植村直己
1
物資に恵まれている中では、人間本来のものは失われている。
4
私も人相応に年齢を重ねてきたし、できればもっと重ねていきたいと思うが、近頃感じるのは、経験の一つ一つが、随分時間の経った今頃になってひょいと帰ってきて、私を勇気づけてくれることだ。
南極の氷点下五十度以下の気温は、私はまだ一度も体験したことがない。
0
もちろん単独の登山は、無謀にひとしいほど危険がつきまとっている。
2
南極がもつ特有の地理的条件、気象条件については、私は何も知らない。
私はきょうまで、ひとつひとつ強い決意のもとに全精神力を集中してやりぬいてきたのだ。必ずやりぬける自信がある。ただ、思うだけではない。南極横断に出発する前、体力をつけ、精神力のトレーニングにより、精神を強靭にすれば、道は必ず開けると私は思う。
単独登山といっても、別にかわったものを用意したわけでもない。
そんな教訓も得て、この登山は、モン・ブラン、マッターホルンの単独登山よりも印象深い山行となった。
人の目につくような登山より、このエーデルワイスのように誰にも気づかれず、自然の冒険を自分のものとして登山をする。これこそ単独で登っている自分があこがれていたものではないかと思った。
ひとつのものが終わると、またつぎの新しいものがはじまる。私の気持はいつも新鮮だ。
8
人の生きる本当の価値は、お金や肩書きなどではなく、夢を追い求め一瞬一瞬を精一杯生きることにあります。
3
グループ登山と同じ装備だし、単独のために、持ち運ぶ荷物の重量がグループ登山より制限される。
あきらめないこと。どんな事態に直面してもあきらめないこと。結局、私のしたことは、それだけのことだったのかもしれない。
始まるのを待ってはいけない。自分で何かやるからこそ何かが起こるのだ。
喜びも、そして危険も。
誤解されてもしかたがないけれど、山は自分のために登るものだと思う。
そのうえ、単独登山はグループ登山以上に危険である。
私は意志が弱い。その弱さを克服するには、自分を引き下がれない状況に追い込むことだ。
努力している人を笑うこと。それは、何よりも最低な行為である。
五体満足なら次に行けるからいいや。
植村直己のすべての名言