田中良和
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僕たちの考え方に賛同して入社した人には、「それは、本当にやりたいの?」「それは世の中を変えるのに何か意味があるの?」とことあるごとに厳しく突っ込みます。精神主義といわれればその通りです。そうしないと個人も伸びないし、会社も目的を達成できません。
グリーは世の中の多くの人が誤解しているかもしれませんが、ずっとうまくやってきた会社ではないのです。私から見ればこの10年の歴史でそれなりにうまくいっていた時代はほんの2~3年です。それ以外の時期は、ほかの会社と比べてプロダクトが劣っていると言われたり、会社に未来がないと言われたりすることの方が多かった。
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インターネットはゲーム化してきています。つまり、誰にでも楽しめて、分かりやすいものが支持されている。
この業界は新しい産業ですから、これまでは既存のやり方を単に当てはめていくだけでは会社は成長しないと考えていました。新しい時代に合った仕組みを作り、風土を作ることにこだわってきました。
当社が目指すのはインターネットを通じて世の中を変えることです。といっても、それをいまやっているSNSやモバイルゲームで実現することにはこだわっていません。10年後、20年後にどんな商品でそれを達成するか、それはこれから見つければいいと思っています。ソニーだって創業5年目のとき、将来ゲームや映画をやると想像もしていなかったはずですから、これだというものがまだ見えていないのは、むしろ当然でしょう。
インターネットのサービスを考えるうえで重要な才能は、自分の使わないものをつくれるということです。新しいサービスを作り上げていく過程で、決して自らの感覚を「ユーザーの中心」と考えないように心がけています。たとえ自分は使わなくても、その商品がどう使われるのか理解し、その利用者に向けてものをつくるのです。
仕事に直接関係しない、情緒的な本を読むことで、合理一辺倒になりがちな経営の場にいても、人としての心のバランスを保つことができます。それと同時に、人生の根源を問う本からは、経営やビジネスマンに求められる情熱や熱量も学べるような気がします。
あまりライバルを意識していません。それより私たちのサービスをユーザーのためにより良いものにしていくことに尽きると思う。
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不特定多数のユーザーをイメージする際、ありとあらゆるタイプの人が無差別にやってくる場所を思い浮かべます。たとえば市役所や病院の待合室。18歳の女性がいる一方で、30代中盤のサラリーマンがいる。小さな子供たちがいれば、お年寄りがいる。「みんな」に使われるサービスを発想するためには、「みんな」という漠然としたイメージではなく、そうした一人一人の具体的な生活を想像することが大切です。
次々に高いステージに上がっていくには、これまでの成功体験を捨てることが一番の課題です。成功体験を捨てろというのはよくいわれることですが、それがどういうことなのか、そのあと何が起こるのかはやってみないとわかりません。
1年ほど前に、ある地方で講演を行う機会がありました。グリーも創業当初は、周囲から「うまくいかないよ」と言われ、しばらくはサービスを維持するのがやっとという時期がありました。そうした会社の歴史などをお話しすると、皆さんから、「簡単にうまくいって成長したと思っていましたが、山あり谷ありだったんですね」と言われました。どうしても、うまくいっている部分だけが世の中に広まっていきますからね。
平日の夜中や土日に作業していたので、休みはゼロでした。それにサーバーの費用も何百万円とかかっていました。同じ時期にほかのSNSも始まりましたけれど、会員数が増えてくると、個人がボランティアでやっているものと会社が組織的にやっているサービスでは、サポートにも差が出てしまいます。GREEを続けていくためには、会社をつくるしかないと思いました。
ユーザー数が伸びるのは良いサービスを作っているからです。そして、売り上げが伸びるのは、そこに価値があるからです。
他の人と同じことをやっていれば安心できるし、将来自分たちがどうなるかもある程度わかりますが、それでは同じことしか起きません。ユニークなことや誰もやっていないことを始めるときは、やっぱり常に不安で孤独なものも確かです。でも、それは当たり前です。自分のしていることが正解かどうかは、ひとまず置いて、不安であることが当然だと考えながら今後も新しいサービスを考えていくつもりです。
1990年代を中高生として過ごした私は、世の中に対して大きな違和感を抱えていました。というのも、バブルが崩壊した当時の日本は、努力しても意味がない、どうせ何も変わらないから、頑張るだけバカらしい、そんな雰囲気に包まれていたように思えたからです。そうしたなか、出会ったのがシリコンバレーやインターネットでした。そこで働いていたのは、経験も実績もない若者ばかり。まだウェブやメールが普及するなんて夢のような話だった頃ですが、彼らの目は輝きにあふれていました。情報発信やコミュニケーションのあり方を変えるんだ――。そんな情熱を語りながら仕事に没頭する姿に衝撃を受けたことが、当社のミッションの原点となっています。
楽天でブログサービスを3年ぐらい担当していて、そろそろ新しいことを始めたいと思っていたときに、アメリカでSNSが流行っていることを知ったんです。でも、SNSをやりたいと会社に提案したところで、説得できるだけの材料がありませんでした。じゃあ、趣味でやってみようと始めました。
競合の参入をいかに防ぐかが、戦略を考える上では重要。
どんなに優秀でも、自分たちと価値観を異にする人とは一緒に働けません。それは会社をやってきて僕が得た結論です。
他社を意識しても、自分の会社にイノベーションを起こすことにはつながりません。僕らが商品開発をするとき考えるのは、ユーザーが何を求めているかや、世界がどのように変わるかといったことで、他社の動向やビジネスモデルは関係ないのです。
米ヤフーやグーグルの創業者は、25歳前後で起業しています。そう考えると、このままではいけないと強く感じていました。
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