豊田章男
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最近、しばしば若者のクルマ離れがメディアの俎上にのぼりますが、たとえば、シニアのユーザーの方々がクルマの運転を楽しんでいる姿を若者の皆さんに見せていただければ、「あっ、クルマの運転って楽しいんだなあ」と感じてもらえるきっかけになる気がします。私の場合は、クルマが身近にある環境に育ったものですから、クルマを運転する楽しさが身に沁みています。いろんな意見がありますが、やはりいつの時代も若者はクルマが好きだと思いますよ。
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トップにはトップにしか分からない苦しみがある。判断と責任を取ることが社長の仕事だ。
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私が考えるクルマの味つけには先味、中味、後味の3つの味があります。先味は、そのクルマを見たときにオーラのような衝動を感じて「ああ、乗ってみたいな」という感覚です。見た目のデザインや広報宣伝などの刺激も先味の一種です。中味は、実際に乗って運転した感覚です。たとえば、カーブを曲がるにしても、ドライバーがこっちに曲がりたいなと思う方向に気持ちよく曲がってくれる。まさに快感、快適な乗り心地のよさで、今回発表の新型クラウンの中味はズバリそのものです。後味は、乗り終わったあとも乗り心地のよさの余韻が続き、「もっと乗っていたい、もう一度乗りたい」という感覚です。先味、中味、後味の三拍子揃ったクルマこそが本物のよさにつながります。これは、本物の美味しい料理を食べることと同じです。
好き、嫌いじゃないですよね。好き、無関心ですよね反対語は。
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ちょっと一歩やると新たな変化点が生まれる。新たな変化点が生まれると悩んでたことの大したことと無い事と、分かった事と分からないことが分かってくる。
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人間は誰しも少し見栄を張ったり、かっこよく見せたいという心理があります。そういう意味でクルマというのはたんなる工業製品ではなく、乗る人にステータスシンボル的な満足を提供してきた商品といえます。だからこそ、「ワクワクしなければクルマじゃない」「楽しくなければクルマじゃない」というエモーショナルな満足感が求められるのです。
僕がピンチはピンチと言ったらおしまいでしょ。
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私が社長になってクルマを乗り回すと、たまに社内から「社長なんだから自重せよ」みたいなご批判も賜わります。しかし、自動車メーカーの社長が自分でハンドルを握って何が悪いのかという気持ちもあります。社長になってから運転機会は減りましたが、新型車の乗り心地やデザインなどを含めて私自身が運転確認して常に最高最良の商品をお届けすることが自動車メーカーの経営トップの使命と考えています。
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僕は背負ってるというより支えられてるって感じなんですよ。
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時間を見つけては現場に顔を出して「もっと楽しいクルマをつくろうよ」と呼びかけています。
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幸せそうな顔をすることが、みんなの幸せになる。
社長に就任してこの3年間、とにかく悲壮感をみせずに笑顔でなければいけないと自分に言い聞かせておりました。正直いってまださまざまな試練が続いておりますし、心底笑顔になれる材料なんてないんですよ。それでも笑顔でいると、笑顔が周りの笑顔を呼んできてみな明るい気持ちになれるんです。だからこそ笑顔は大切ですね。
移動するということは生きることと同じなのです。
私がこだわっているのは「開発者は、Wowと言わせてごらん」ということ。例えば、新型車を開発する際に、通常はスペックが良くて、馬力を上げて、操舵性も向上させることを目指します。でもそれだけでは足りない。デザインでも、乗り味でもなんでもいいのでWowと言わせてほしい。「クルマって、こんなにすごくなっているんだ」と思わせるものを求めています。
創業者は倒産の危機と闘いながら心労が災いして、57歳の若さにして脳溢血を起こして亡くなりました。それ以降、歴代のトヨタの社長は常にいま苦労しても次代に花が咲けばよいじゃないか、いま咲いている花は先代が苦労したおかげなんだと考えるようになりました。
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トヨタの強みは20年、30千年先の未来に挑戦し続けるベンチャー精神。
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持続的成長のエンジンは、もっといい車作りと人材育成に他ならないと考えております。
過去、経営に収益本位に傾きがちな面もありましたが、私自身の考えはあくまでトヨタ経営の原理原則にあります。すなわち社会に貢献し、税金を納めて従業員を幸せにする会社であり続けることです。
無理をして急成長しても、そのあと急降下してしまえば、多くの方にご迷惑をおかけします。リーマン・ショックによる赤字転落などを経て、どのような局面にあっても一年一年、着実に「年輪」を刻んでいく「持続的成長」こそが最も大事だと学びました。
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直接的には私の責任ではないと言ってくださる方がいるとしても、こういう名前で生まれ、現に社長を務めているのですから、過去、現在、未来すべてにおいて私に責任がかかってくると思っています。バトンを受け継いだ以上、私が「それは私が社長になる前のことです」と言っても世間に許してもらえないでしょうし、そんなことを言うつもりもありません。
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