中村獅童
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小学生の時に「小川くんが演っている歌舞伎ってどういうの?」ってクラス中の人にわぁーっと聞かれて、ものすごくそれが、恥ずかしい…っていうか、聞かれることが嫌で、下を向いちゃった時に、クラスにいたある男の子に「歌舞伎はね、おじいちゃんとかおばあちゃんが観るんだよ」って言われて、複雑な気持ちになりました。
僕のやっている「役者」という仕事だって、一生かけて見えないゴールを追いかける仕事です。自由な世界に見えるかもしれないけれど、見えないところに向かっていくのは不安だし、苦しい。それこそ長期的なビジョンを胸に、頑張っているつもりです。
萬屋一門として8歳から、舞台に立たせてもらっていましたが、代々伝わる名門中の名門というわけではないのと、初代獅童を名乗った父が、歌舞伎役者を早々に廃業し、「後ろ盾がいない」ということで、大きな役がつくことはありませんでした。先輩に「君に主役はまわってくることはないよ」と言われ、「残酷なことを言うよなあ」と思いつつ「じゃあ、しょうがないな」と諦めてしまったら、しょせんそこまでの人生でしょう。それは嫌だった。だったら、この境遇を受け入れた上で、自分なりに歌舞伎役者としての、生き方を切り開いていこうと覚悟したわけです。若ければ、境遇が恵まれないことに、理不尽さや怒りを感じて「くそー!」なんて叫んでもいいと思うのですが、30歳、40歳になっても同じことを言っていたら、負け惜しみになるでしょう。
やはり母親を想うという気持ちが一番大事だ、と。
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試行錯誤は、人からの評価を上げるためではなく、自分のためにするもの。「勝負」の時に自分の力を解き放つための準備。
今や、日本人より外国人の方が日本について詳しいですからね。
とにかく充実した時間を過ごしたいですね。
僕は本来集団行動が得意ではありません。一人っ子で育ち、マイペースな性格だったこともあり、「人と合わせる」ことが苦手。体育やスポーツも嫌いだったので、「チームで何かを成し遂げる」という経験をしないまま成長しました。しかし、役者となって、しかも座頭というリーダー役までさせていただくようになると、「チームプレーは苦手」などとは言っていられない。
日本人は、海外に対しての憧れというのはみんな強いみたいで、海外のものをすごく上手に取り入れるけど、日本にいると一番大切なことが、なかなか見えてこない。
「40歳は人生の折り返し地点」だとよく言われますが、正直、この言葉は嫌いです。40代、50代には、それぞれの突っ走り方があるはずだと思うからです。
「挨拶」は、すべての人間関係における基本。親しい人ほど「なくてもいい」と思われる風潮があるけど、それは違う。どんなに仲がいい友達だって、挨拶を交わさなくなったら、関係は崩れていきます。コミュニケーション下手ならなおさら、自分から積極的に「挨拶」する。これだけでも周りが変わってきます。
何かこう、特別扱いされることにすごく抵抗を感じていて、学校では学校の自分、歌舞伎では歌舞伎の自分でいたかったんです。
世の中どうなっちゃうんだろう?と思うことのひとつに、「今しか考えない人が多い」ことがあります。すぐに結果を求めたがる。でも、長期的な視野で「こうしていきたい」と、思い続けて、諦めないことが大事じゃないかな。
気持ちは20代も30代も40代も変わらないですけど、自分がこれまで経験してきたものを土台に、歌舞伎においても40代のうちに新たなチャレンジをしてみたいと思っています。それが新作という形になるかはわからないですけれど。
勘三郎のお兄さんは「忠太郎みたいな役は獅童に合うよ」とおっしゃってくださいましたし、錦之介の叔父への思い入れもあって、今回、ぜひさせていただきたいなと思いまして。
人間に対して積極的に関わることで、未来は開けてくる。
人間は、どうしても自分のことが一番かわいいものです。「あいつにこんなことを言われたから腹が立つ」「気分が悪い」など自分のことばかり話す人がいますが、僕はそんな人こそ「相手のことを考える」という意識への切り替えが必要かと思います。「どうすれば相手はもっと喜ぶだろう」とイメージするだけで、見えてくる景色は全く変わってきます。
海外に行った人は日本人としての自分を、客観的に見て、もっともっと日本人としての「感性を磨かなきゃ」って、思うだろうし今まで以上に「日本人」という自分を大切にするようになるのだろうけど、日本に住んでいるとなかなか見えてこないですもんね。
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「毛抜」や「鳴神」のように「ザ・歌舞伎」といえる歌舞伎十八番ものがあり、「供奴」「連獅子」という舞踊があり、「瞼の母」「権三と助十」という「書き物」の世話物があり。歌舞伎のさまざまなジャンルの演目を楽しんでいただけるんじゃないかな、と。
実際に僕が忠太郎をさせていただく時には、小日向のご自宅でお稽古していただいたんです。
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