養老孟司
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記憶は感情に結びついている。強い感情に結びついた記憶は10年たっても残るんです。その傾向は女性のほうが強い。男のほうが抽象的で適当に生きている。男と女では、持っている情報量が何ケタも違う。
1
相手が悪だということは、自分が正しいことを保障するわけではない。
保育園の必要性を説くのはいい。増やすのもいい。でも私はその議論が先行していることに、じつは危機感を持っています。
4
個性だ何だ、世の中が言うから悪い。そんなもんないと思えば、何ごとも「奥様のおっしゃる通りでございます」とできるんです。第一、間違ったことを言ってこっちが変なことになったら、向こうも困るんだからね。でも大体間違ってないですよ。「あいつの言うことを聞いてひどい目に遭った」というのはない。
ささいなことで「それは自分らしくない」「それをやると自分ではない」というようなことを言う人は逆に、自分についての確信がないのです。どうもオンリーワンを主張している人は実はこういう側の人のような気がするのです。
2
今が幸せかどうかなどと考えることは、まったく無意味なことです。そんなことは後になってから自然に分かってくる。
7
若い人への教育現場において、おまえの個性を伸ばせなんて馬鹿なことは言わない方がいい。それよりも親の気持ちが分かるか、友だちの気持ちが分かるか、ホームレスの気持ちが分かるかというふうに話を持っていくほうが、余程まともな教育じゃないか。
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漫画とかアニメーションばかり見ていると、基礎になるものがなくなる。基礎がトトロでは困る。
11
気遣われてると相手がわかるようにすることは大事。僕は遠巻きから女房の面倒を見ているわけです。そのことに相手が気がついたら効きます。「ほかのこともそうしてくれてるのかな」と想像力が働くから。一つでも気づいてくれたら大もうけ。
大事なことは、これが自分の生き方だ、自分の仕事だと決めることです。
6
人間にとって100%のことことは、死ぬこと以外にには一つもないのです。何もどうせ「死ぬんだから」と投げやりになるということではありません。恐る恐る生きる必要もない。ただ、常に覚悟を心にもって生きるということです。不確定な未来に軸足を置くのではなく、今という時間に軸足を置くこと。今日という日、目の前の小さな命に心を寄せることです。
そもそも教育というのは本来、自分自身が生きていることに夢を持っている教師じゃないとできないはずです。「おまえたち、俺を見習え」と言えるほど立派に生きている教師がどれだけいるのか。
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先が見えないときは、まず一歩を踏み出してみなさい。
何か一つにすべてを懸けるより、タコの足のように生きるのがいい。
0
「客観的事実」などを盲目的に信じてはいけない。それが常識を知っているということなのです。
人間を構成している成分は約1年で90%入れ替わる。人間は川のように流れ移り変わる。本当の自分など存在しない。
互いの顔が見える共同体は、それ自体が保険になる。
これだと自分が思えることなら、何歳になって見つかってもいい。それこそ何度、転職してもね。
「風が吹けば桶屋がもうかる」ではないですが、「ああすればこうなる」式の蔓延が少子化につながっているのです。
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本当に好きなら苦労はいとわない。苦労が苦労ではないからである。苦労したくないなら、結局それほど「好きではない」のである。
養老孟司のすべての名言