松田公太
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店舗が増えていく過程では、私の判断ミスから3カ月で閉鎖に追い込まれた店もあった。それでもなんとか、タリーズコーヒージャパンの設立から3年2ヶ月というスピードで上場を達成できたのは、困難にぶつかった際には必ず、何が悪かったのか、どうすれば解決できるのか、徹底的に追求してきたからだ。失敗をすべて成功に向けた試験としてとらえ、何事も前向きに受け入れていくようにも務めた。
人は成長するための努力をやめてはならない。成長するのをやめたとき、つまり現状に甘んじた瞬間から、衰退がはじまってしまうからだ。どんなに物事が思い通りに進んでいようとも、その状況が永遠に続くことなどありえない。常に次を見据えて、備え、行動を起こしておく必要がある。
会社が成長するにしたがって、私の中でより鮮明になっていくことがある。それは、会社とは人こそすべてということだ。言い換えれば、一人の力がいかに小さいかという事実を思い知らされる。銀座全員が率先して徹夜で荷物運びをしてくれた。
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銀行では、仕事を通じて様々な企業の経営者と知り合うチャンスがある。しかも融資の際には、事業計画から財務内容、社長の経営理念まで会社のすべてをさらけ出してもらうことになる。そうした点でも、将来起業する際の勉強になると考えた。
私はまず必要額の半分に相当する3500万円を自分で調達しようとした。そう考えたのは、銀行員としての経験だった。そう考えたのは、銀行員としての経験からだった。企業のプロジェクトに融資する際にも、半分を企業が自前で出すとなると銀行に対する印象が良いのである。いまでこそ私は融資を受ける側にいるが、銀行員として考えれば、売り上げはゼロ、自己資金もありませんでは、いくら政府系といっても金は貸してくれないだろう。しかし、半分は自分で集めたとなれば、こいつは自分の金も注ぎ込んで真剣にやろうとしていると判断してもらえるのだ。
新しいことを始めるときには、誰だって不安が付きまとう。とくにそれが独立であったり、転職であったり、自分の人生を大きく変えてしまうものであればなおさらだ。また、自分が正しいと思った道でも、様々な難関が押し寄せてくれば弱気になるのは、人間であればあたり前だろう。しかし、人生は一度きり。やらずに後悔するより、やれるところまでやって失敗を受け入れる方が納得できるではないか。
あなたは「あの人は生まれつき恵まれている。自分は平凡だから仕方ない」などと諦めていないだろうか?確かに、スタートラインでの差はあるかもしれない。しかし、特別な境遇にある人たちよりも強く情熱を持って取り組めば、何事にも負けないはずだと私は信じている。
いくら技術的なことがマスターできても、経営理念を理解していなければ仕事は務まらない。たとえば、エスプレッソの抽出時間を間違ったとき、手間をいとわず作り直す作業ができなければならない。経営理念を教えず技術面だけを強調するのは、野球のルールも知らない人に、いきなりピッチングの仕方を指導するのと同じだと思う。
アルバイト・フェローを叱るときは真剣に叱りなさい。そのとき、なぜ叱ったのか理解してもらうために、徹底的に理由を説明してください。そして、何よりもまずアルバイトフェローを好きになること。彼らに成長してもらいたいと心から思うことが大切です。
ジョイント・コーポレーション方式には私の会社に対する考え方が込められていた。創業者として会社を後々まで支配することを考えれば、株式会社の資本金として最低限の一千万円で立上げ、私の出資比率をもっと高める方法もあった。しかし、私は協力関係にある企業と一緒に成長していくべきだと思った。また、そうした企業に出資してもらえば、彼らもタリーズの将来を本気で考えてくれるはずだ。
何をしたらいいのかわからない人は、悲しい思い出や経験から人生の目的を探してみるといい。難しく考える必要はありません。同じような屈辱を他の人が味わわなくてもいいような仕組み作りを考えればいい。それが、人生の目的になるんです。
タリーズ・ジャパンには大資本がバックについていなかった。本家のタリーズUSAからの出資は780万円だけ。銀座に店を開くために要した7000万円は私が親戚や金融機関から借りて集めた。成功するも失敗するも、すべては私次第だった。タリーズUSAとの契約内容は、コーヒー豆を買い、ドリンク類に限っては同じメニューを提供するということくらい。当時は店の設計、運営マニュアルなどもないに等しい状態で、私自身も経営者としての経験はおろか、アルバイトを含め、コーヒーショップで働いたことすらなかった。
食を通じて文化の架け橋になる。
日本では転職にリスクがあるように言われますが、僕はそうは思いません。リスクがあるように思うのは、目的を持っていないからでしょう。人生の目的を持っている人は、転職を単なる手段としてとらえることができるんです。
能力がある人と情熱がある人、どちらを採用するかと問われれば、私は迷わず「情熱がある人」と答える。他の業界はどうか知らないが、タリーズのような飲食業では、情熱さえ持ち合わせていれば、人は必ず成長できると信じている。
株式公開の具体的なメリットとしては、知名度、信用力、資金、人材、という四つがあった。とりわけ知名度と信用力の問題では、上場する前のタリーズには苦労が多かった。事実、上場の効果は大きかった。タリーズのフランチャイズを希望する問い合わせにしても、以前はせいぜい一日に1、2件だったのが、上場後には10件から15件に急増した。
物件選びに関して、私は素人同然だった。しかし、結果的にはそれが良かったのかもしれない。神谷町の物件も、先入観を持たずに見ることができたのだ。
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よく、目的と目標を一緒にしてしまっている人がいますが、この2つは大きく違う。目標は、目的を達成するための道標のこと。転職や起業は、あくまで目的を達成するための手段なんですよ。そう考えれば、どんな会社に就職すればいいか、おのずと決まってくるはずです。
食文化を通じて世界中の国々がお互いを理解し、尊重し、そしてひとつになってほしい。
飲食業は情熱が一番。
松田公太のすべての名言