田中良和
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僕たちの考え方に賛同して入社した人には、「それは、本当にやりたいの?」「それは世の中を変えるのに何か意味があるの?」とことあるごとに厳しく突っ込みます。精神主義といわれればその通りです。そうしないと個人も伸びないし、会社も目的を達成できません。
グリーは世の中の多くの人が誤解しているかもしれませんが、ずっとうまくやってきた会社ではないのです。私から見ればこの10年の歴史でそれなりにうまくいっていた時代はほんの2~3年です。それ以外の時期は、ほかの会社と比べてプロダクトが劣っていると言われたり、会社に未来がないと言われたりすることの方が多かった。
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最近、読書の目的を大きく3つに分けて考えるようになりました。
逆境は確かにつらい。ただ、グリーという会社は逆境の中で、常に耐え、常に新しいものを生み出してきました。それが私たちの歴史です。
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この業界は新しい産業ですから、これまでは既存のやり方を単に当てはめていくだけでは会社は成長しないと考えていました。新しい時代に合った仕組みを作り、風土を作ることにこだわってきました。
当社はインターネットで世の中を変えていこうという非常に次元の高いゴールを目指しています。そのためには、かなり頑張らなければならなくなるのは必然です。世の中はそう簡単には変わりませんから。それなのに、「なんでこんなに頑張らなければいけないのですか」「世の中は変わらなくても別にいいと思います」と言われると、困ってしまいます。そういう意見を持つのも悪くないと思いますが、やはり一緒に働くのは無理です。
インターネットのサービスを考えるうえで重要な才能は、自分の使わないものをつくれるということです。新しいサービスを作り上げていく過程で、決して自らの感覚を「ユーザーの中心」と考えないように心がけています。たとえ自分は使わなくても、その商品がどう使われるのか理解し、その利用者に向けてものをつくるのです。
あまりライバルを意識していません。それより私たちのサービスをユーザーのためにより良いものにしていくことに尽きると思う。
不特定多数のユーザーをイメージする際、ありとあらゆるタイプの人が無差別にやってくる場所を思い浮かべます。たとえば市役所や病院の待合室。18歳の女性がいる一方で、30代中盤のサラリーマンがいる。小さな子供たちがいれば、お年寄りがいる。「みんな」に使われるサービスを発想するためには、「みんな」という漠然としたイメージではなく、そうした一人一人の具体的な生活を想像することが大切です。
1年ほど前に、ある地方で講演を行う機会がありました。グリーも創業当初は、周囲から「うまくいかないよ」と言われ、しばらくはサービスを維持するのがやっとという時期がありました。そうした会社の歴史などをお話しすると、皆さんから、「簡単にうまくいって成長したと思っていましたが、山あり谷ありだったんですね」と言われました。どうしても、うまくいっている部分だけが世の中に広まっていきますからね。
自分たちができる以上のことをやろうとすれば、当然、ゆがみが生じてしまう。
社員を採用するとき、この人と一緒に働きたいかどうかが大事です。とくに会社が厳しいときや上手くいっていないときでもそう思えるかは、能力やスキルといったスペック的な基準よりも明らかに重要な採用基準です。それは、自分たちと同じ価値観を持っている人と言い換えてもいいかもしれません。
ユーザー数が伸びるのは良いサービスを作っているからです。そして、売り上げが伸びるのは、そこに価値があるからです。
漫画家が読者の意見を端から聞いて、その通りに描いても読者は喜ばないし、支持もされないでしょう。読者は何が面白いのか、じつは自分でもよくわかっていません。それを想像して描けるのが、優秀な漫画家なのです。けれども、それは読者と目線が同じというのとは少し違います。売れっ子の漫画家って、朝から晩まで机に噛り付くような生活ですけど、そんな読者はいないじゃないですか。つまり、自分の感覚とは違うものが想像できてつくれなくてはならない。僕が自分のところに求めているのは、まさにこういう能力です。
他の人と同じことをやっていれば安心できるし、将来自分たちがどうなるかもある程度わかりますが、それでは同じことしか起きません。ユニークなことや誰もやっていないことを始めるときは、やっぱり常に不安で孤独なものも確かです。でも、それは当たり前です。自分のしていることが正解かどうかは、ひとまず置いて、不安であることが当然だと考えながら今後も新しいサービスを考えていくつもりです。
1990年代を中高生として過ごした私は、世の中に対して大きな違和感を抱えていました。というのも、バブルが崩壊した当時の日本は、努力しても意味がない、どうせ何も変わらないから、頑張るだけバカらしい、そんな雰囲気に包まれていたように思えたからです。そうしたなか、出会ったのがシリコンバレーやインターネットでした。そこで働いていたのは、経験も実績もない若者ばかり。まだウェブやメールが普及するなんて夢のような話だった頃ですが、彼らの目は輝きにあふれていました。情報発信やコミュニケーションのあり方を変えるんだ――。そんな情熱を語りながら仕事に没頭する姿に衝撃を受けたことが、当社のミッションの原点となっています。
競合の参入をいかに防ぐかが、戦略を考える上では重要。
世の中が変化している以上、必要とされる存在であるためには、変わることを恐れてはいけない。そう強く思っています。
間違えてはいけないのは、いいものを提供していれば人は勝手に集まってくるのではない、ということです。たとえば、いくら僕が個人で画期的な素晴らしいサービスをつくって提供したとしても、カスタマーサービスにまで手が回らなくて、いつ電話しても話し中でつながらなかったら、カスタマーサービスの充実しているサービスの方にお客さんは行ってしまいます。要するに、いかにお客さんを満足させるかだと思います。
確かに人と違うことをするのは勇気が必要です。でも、自分なりのチャレンジングな気持ちをもつこと、いわゆる「アントレプレナーシップ」の精神は忘れたくないですね。諦めずに突破口を探すことが大事だと思います。
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