香山リカ
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何事もスピードが重視される時代ですが、世の中には時間をかけることで自然に良い方向に向かうこともたくさんあると思っています。ビジネスにおいても私生活においても、人生の中で大事なことこそ、あえて決断を先送りにする積極的な意味を考えてみてはいかがでしょうか。
どこかで「頑張って働くことはいいことだ」という価値観から抜け出して、人生を楽しむゆとりを持つことが大切です。そのためには、会社で働く自分という社会的な軸と、もうひとつの軸を持っておくことが有効です。何かひとつでいいので、自分が好きなもの、ここなら自分を認めてもらえるという場所をつくっておくこと。私自身も、医師でありながら執筆など別の仕事もしてきたことが、心のゆとりを形成してきたように思います。
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精神科医は悩みの原因を掘り下げる仕事と思われがちなんですが、すべてのことに原因があるわけじゃないでしょう。親とうまくいかない人が「どうしてこんな母親のもとに生まれたんだろう」と考えてもきりがないですか。だったら、割り切って家を離れて一人暮らしをするとかね。そうやって現実的に対応していくのが、精神医療のカウンセリングの中でも主流になってきています。
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大事な決断こそ、その場で結論を出さずに先延ばしすべきだと思います。これは精神科医の経験からいえることなのですが、人間が大きなことを決断したがるときというのは、ストレスで心が弱っていたり、気持ちが追いつめられていたりする場合が多いのです。うつ病などで診察を受けにくる私の患者さんたちも、よいことも悪いことも含めて重要な決断をしようとします。何かしら大きな決断をすることで、無意識のうちに起死回生は一発逆転を図ろうとしている可能性が高いのです。
テンションの高い状態は長く続かず、いつか燃え尽き状態になったり、突然起き上がれなくなってうつになることもあります。落ち込みたいときには素直に落ち込めばいい。周りがテンションをあげているからといって、それに合わせる必要はないのです。
人間にとって最大のストレスは思い込みなのではないかと、私も最近よく感じています。たとえば現代では、ビジネスの世界はもちろん、あらゆる場面で「即断即決」がよしとされていますよね。でも私は、こういう価値観もそうした思い込みのひとつにすぎないと考えています。
ついつい頑張りすぎて、心が疲れてしまった。そんな時は、とりあえず3時間、携帯電話やパソコンの電源をすべて落としてみてください。そして、あらゆる情報を遮断して、黙々と手作業に取り組むことをお勧めします。心静かに手を動かし、何かを達成することができれば、終わった頃には心も静まり、日分への自信も回復しているはずです。
オリジナリティにこだわりすぎないということが大切です。むしろオリジナリティはなくてもいいのではないでしょうか。あるにこしたことはありませんが、大事なのは、すべてをゼロから考えだそうとせずに、すでにあるフォーマットを上手く利用すればいいということです。
諦めないことはもちろん大切なんだけど、それを持ちすぎると、夢や希望もいつしか幻想になってしまう。それに、諦めることは必ずしも悪いことばかりではなく、裏返すと、感謝の気持ちにもなる。小さな家しか建てられなくても、「雨露をしのげるだけでもありがたい」と思ったり。
努力も挑戦もしないで、街を歩いていたら突然スカウトされるなんてことを夢見ている女のコもいます。そんなことはまずない。
辛いと感じたら、極端な逃げ方をする前に、しばらく休んでみることが大切です。
努力して獲得できるものは、人生をそれほど画期的には変えないと思う。せいぜい資格の免状一枚分を履歴書に書けるとか、その程度。そう考えると、払った努力のコストパフォーマンスはとても悪い。だったらもっとのんびり楽しくやってもいいんじゃないかと思ってしまう。
もしスケジュールや計画を立てるとしたら、それは一度立てたら変えられないものではなく、状況に応じて修正や見直しをしていくものと考えた方がいいと思います。状況変化を受け入れられないような計画は、その時点ですでに計画倒れになっているのですから。
心が疲れているときは、いきなり大きく環境を変えようとはせずに、まずは小さなことから変えてみるのがいいと思います。
懸命に仕事をしてきた人に、いきなり人生を謳歌しろといっても無理があります。人生を楽しむためにもそれなりのトレーニングが必要です。若い時期から、頑張りすぎる自分にブレーキをかけて、自分のもう一つの軸、本当のワーク・ライフ・バランスについて、考えてみることはできるはず。そうした積み重ねで、人生は豊かになっていくのかもしれません。
私は基本的にその日のことしか考えないようにしているのです。「今日は、これとこれをやったら終わり!」と思えば、どんなに忙しい日でも、なんとか乗り切れるじゃないですか。
評価されない不安から逃げられないときは、会社以外の場所で、自分を肯定してくれるところをつくるのもいいと思います。
多くの真面目なビジネスマンたちにとって、自分を責めることや落ち込むことほど能力を低下させるものはありません。「また失敗してしまった」と落ち込むことで萎縮してしまい、心と体がこわばって、結局また失敗してしまう。こういう失敗・頓挫のスパイラルにはまってしまうことだけは、なんとしても避けたいところです。
割り切るのはすごく大事。
今の社会がずっと続くという前提で人生設計をしてはいけない。
香山リカのすべての名言