田中良和
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次々に高いステージに上がっていくには、これまでの成功体験を捨てることが一番の課題です。成功体験を捨てろというのはよくいわれることですが、それがどういうことなのか、そのあと何が起こるのかはやってみないとわかりません。
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この10年を振り返って一番つらかったのは、起業当初、誰も入社してくれなかったことです。社員を集めようとしても誰も入ってくれない。取りあえず数人いた社員の携帯電話に入っている友達一覧を壁に張って、1人ずつ入ってくれるかどうか議論するといったことを真剣にやっていました。
平日の夜中や土日に作業していたので、休みはゼロでした。それにサーバーの費用も何百万円とかかっていました。同じ時期にほかのSNSも始まりましたけれど、会員数が増えてくると、個人がボランティアでやっているものと会社が組織的にやっているサービスでは、サポートにも差が出てしまいます。GREEを続けていくためには、会社をつくるしかないと思いました。
ベンチャー企業にとって採用は重要です。就職活動で学生に見られるのはエントランスと会議室ぐらい。エントランスは会社のイメージを伝えるショールーム。だから奮発して作りました。
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会社を作った時はミクシィと比べられ、フィーチャーフォン向けにゲームを作り始めたら、DeNAがあるからうまくいかないと言われました。決して順風満帆な10年間ではありませんでした。私としては、こうした中でがむしゃらに頑張ってきたつもりです。
当社が目指すのはインターネットを通じて世の中を変えることです。といっても、それをいまやっているSNSやモバイルゲームで実現することにはこだわっていません。10年後、20年後にどんな商品でそれを達成するか、それはこれから見つければいいと思っています。ソニーだって創業5年目のとき、将来ゲームや映画をやると想像もしていなかったはずですから、これだというものがまだ見えていないのは、むしろ当然でしょう。
競合の参入をいかに防ぐかが、戦略を考える上では重要。
仕事に直接関係しない、情緒的な本を読むことで、合理一辺倒になりがちな経営の場にいても、人としての心のバランスを保つことができます。それと同時に、人生の根源を問う本からは、経営やビジネスマンに求められる情熱や熱量も学べるような気がします。
あまりライバルを意識していません。それより私たちのサービスをユーザーのためにより良いものにしていくことに尽きると思う。
僕たちの考え方に賛同して入社した人には、「それは、本当にやりたいの?」「それは世の中を変えるのに何か意味があるの?」とことあるごとに厳しく突っ込みます。精神主義といわれればその通りです。そうしないと個人も伸びないし、会社も目的を達成できません。
グリーは世の中の多くの人が誤解しているかもしれませんが、ずっとうまくやってきた会社ではないのです。私から見ればこの10年の歴史でそれなりにうまくいっていた時代はほんの2~3年です。それ以外の時期は、ほかの会社と比べてプロダクトが劣っていると言われたり、会社に未来がないと言われたりすることの方が多かった。
インターネットはゲーム化してきています。つまり、誰にでも楽しめて、分かりやすいものが支持されている。
最近、読書の目的を大きく3つに分けて考えるようになりました。
何か行動を起こして、結果を生み出していかなければ何も変わらない。
逆境は確かにつらい。ただ、グリーという会社は逆境の中で、常に耐え、常に新しいものを生み出してきました。それが私たちの歴史です。
この業界は新しい産業ですから、これまでは既存のやり方を単に当てはめていくだけでは会社は成長しないと考えていました。新しい時代に合った仕組みを作り、風土を作ることにこだわってきました。
未知なことに臆せず挑戦できるのは、起業に欠かせない才能。
当社はインターネットで世の中を変えていこうという非常に次元の高いゴールを目指しています。そのためには、かなり頑張らなければならなくなるのは必然です。世の中はそう簡単には変わりませんから。それなのに、「なんでこんなに頑張らなければいけないのですか」「世の中は変わらなくても別にいいと思います」と言われると、困ってしまいます。そういう意見を持つのも悪くないと思いますが、やはり一緒に働くのは無理です。
インターネットのサービスを考えるうえで重要な才能は、自分の使わないものをつくれるということです。新しいサービスを作り上げていく過程で、決して自らの感覚を「ユーザーの中心」と考えないように心がけています。たとえ自分は使わなくても、その商品がどう使われるのか理解し、その利用者に向けてものをつくるのです。
不特定多数のユーザーをイメージする際、ありとあらゆるタイプの人が無差別にやってくる場所を思い浮かべます。たとえば市役所や病院の待合室。18歳の女性がいる一方で、30代中盤のサラリーマンがいる。小さな子供たちがいれば、お年寄りがいる。「みんな」に使われるサービスを発想するためには、「みんな」という漠然としたイメージではなく、そうした一人一人の具体的な生活を想像することが大切です。
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