植村直己
1
全力投球で自分のやりたい事をやることは楽しいことである。
2
苦労が大きければ大きいほど、後でそれに比例した大きな喜びが返ってくるものなのだ。
きょうある命も、明日あるとは限らない。
いつも前進があるだけだった。失敗したら逃げ道がないと思った。旅の中止は私が自分なりに積み上げてきた実績を、一挙にフイにすることだ。そうしたら自分はもう何をしたらよいかわからなくなる。最初の屈辱の中に戻るだけだ。
この厳しい壁も、きっとオレは生きぬけられるぞ、と自分にいいきかせた。
しかし、単独登山では厳しいといわれたアコンカグアにしても、全精力を集中すると、十五時間で登攀できた。
ヨーロッパ山行まで、何年かかるかしれないが、とにかく日本を出ることだ。
高い山に登ったからすごいとか、偉いとかいう考え方にはなれない。山登りを優劣でみてはいけないと思う。
何が何でもマッキンリー登るぞ。
必ず壁はあるんです。それを乗り越えたとき、パッとまた新しい世界がある。
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人間の社会の五里霧中をさまようより、この大自然のガスの中の方が、私にとってはずっと身に合っているのだ。いやいや、この濃厚なガスの中でなら、私にも生き延びる道はあるのだ。気が狂いそうな単調さに耐え抜き、弱音を吐きたがる自分に打ち勝つ以外にない。進むこと、ひたすら前へ進むこと。
私は、その日はどうするか決心もつかずにホテルに帰った。こうして、目のあたりにアマゾンの恐ろしさを知らされると、逆に私の決心はいよいよ固まっていくのであった。
アフリカのケニヤ山にしても、猛獣におびやかされながらも踏みこんでみると、難なく切りぬけることができた。
怖いがゆえ、死にたくないがゆえに、自分の技術以上のことをやらないよう、自分に言い聞かせている。
この状態では、明日はどうなるかわからない身だ。
男は、一度は体をはって冒険をやるべきだ。
私は先へ進まなければならない。憂鬱でも気が重くても、それが私の運命のようなものなのだから、勇気をふるい起こして、先へ進まなければならない。
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それでもみんな元気で、悲愴感というものはみられなかった。
アマゾン下りも河口まで何千キロあるのかわからないが、きっと成功するだろうという自信を持てた。
出発するとすぐ、帰ることばかり考えるんですよね。毎日先に進みながら、いかにして先に進むかじゃなくて、いかにして引き返すかっていうことばかり考えてるんです。それがある一定のところまで進むと、もう引き返しのきかない状況までくるわけです。そこで初めて、先に進むことだけしか考えなくなるんです。
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