中村獅童
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一つひとつの瞬間が、一生に一度。
コミュニケーションにおいて大切だと思うことが2つあります。「挨拶」と「礼儀」です。極論すれば、この2つを守れば、人から嫌われることはありません。
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僕自身、仕事もファッションも音楽も、「素敵だなぁ」と思った人をお手本にすることから始めました。今も、先達たちの白黒の映像を見ながら、その仕草や間の取り方を参考にさせていただいています。皆さんも「この先輩のようになりたい」と思ったら、メールの文章や交渉の進め方など、先輩の仕事の作法をきめ細かに観察し、そのやり方を自分に写し取ることから始めてはいかがでしょう。
「毛抜」や「鳴神」のように「ザ・歌舞伎」といえる歌舞伎十八番ものがあり、「供奴」「連獅子」という舞踊があり、「瞼の母」「権三と助十」という「書き物」の世話物があり。歌舞伎のさまざまなジャンルの演目を楽しんでいただけるんじゃないかな、と。
実際に僕が忠太郎をさせていただく時には、小日向のご自宅でお稽古していただいたんです。
みんなと同じなのに「いや、あの子は、歌舞伎の子なんだよ」って言われるのがものすごく嫌だった…。
海外に行った人は日本人としての自分を、客観的に見て、もっともっと日本人としての「感性を磨かなきゃ」って、思うだろうし今まで以上に「日本人」という自分を大切にするようになるのだろうけど、日本に住んでいるとなかなか見えてこないですもんね。
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絶好の機会はいつも転がっているわけじゃない。だから、狙ったものを100%つかまえるために研鑽を重ねる。これが大事。
僕の場合は、歌舞伎の舞台自体も神棚のようだと感じています。舞台に立ち、無事にお役をつとめさせていただくということは、歌舞伎の神様に見守られているということです。歌舞伎は歴史が長く、「名優と言われた先達たちが大切に演じてこられたお役を受け継いでいる」という意識を強く持っています。
小学生の頃、歌舞伎の舞台に出ていることには、学校では一切触れてほしくなかったんです。
人間だから不安な気持ちもあるけど、弱い自分を乗り越えるには、思い込みとか強い気持ちって大切ですよね。撮影後の取材で「僕はこれから大きくなるから、見ていてよ」と言っていたと、ある記者の方からいまだに言われます。自分でも覚えていますよ、それほどの思い込みだった。
「権三と助十」は今回の演目の中でも、実は一番難しいかもしれないですね。でも、みんなで力を合わせて、活気あるいい舞台にしたいと思っています。
台詞がたくさんある役は初めてだったので、歌舞伎の中でもリアリティのある「書き物」ならではの芝居を稽古していただきました。
海外に行って、じゃあ「キミたちの国の歌舞伎ってどういうの?」って聞かれても、説明できない人がほとんどだもの。
「挨拶」は、すべての人間関係における基本。親しい人ほど「なくてもいい」と思われる風潮があるけど、それは違う。どんなに仲がいい友達だって、挨拶を交わさなくなったら、関係は崩れていきます。コミュニケーション下手ならなおさら、自分から積極的に「挨拶」する。これだけでも周りが変わってきます。
世の中どうなっちゃうんだろう?と思うことのひとつに、「今しか考えない人が多い」ことがあります。すぐに結果を求めたがる。でも、長期的な視野で「こうしていきたい」と、思い続けて、諦めないことが大事じゃないかな。
ある人が凹んでいる時に、「分かるよ、その気持ち」なんて同情を示す人がいるけど、僕は絶対にそういうことは言わないと決めています。なぜならそれは、「俺は既にその気持ちを知ってるよ」と、言っていることと同じだから。人それぞれに事情があり、考え方だって違うわけだから、「分かる」だなんて軽々しく同情するのは失礼だと思うのです。人が凹んでいたり、悩んでいたりする時には、静かに話を聞く。相談を持ちかけられた時には、「自分だったら……」という話にとどめます。
チャンスって、みんなに平等に巡ってくるものだと思う。チャンスが巡ってきた時に、いかにパッとつかむかが大切。才能がなかったり勘が悪かったりすると、チャンスを逃しちゃうんですよ。「おまえこれチャンスだよ」っていう大事な時、才能のある奴はパッとつかんで自分のものにする。でもボーッとしてると、チャンスを逃がしてしまうよね。そのための準備と言えるかどうか分からないけど、僕はアンテナは常に張り巡らせてました。
「ピンポン」のドラゴン役のオーディションには「このチャンスを逃したらもう次はない」という意気込みで、役柄と同じように実際にスキンヘッドにして、眉毛も剃って出かけました。受かった時はうれしかったけど、同時に「窪塚洋介君はじめ、共演者たちには絶対に負けたくない。絶対何かをつかみとってやるんだ」って思い込みながら、撮影に臨みました。
「瞼の母」にしても、長谷川伸先生ならではの「謳って」言わなきゃいけない台詞があるんです。そこをスラスラ~っと流して言ってしまったら、長谷川伸先生特有の言い回しの味わいがなくなってしまいます。
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