田中良和
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集客で僕が参考にしているのはディズニーランドです。あそこは昔から変わらないようでいて、じつは一部のアトラクションの入れ替えが定期的に行われています。そのバランスが絶妙なので、いつ訪れても安心感と新しい発見の両方を味わうことができます。だから何度も行きたくなるし、飽きないのです。
社会を変革するようなすごいアイデアは頑張り続けることでしか実現できません。
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私たちのビジネスも、初めから成功するかどうか分からないものが大半です。しかし、他社と同じことをしていてはイノベーションは起こりません。
確かに人と違うことをするのは勇気が必要です。でも、自分なりのチャレンジングな気持ちをもつこと、いわゆる「アントレプレナーシップ」の精神は忘れたくないですね。諦めずに突破口を探すことが大事だと思います。
携帯電話のSNSといえば、これまでは10代、20代の若い世代のユーザーが中心でしたが、GREEでは全体の約4割を30代以上の人が占めています。自分の身近な人たちの興味関心から一度離れること。ユーザーの拡大にはこのことが重要だと考えています。
イノベーションには「連続的なもの」と「非連続的なもの」があります。連続的なものであればユーザーの声を直接的に反映させることで生み出されたのかもしれません。しかし、まったく新しい非連続的なものを生み出すためには、ユーザーの声を咀嚼し、未来に起こることを想像することが必要です。
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自分はリーダータイプだと決めつけて、部下のときに中途半端なフォロワーシップしか発揮できない人は経営者に向いていません。自分に求められていることがよくわかっていないから、リーダーシップもおかしな方向に発揮して失敗するんじゃないでしょうか。
間違えてはいけないのは、いいものを提供していれば人は勝手に集まってくるのではない、ということです。たとえば、いくら僕が個人で画期的な素晴らしいサービスをつくって提供したとしても、カスタマーサービスにまで手が回らなくて、いつ電話しても話し中でつながらなかったら、カスタマーサービスの充実しているサービスの方にお客さんは行ってしまいます。要するに、いかにお客さんを満足させるかだと思います。
世の中が変化している以上、必要とされる存在であるためには、変わることを恐れてはいけない。そう強く思っています。
漫画家が読者の意見を端から聞いて、その通りに描いても読者は喜ばないし、支持もされないでしょう。読者は何が面白いのか、じつは自分でもよくわかっていません。それを想像して描けるのが、優秀な漫画家なのです。けれども、それは読者と目線が同じというのとは少し違います。売れっ子の漫画家って、朝から晩まで机に噛り付くような生活ですけど、そんな読者はいないじゃないですか。つまり、自分の感覚とは違うものが想像できてつくれなくてはならない。僕が自分のところに求めているのは、まさにこういう能力です。
他の人と同じことをやっていれば安心できるし、将来自分たちがどうなるかもある程度わかりますが、それでは同じことしか起きません。ユニークなことや誰もやっていないことを始めるときは、やっぱり常に不安で孤独なものも確かです。でも、それは当たり前です。自分のしていることが正解かどうかは、ひとまず置いて、不安であることが当然だと考えながら今後も新しいサービスを考えていくつもりです。
パソコンが登場した当時は、こんなもの誰も使わないといわれていたし、テレビも映画会社が全盛期の時代は誰も見ないと言われていました。インターネットだって同じです。19990年代の後半以降、PCの性能や通信技術がよくなって、いまでは誰も予想しなかったくらい当たり前に使われています。その歴史を考えたら、いままさに性能が格段に上がっているモバイルにも同じことが起こるのは自然でしょう。ダウンサイジングというコンピュータの歴史の流れの中に、モバイルへの移行は違和感なく位置づけられると考えています。
採用面接において僕が重視しているのは、その人の考え方です。履歴書を見れば、その人の人生において決断した事柄が何かあります。大切なのは、その決断を下した理由です。もちろん理由に正解はないし、いろいろな考え方があっていい。ただ根本のところで共感できないと、同じ会社で同じ目標をもって働くことは難しい。逆に何か共感できるところがあれば、考え方に多少の違いがあってもいいんです。むしろそれがお互いの刺激になって、仕事を良い方向に導いていけるかもしれませんから。
自分たちができる以上のことをやろうとすれば、当然、ゆがみが生じてしまう。
社員を採用するとき、この人と一緒に働きたいかどうかが大事です。とくに会社が厳しいときや上手くいっていないときでもそう思えるかは、能力やスキルといったスペック的な基準よりも明らかに重要な採用基準です。それは、自分たちと同じ価値観を持っている人と言い換えてもいいかもしれません。
未来というものは、過去と現在の連続にあるものです。だからこそ、過去から現在の流れを見ることで、その先が見えるときもあります。私は、「PCからモバイルへ」という大きな時代の流れが、メディアやインターネットの歴史の中にどう位置付けられているかを常に考えてきました。
いまはデータをリアルタイムで分析できる時代です。頑張っている人とそうでない人の違いは、秒単位で表れます。リアルタイムで数字が問われる世界は厳しくもあるけれど、ダメならダメでそれが早くわかるから、自分でも納得して頑張れます。それまで上司の感覚で「あいつはダメ」「頑張りが足りない」といわれるだけだった時代より、ずっといいんじゃないですか。
不特定多数のユーザーをイメージする際、ありとあらゆるタイプの人が無差別にやってくる場所を思い浮かべます。たとえば市役所や病院の待合室。18歳の女性がいる一方で、30代中盤のサラリーマンがいる。小さな子供たちがいれば、お年寄りがいる。「みんな」に使われるサービスを発想するためには、「みんな」という漠然としたイメージではなく、そうした一人一人の具体的な生活を想像することが大切です。
当社はインターネットで世の中を変えていこうという非常に次元の高いゴールを目指しています。そのためには、かなり頑張らなければならなくなるのは必然です。世の中はそう簡単には変わりませんから。それなのに、「なんでこんなに頑張らなければいけないのですか」「世の中は変わらなくても別にいいと思います」と言われると、困ってしまいます。そういう意見を持つのも悪くないと思いますが、やはり一緒に働くのは無理です。
インターネットのサービスを考えるうえで重要な才能は、自分の使わないものをつくれるということです。新しいサービスを作り上げていく過程で、決して自らの感覚を「ユーザーの中心」と考えないように心がけています。たとえ自分は使わなくても、その商品がどう使われるのか理解し、その利用者に向けてものをつくるのです。
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