凡な人でも気を入れて、責任感を持ってふつうに仕事をしていたら、経営は成り立つものです。
どんな立場で、どんな仕事に就いている人でも、経営に携わるとなれば公の心を持っていなければいけません。ところが残念ながら、自分の会社だけ売上と利益が伸びて、業績さえ上げればいいという経営者が多いのです。しかも同じ経営者でも、サラリーマン経営者になってくると、自分の任期だけよければいいという考え方に陥る。ですから、後任の人は苦労させられ、また同じ愚をくり返していくのです。
大局の誤りは、小局の努力によってカバーすることはできない。
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自分の損得や経済第一ではなく、使命感を持って大事なことを守ろうとする人たちが健在である限り、日本は大丈夫。
余裕とは先に楽しみがあるからできてくるものです。昔は貧しくても余裕がありました。ところがいまは先に楽しみを取ってしまって、あとから義務や債務の始末をする。逆転してしまったのです。ですから私は、よいことが後に控えていることはいますぐなすべきだと考えています。普通の人は「益がなければ意味がない」という。しかし、二千五百年前の晏子は「益がなくとも意味がある」と言いました。
私は、みずからの才能がなかなか発揮できないことを、環境のせいにしたり時代のせいにしたりしている限り、その人は絶対に日の目を見ないのではないかと思います。まずは自分を取り巻いている条件をすべて受け入れる。そしてその中で自分は何ができるかを焦らずに考えることが必要です。
人は案外、人の話を聞いていないものです。自分の言う分だけを話して、人が話すことには興味がなければ上の空。それだけに、人の話を真剣に聞くと、たいへん喜ばれます。話し上手になるには、聞き上手になることです。
自分の意にならない、そんなつらいときにこそ成功する。自分の都合のいい条件でやっても成功はない。なぜなら、これをこうすればとか、こうなればとか、さらにいい条件を期待してしまう。そうなれば、すべてに甘えが出て絶対に成功しなくなるのです。
いままで、誰にでもできる平凡なことを、誰にもできないくらい徹底して続けてきました。そのおかげで、平凡のなかから生まれる大きな非凡を知ることができました。この非凡には、人を心底感動させる力が秘められています。
私どもの会社では、弁当を取れば残ったものはゴミとしてきれいに分別し、容器は洗って返す。「なんでそんなことまでするんですか」という人もおりますが、これすべて人格づくりと思っているんです。社員に人格、人柄が下劣になるようなことはしてもらいたくないし、またさせたくないからです。
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